降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★横山秀夫さんの「整理部」を読む(10)

2015年02月26日 | 新聞

(2月23日付の続きです。写真は、本文と関係ありません)

上毛新聞出身の横山秀夫さん(58)の短編ミステリー「静かな家」(新潮文庫『看守眼』収録)に登場する「県民新報」整理部。
3カ月前、整理部に異動してきたばかりの39歳「高梨」紙面担当者の記述に注目してみた。
太字個所は同文庫本文から引用しました。


(僕註=必携の自社ものを入れるため大幅組み替えした地域版を、約1時間遅れで降版した高梨は自宅に戻っていた)
晩酌のあと軽い食事をとり、最終のテレビニュースを見終わると午前一時近かった。
(中略)
高梨はぼんやりとした頭でこれから先のことを考えていた。二、三年整理部を務めれば地域版デスクに座れるか……。
(中略)
だが………。
整理部に異動してたった三月で新たな生活パターンに染まりつつある。
当たり前のようにTシャツ姿で昼過ぎに出社し、上司の顔色を窺いつつ勤務時間の大半をデスクワークで過ごし、仕事の合間を縫っての一服に幸福感すら覚えている。

(中略)
自信を失ったからかもしれない。
外勤記者はカンが鋭いとか、押し出しが強いとか、粘りがあるとか、何か一つ他人より秀でていればやっていけるものだが、
整理部ではその人間の持つ「基本性能」とでも言うべき能力が日々試されてしまう。

(後略)=本文247~249ページから引用しました。


➡︎ 午前一時近かった。
高梨面担(紙面担当者)が製版課に怒鳴られながら地域版を降版したのが、午後9時30分ごろ。
降版後、県民新報社内の喫煙室で一服し、同僚に挨拶して退社している。
自宅に戻ったのは、同10時過ぎか。
………早い。
その日のうちに帰宅していることになるが、地方紙はこんな感じなのかもしれない。
ニュースを見て、ちょっと飲酒して、午前1時。さぁて、寝るかぁ。
ちょうど同時間、社では最終版降版。
ところがどっこい、整理マンはうかうか寝めないのである………小説では、このあとトンデモ電話がかかってきたのであった。

➡︎ Tシャツ姿で昼過ぎに出社し、
内勤整理部とはいえ、いくらなんでも現在は「Tシャツ」出社はいかがなものか(→小説単行本は2004年刊行で、横山秀夫さんは上毛新聞に1991年まで在社している。当時はユルかったのかも……)。
かな~り、昔の話。
僕の整理部知人が、夏にペタペタとビーチサンダルで出社してきて、整理デスクと部長から二重叱責されていたことを思い出した(笑)。

➡︎ 整理部ではその人間の持つ………能力が日々試されてしまう。
こ、こ、こ、これはキツイ。ドキッとした(笑)。
僕は、この記述を読んで
「横山さんは1~2年ほど整理部勤務があったに違いない」
と感じた。
………長くなったので続く(かも)。

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