降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★「北タイ物語」を読む (78)

2016年04月08日 | 新聞

(4月5日付の続きです。写真は本文と関係ありません。
広告費数千万円をかけて〈10円値上げ〉を告知する赤城乳業ってすげ~なぁと感じた4月1日付日経新聞カラー全面広告)

小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人がいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目した——の第78回。


【 小説新潮2015年12月号=連載③ 366~367ページから 】
権藤さんが机の上に積んである藁半紙を一枚とった。一番上に〈北海タイムス見出し伝票〉と印刷❶されているその紙には大きな枡や小さな枡が縦横に印刷❷してあった。見出しのフォーマットのようだった。
そこにさらさらと黒のサインペンで文字を書き、赤のサインペンで〈6M〉〈4G〉などと指定❸している。数字が倍数サイズ、MやGは明朝とゴチックの略だろうか。
あるていど見出しが溜まると原稿と同じようにそれを束にして巻き、輪ゴムで結わえてコンベアに放り投げた。
そしてまた原稿を読み、割り付け用紙に線を引き、見出しをつけてはコンベアに放り投げる。
同じ作業を続ける権藤さんの手元を見ながら、僕は黙ってじっと座っていた。情けなさに息が詰まり、悲しさばかりが込み上げてくる。
「おい、権藤。一本ぐらい見出しつけさせてやれ」
三十分くらい経ったころ、萬田さんが倍尺で作業しながら言った。
「まだ早いです」



❶〈北海タイムス見出し伝票〉と印刷
伝票にわざわざ〈北海タイムス〉と印刷してあるのは当時、同社で聖教新聞や日刊スポーツなどの請け負い印刷(いわゆる賃刷り)も行っていたからでは。
賃刷り(ちんずり)——他新聞本社で編集したページをファクシミリ受信➡︎印刷するのだけど、緊急時の差し替えやミスがあった場合、北海タイムス側の切り貼りCTSで修正するために(一応の)他社伝票をつくっていたのではないだろうか。

❷その紙には大きな枡……印刷
「大きな枡」は、日付・面指定など、
「小さな枡」は、見出しの字句などか。
おそらく
「北海タイムス9日付12面」見出し
なら、
HT(北海タイムス)⑨12H1200(Hはヘッドライン、4ケタ数字は面数をアタマにしたコード番号)
と記入していたのかな。
*枡(ます)
新聞社のルールブック「記者ハンドブック・新聞用字用語集13版」でも、まだ使えない〈漢字表にない字〉。
ます(枡、桝)➡︎升
——に統一しましょうといっているけど、著作物なのでこのまま行ってください。


❸黒のサインペン……〈4G〉などと指定
どこの新聞社整理部も同じだなぁ、と思った。
文字は〈黒〉、指定は〈赤〉で記入しなければまかりならぬ!というキマリはないけど、まぁ何となく分かりやすいかなって感じ。
降版間際、赤ペン⇄黒ペンを持ち替える時間(わずかコンマ秒!)すら惜しいので、僕は黒ペン一色だけど(笑)。
ただ、新聞社によっては
出稿部➡︎青字(無いときは黒)
整理部・校閲部➡︎赤字
と色分けして記入しましょうね、というところもある。

———というわけで、続く。

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