Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「よろこびの歌」宮下奈都著(実業之日本社)

2009-12-11 | 日本の作家
「よろこびの歌」宮下奈都著(実業之日本社)を読みました。
御木元玲(みきもとれい)は著名なヴァイオリニストを母に持ち、声楽を志していましたが、受かると思い込んでいた音大附属高校の受験に失敗。
明泉女子高の普通科に進みます。
挫折感から同級生との交わりを拒み、母親へのコンプレックスからも抜け出せない玲。しかし、校内合唱コンクールを機に、頑なだった玲の心に変化が生まれます。
あきらめ、孤独、嫉妬、みえない未来に惑う少女たちの願いが重なりあいます。
同じクラスのそれぞれの少女たちが主人公となる連作短篇集。
歌が背中の羽になっている装丁が素敵です。
各表題はザ・ハイロウズの歌の題名からとられています。(作中にも登場します。)

面白かったです!
「よろこびの歌」だから第九の話かと思ったら、彼女たちが歌うのはイタリアの歌曲「麗しのマドンナ」。この歌、私は聞いたことがありませんが、題名そのものが高校生の彼女たちを表しているようでいいなと思いました。

「第一志望ではない」新設女子高に通い始めた彼女たち。
美少女の玲、うどん屋の娘千夏、ソフトボールをやっていた早希、霊感のある史香、絵が好きな佳子、まとめ役のひかり。
キラキラの青春にはつきものの、それぞれの、ぐるぐるどろどろがつがつ。

宮下さんの著作を読むと、「メイドインジャパン」といつも感じます。
細かいところまでしっかり作ってある、という感じがするのです。
感情の本当に細かいひだまで、しっかり過不足なく言葉にしようという感じを受けます。

たとえば最終章の一節。

「私の歌で誰かのどこかを揺さぶる、つまり誰かのどこかに揺さぶられるものがある、ということに希望を感じる。胸が震える。うれしいとか、楽しいとか、悲しいとか、さびしいとか、いろんな気持ちをみんなが抱えている。歌によって共有することができる。」

共鳴。

宮下さんも、小説を歌うように、同じような思いで書いているのでしょうか。

1月まで出版社の企画で、作中の登場人物あての手紙を受付中だそうです。誰に書いてみようかな。けなげで可愛い千夏ちゃんがいいかな?

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2010.2月追記

上記の企画で宮下さんあてにメールを送ったところ、出版社経由で返事がきました。うれし~い!
しかも1月下旬以降私の送ったメールの一部が帯に印刷されて書店に並ぶとのことで、昨日早速書店で見てきました。帯の後ろ、内側ですが確かに「読者の声」ということで紹介されていました。
好きな作家の本に少しでも携われたみたいでとってもうれしいできごと。
早くも、今年の我が家の10大ニュースのひとつに決定です。

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