Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ジャイアンツ・ハウス」エリザベス・マクラッケン著(鴻巣友季子訳)新潮社

2007-08-06 | 外国の作家
「ジャイアンツ・ハウス」エリザベス・マクラッケン著(鴻巣友季子訳)新潮クレスト・ブックスを読みました。
語り手は図書館司書のペギー。ペギーが出会ったジェイムズは巨人症の少年。初めて会ったとき、彼はまだ十一歳。悠然としたノッポの少年、実はその体の中では、ある病が進行中でした。処女作ながらいきなり全米図書賞にノミネートされた長編小説です。
人嫌いで恋愛経験ほとんどナシ、ファッションセンスなし、婚期を逃しつつある女性ペギー。彼女が心惹かれたのは10歳以上年下のジェイムズ。
ペギーは世間的に見て「どんくさい」けれども、世間の価値観を気にしつつも実は人の価値観では動いていないところがいいです。
図書館を愛し、司書の仕事を愛し、ジェイムズの世話をする人生を選択する。
また、ジェイムズの心の内を思うと読んでいて心が痛みました。
医者にもとめられない巨人化の症状、見世物になる毎日、どんどん旅立っていく同級生、死に向かっている自分の体。両親のこと。
素直で朴訥で、あまり心情を吐露しないジェイムズだからこそ、その心の中はどうなっていたのだろうなあと思います。
ふたりのせつない数年間。その中で脇を支えるカロライン、オスカー夫妻の優しさにはほっとしました。
ラスト、ペギーのとった選択は女性としてわかるような、せつないようなでも強さも感じるような・・・なんともいえない気持ちがしました。

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