Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「中原の虹(第四巻)」浅田次郎著(講談社)

2009-05-10 | 日本の作家
「中原の虹(第四巻)」浅田次郎著(講談社)を読みました。
シリーズ最終巻。表紙の写真は万里の長城にかかる虹です。きれいー。
「答えろ。なぜ宦官になどなった」
「将軍はなにゆえ、馬賊などにおなりになられたのですか」
最後の宦官になった春児と、馬賊の雄・春雷。
極貧の中で生き別れた兄弟は、ついに再会を果たします。
そして梁文秀の帰国を待ち望む祖国。龍玉を握る張作霖。皇帝の座を狙う袁世凱。
そして張作霖は、ついに長城を越えます。

この最終巻で感じたのは人の思惑など小さい、ということ。
中国の民の心と命を背負い、歴史の表舞台に立つものたちはみな、何か得体の知れないものに動かされているような気がします。

「わが勲(いさおし)は民の平安」
・・・尊く、重たい言葉です。
それだけに、高い志をもった宋教仁が暗殺されたくだりは胸にこたえました。
彼のことを身を挺して守ろうとしたある男性の死も。

そして老仏爺(ラオフォイエ)が溥儀(プーイー)に語る台詞。

「歴史が逆戻りをしてうまく行ったためしはただのいちどもない。
人間が過ぎにし日を取り返せないように、人間の作った歴史もまた、過去に立ち返ることなどできないのよ。もしそれを無理になそうとすれば、過去の栄光とは似てもにつかぬ、醜い世の中が現れる。
だから、どんなに険しくても、前に進まなければならない。一歩でも、半歩でも。
慰庭はたったひとりで歩きはじめた。もともとそんな力などあるはずもない、気弱なあいつがたったひとりでね。だからみょうちくりんな格好にはなるのだけれど、何もしなかった人間が、何かをした人間を笑っちゃいけない。」

それから、春児と春雷の再会は息詰るものでした。
別れたいきさつ、そして現在のふたりの立場からいっても笑顔の大団円という感じにはならないだろうと予想はしていましたが。
でも最後別れ際のふたりのセリフ、宦官になった春児の胸のうちものぞかせたようでなんだかほっとしました。
そして春雷ともうひとりの兄弟の再会。
銀花の心の温かさも感じて、こちらは読んでいて涙・涙でした。

張作霖は、この小説の後・・・・なんですよね。
ぜひこのつづきも浅田さんに書いてもらいたい。

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