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日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「1Q84」村上春樹著(新潮社)

2009-06-16 | 村上春樹
「1Q84(BOOK1・2)」村上春樹著(新潮社)を読みました。
村上さん待望の新作。
出版社からの前情報がまったくなかったので、まっさらな気持ちでページをめくり、物語を追っていくのはとてもうれしかったです。
ひとまず初読した感想を。
ラストについてふれますので、未読の方はご遠慮ください。

「心から一歩も外に出ないものごとは、この世界にはない。
心から外に出ないものごとは、そこに別の世界を作り上げていく。」

山梨に教団施設をもつ宗教施設「さきがけ」。
教義よりは厳しい修行が中心、教団施設内に火葬施設をも持つ団体。
当然のことながらオウム真理教を強く連想します。

麻原彰晃が語った「カルマ」や「ポア」。
その「物語」を信じ、現実のものとした信者たち。

一方村上さんの書く本のように、私の人生によりそってきてくれた「物語」もある。村上さんの書く主人公の生活を真似したりする(現実のものとする)読者がいたりする。

「さきがけ」のリーダーが語る物語。
ふかえりの物語を天吾が語った「空気さなぎ」。
人間の「想像力」が現実に及ぼす強さ。
善き「物語」と悪しき「物語」はどう違うのか。

そして「リトル・ピープル」とは何者なのか。

小説では小人の姿で描かれていますが、ビッグ・ブラザー(独裁的な個人)と対照的な「群集」の暗喩のように思います。
群集の意思。
時代のうねりが生み出すもの、というか、どちらかというと「時代の病」、時代の暗部に近いもの?そんなイメージをもちました。
(ただ、再読したらまた意見が変わるかも・・・)

青豆の章の最後はかなしかったです。
惹かれあうふたりには現実に手を触れ合い、結ばれて欲しかった。
でもふたりが結婚して幸せなマイホームをつくるという想像もやっぱりできないのだけれど。
青豆の決意は「死」というよりは「脱出」・・・ですね。

そして父親を恨んでいた意識が変わる天吾。
過去の事実は変わらない。
でも自分の認識が変わるとこれからの世界が変わる。
青豆をみつけようと定めた天吾の心。
それが具体的な捜索を指し示さなくても、現世でふたりが出会えなくても、その心があるだけで天吾の人生は孤独ではなくなる。

人生のいろいろな様相を見せてくれる物語。
青豆のこと、老婦人のこと、さきがけの教祖のこと。空気さなぎのこと。
長い小説ですが、もう一度ゆっくり読み返して、またいろいろなことを考えたいです。




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