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日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「喋る馬」バーナード・マラマッド著(柴田元幸訳)スイッチ・パブリッシング

2009-12-03 | 柴田元幸
「喋る馬」バーナード・マラマッド著(柴田元幸訳)スイッチ・パブリッシングを読みました。
底抜けに哀しく、可笑しい11篇の短篇集。
雑誌「Coyote」誌上で連載中の「柴田元幸翻訳叢書」が単行本化されたものです。
収録作品は以下の通り。

最初の七年 / 金の無心 / ユダヤ鳥 / 手紙
ドイツ難民 / 夏の読書 / 悼む人たち / 天使レヴィーン
喋る馬 / 最後のモヒカン族 / 白痴が先

多くの作品が、著者の自伝的要素が強いと思われる、祖国を離れたユダヤ人を描いたものです。

「ドイツ難民」より抜粋。
「子供になった気分がした。いやもっと悪い、低能になった気がすることもしょっちゅうだった。言いたいことも言えずに、一人取り残された。何かを知っていることが、逆に重荷になる。そもそも自分という人間が重荷になるんです。舌は役立たずにだらんと垂れて。」

文化が違う、言葉が通じない、仕事もない。
伝えたいことが体の中にあふれているのに、それを語る術を持たない。
私が想像しようと思っても、きっとその想像をはるかに超える、苦難の数々。

「喋る馬」の中で、「いっそ喋ることも考えることもない馬であったら幸せであったろう」というアブラモウィッツのつぶやきは、そのままヨーロッパ移民のユダヤ人のつぶやきのようです。

ただマラマッドの短篇は、鳥や馬や天使がそのままイコールユダヤ人、という単純な寓話ではありません。
そこだけでは収まらない「物語」としての面白さと奥行きがあります。
だからこそ「ユダヤ人」という人種を逆に超えて、言葉の違う私にもその辛さや、生き延びようとする強さが伝わってくるのだと思います。

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