「中原の虹 第三巻」浅田次郎著(講談社)を読みました。
孫文を掲げた相次ぐ革命勢力の蜂起。
皇族たちは、革命勢力を制圧するため軍を動かせるのは彼しかいないと、一度は追放した袁世凱を都に呼び戻します。
ですが俗物、袁世凱には大いなる野望がありました。
一方満洲では革命勢力でも清の軍隊でもない馬賊の頭領・張作霖が、まったく独自の勢力を形成していました。
龍玉を握る張作霖は乱世を突き進みます。
第三巻のキーパーソン袁世凱。(ユアンシイカイ)
野心を抱く俗物、軍隊を動かす男。
思いつきで行動し、そのたびに権力を得てきた実行の男。
でも実は科挙へのプレッシャーに負けかけ、自殺も図ったことを知るのは進士登第同期であり、彼の参謀役でもあった徐世昌(シユシイチャン)のみ。
袁世凱の人となりについての彼の独白。
「慰庭(ウェイテイン)よ。君は弱い人間だ。李公(李鴻章)ほどの人物が、その弱さを見抜けなかったはずはない。むろん西太后陛下もそれは同じだ。
ではなぜ君に国家の行方を托したのか。それは、弱い人間がみずからを律し、みずからを鍛えるその自強の精神に感心したからにちがいない。君のうちに、自強せねば生きてゆけぬ国家の姿を重ね合わせたのだろう。
君は足るを知らぬ。たゆまぬ努力の結果、むりやりに広げた器の大きさが、君にはわからない。だから満足できぬ。」
中正で理の人、徐世昌のこの言葉には重みがあります。
袁世凱は皇帝溥儀に退位を促します。
この場面、物語では西太后の声が皇帝に聞こえ、詔を唱えさせたという場面になっていますが、史実は果たしてどうだったのでしょうか・・・。
一方紫禁城から離れた満州では張作霖のもとに王永江(ワンヨンジャン)が幕下に入り、事実上張作霖による東三省の独立宣言となる布告文を出します。
態度をはっきりさせない村を皆殺しにし、談合する革命派の幹部を殺す張作霖。
恐れられる、と同時に熱狂的に愛されもする張作霖。
「張作霖(チャンヅオリン)は理屈が嫌いなのではなく、いくつもの理屈を考えることが嫌いなのだろうと思った。
理はただひとつ、生まれ育ったこの土地は誰にも渡さない。」
苛烈ではあるけれど、その強力なカリスマ性と実力が、極寒の土地で毎日を生き延びている人々の心を掴むのでしょう。
そして今巻では中原にかかる大きな虹の場面があります。
時代はさかのぼり、李自成(リイヅチヨン)が焼き尽くした都を平定するためにのちの順治帝を掲げた愛親覚羅の一族がやってきた北京。空に架かる暁(あきら)かな虹。
「それはまるで神々の乗り給う小舟が七色の幡(ばん)を曳いて天空を滑り行くかに見えた。」
「おそらくは李自成にとって大凶、愛親覚羅のつわものどもには、大吉兆の虹であろう」
大清国が中華民国となった今。
中原の虹が吉兆をもたらすのは誰の上に?
いよいよ最終巻につづく!
孫文を掲げた相次ぐ革命勢力の蜂起。
皇族たちは、革命勢力を制圧するため軍を動かせるのは彼しかいないと、一度は追放した袁世凱を都に呼び戻します。
ですが俗物、袁世凱には大いなる野望がありました。
一方満洲では革命勢力でも清の軍隊でもない馬賊の頭領・張作霖が、まったく独自の勢力を形成していました。
龍玉を握る張作霖は乱世を突き進みます。
第三巻のキーパーソン袁世凱。(ユアンシイカイ)
野心を抱く俗物、軍隊を動かす男。
思いつきで行動し、そのたびに権力を得てきた実行の男。
でも実は科挙へのプレッシャーに負けかけ、自殺も図ったことを知るのは進士登第同期であり、彼の参謀役でもあった徐世昌(シユシイチャン)のみ。
袁世凱の人となりについての彼の独白。
「慰庭(ウェイテイン)よ。君は弱い人間だ。李公(李鴻章)ほどの人物が、その弱さを見抜けなかったはずはない。むろん西太后陛下もそれは同じだ。
ではなぜ君に国家の行方を托したのか。それは、弱い人間がみずからを律し、みずからを鍛えるその自強の精神に感心したからにちがいない。君のうちに、自強せねば生きてゆけぬ国家の姿を重ね合わせたのだろう。
君は足るを知らぬ。たゆまぬ努力の結果、むりやりに広げた器の大きさが、君にはわからない。だから満足できぬ。」
中正で理の人、徐世昌のこの言葉には重みがあります。
袁世凱は皇帝溥儀に退位を促します。
この場面、物語では西太后の声が皇帝に聞こえ、詔を唱えさせたという場面になっていますが、史実は果たしてどうだったのでしょうか・・・。
一方紫禁城から離れた満州では張作霖のもとに王永江(ワンヨンジャン)が幕下に入り、事実上張作霖による東三省の独立宣言となる布告文を出します。
態度をはっきりさせない村を皆殺しにし、談合する革命派の幹部を殺す張作霖。
恐れられる、と同時に熱狂的に愛されもする張作霖。
「張作霖(チャンヅオリン)は理屈が嫌いなのではなく、いくつもの理屈を考えることが嫌いなのだろうと思った。
理はただひとつ、生まれ育ったこの土地は誰にも渡さない。」
苛烈ではあるけれど、その強力なカリスマ性と実力が、極寒の土地で毎日を生き延びている人々の心を掴むのでしょう。
そして今巻では中原にかかる大きな虹の場面があります。
時代はさかのぼり、李自成(リイヅチヨン)が焼き尽くした都を平定するためにのちの順治帝を掲げた愛親覚羅の一族がやってきた北京。空に架かる暁(あきら)かな虹。
「それはまるで神々の乗り給う小舟が七色の幡(ばん)を曳いて天空を滑り行くかに見えた。」
「おそらくは李自成にとって大凶、愛親覚羅のつわものどもには、大吉兆の虹であろう」
大清国が中華民国となった今。
中原の虹が吉兆をもたらすのは誰の上に?
いよいよ最終巻につづく!