Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「中二階」ニコルソン・ベイカー著(岸本佐知子訳)白水社

2006-11-28 | 外国の作家
「中二階」ニコルソン・ベイカー著(岸本佐知子訳)白水社を読みました。
中二階のオフィスへエスカレーターで戻る途中のサラリーマンがめぐらす超ミクロ的考察を描いた作品。こんなことが小説になるのか?という新鮮な驚きとふふ・・・と共感してしまう笑いの数々。あまりに細かい注釈を読んでいるうちに本筋を忘れてしまう困った(楽しい)経験をしました。

* 靴紐が左右同時期に切れるのはなぜか。
くつひもを結ぶたびにひっぱるから?歩いているうちにこすれるから?
* 素足でスニーカーを履いたときの喜び。一日履いたあとで素足にハト目のマルが残っているさまはジュール・ベルヌの描く潜水艦のようだ。
* ほうきで家を掃除する楽しさ。ちりとりにゴミをはきこむ。でもホコリが一筋の線となって残る。それは完全にはなくならないが、できるだけ見えないくらい細く細くちりとりにはきこむのが快感。
* 牛乳の容器が瓶からカートンに変わったときの素敵な衝撃。
あの家のようなかわいらしい容器。厚紙を開いてひし形にあけると注ぎ口になってしかも牛乳が細く出て注ぎやすい!これを考えた人はすごい。
* ミシン目を発明した人間への熱狂的賛辞。
ミシン目はロケットの開発などよりすごいことではないか?点々とした模様をひっぱると返信用ハガキが簡単に切れる。これはすごいことだ。
* 女の子はなぜ服をきながらブラがはずせるのか?あの魅力的なもぞもぞした動き。
* 製氷皿の各マス目についている小さな溝はすごい工夫だ。あれがあることで水が均一にまわるんだから。

などなどひとつひとつはたわいもない、でもそれが全部集まるとたとえようもなく面白い小説になる・・・。
これまで誰も書こうとしなかった愉快ですごく細かい小説でした。
この小説を読んだ後は普段乗りなれているはずのエスカレーターに乗ることも楽しかった。世界の見方が変わります!

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