Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「さよなら、愛しい人」レイモンド・チャンドラー著(村上春樹訳)早川書房

2009-05-22 | 村上春樹
「さよなら、愛しい人」レイモンド・チャンドラー著(村上春樹訳)早川書房を読みました。
刑務所から出所したばかりの大男、ヘラ鹿(ムース)・マロイは、8年前に別れた恋人ヴェルマを探しに黒人街の酒場にやってきました。
しかし、そこで激情に駆られて殺人を犯してしまいます。
偶然、現場に居合わせた私立探偵フィリップ・マーロウは、行方をくらましたマロイと女を探して夜の酒場をさまよいます。
一途な愛を待ち受ける結末とは。
「ロング・グッドバイ」につづいた、村上さんによるマーロウシリーズの新訳です。(ちなみに既刊の訳は清水俊二さん訳の「さらば、愛しき女よ」。)

次から次へと起こる事件を追う物語の面白さ。
思いがけない場所で接点を見せる人物たち、次第に明らかになるつながり。
幾度となく訪れるピンチを乗り越えるマーロウ。

訳者あとがきにもありますが、ストーリーを彩る個性的な人物描写もとても面白いです。
体臭の強いインディアンの、セカンド・プランティング。青白い顔のきどった男マリオット。掃除のできない女ジェシー・フロリアン。巡査部長ガルブレイス(ヘミングウェイ)とのやりとり。

そしてマーロウものといったら機知に富んだ会話。
そして文章の仕掛けもあちこちに。

「女ってのはな、あらゆることで嘘をつくんだ。嘘をつかなきゃ損みたいに嘘をつく。」

「モンテマー・ヴィスタには数十件の家が建っている。サイズも形もさまざまだが、それらはみんな山の張り出しに、実に危うくぶら下がっているみたいに見える。大きなくしゃみをひとつしたら、ビーチで広げられているボックス・ランチのあいだに落っこちてしまいそうだ。」

殴られたマーロウが自分自身と話すシーンも、表現上のアクセントになっていて、誰の会話かな?と思ったらマーロウの内的会話だったりして、驚きがあって楽しい。

文句なしに面白いこの小説。
息もつかせぬ展開に一気読みです!
ラストは・・・・でした。


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