Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「いずれは死ぬ身」柴田元幸編訳(河出書房新社)

2010-01-22 | 柴田元幸
「いずれは死ぬ身」柴田元幸編訳(河出書房新社)を読みました。
死、喪失、別離、崩壊、人生で避けて通れないそれぞれの瞬間。
雑誌「エスクァイア」の連載と、他の雑誌に単発で掲載されていた翻訳短篇をまとめた17篇収録のアンソロジーです。

収録作品は以下の通り。
「ペーパー・ランタン」  スチュアート・ダイベック
「ジャンキーのクリスマス」ウィリアム・バロウズ
「青いケシ」       ジェーン・ガーダム
「冬のはじまる日」    ブリース・D’J・パンケーク
「スリ」      トム・ジョーンズ
「イモ掘りの日々」    ケン・スミス
「盗んだ子供」      クレア・ボイラン
「みんなの友だちグレーゴル・ブラウン」  
       シコーリャック
「いずれは死ぬ身」    トバイアス・ウルフ
「遠い過去」       ウィリアム・トレヴァー
「強盗に遭った」     エレン・カリー
「ブラックアウツ」    ポール・オースター
「同郷人会」       メルヴィン・ジュールズ・ビュキート
「Cheap novelties」ベン・カッチャー
「自転車スワッピング」  アルフ・マクロフラン
「準備、ほぼ完了」    リック・バス
「フリン家の未来」    アンドルー・ショーン・グリア

冒頭の「ペーパー・ランタン」は、研究所の火事という悲しいできごとを描きながらも、語り手の若い時の思い出が重ねあわされてとても美しい作品です。

表題作の「いずれは死ぬ身」はユーモラスな悲喜劇。

「イモ堀りの日々」大いなるパロディ精神。

「盗んだ子供」
スーパーで子供を盗んだ独身女性。可愛いと思っていた子供がこんなに手のかかるものだとは・・・。罪を犯してはいるのですが、彼女のそのバタバタぶりが笑える一篇。子供を盗ませてしまった母親の育児疲れにも、ちょっと共感・・・。

「ブラックアウツ」
オースターの「幽霊たち」の原型となった戯曲。興味深いです。

全編を通して柴田さんチョイスらしい、暗いだけではない、笑いのある作品が多く収録されています。うち二編がコミックなのも、ちょっと気分を変えて読めてよかったです。

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