Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「チョコレート・アンダーグラウンド」アレックス・シアラー著(金原瑞人訳)求龍堂

2008-11-06 | 児童書・ヤングアダルト
「チョコレート・アンダーグラウンド」アレックス・シアラー著(金原瑞人訳)求龍堂を読みました。
舞台はとある国。選挙で勝利をおさめた健全健康党は、なんと「チョコレート禁止法」を発令しました。チョコレートにかかわらず、国じゅうから砂糖やお菓子、甘いものが処分されていきます。
そんなおかしな法律に戦いを挑むことにしたハントリーとスマッジャー。
彼らはチョコレートを密造し、地下チョコバーを始めます。
マンガ化され、来年1月にはアニメ映画が劇場公開予定だそうです。

「善きこと」の価値観を国民に押し付ける与党。
その法律に地下組織で対抗する主人公たち。
ときにその試みはくじかれながらも最後は明るい方向へ。

独裁国家への風刺を全面に出した作品なのですが、単純に冒険劇として楽しめました。
「ささやかな楽しみ」って一番犠牲にされやすい。でもささやかではあっても、それが毎日延々と続く日々をのりこえていくガス抜きにもなっているんですよね。
「(おいしいものを食べる)楽しみもまた健康的なものではありませんか?」ブレイズさんの演説にはちょっとホロリ。
圧政や反乱よりもこわいのは大多数のアパシー(無気力・怠慢)なのかなあとも感じました。

あと最後捜査官はチョコレートで更正、人間が丸くなるのですが、あれほど権力の味を楽しんでいた彼がそんなに単純に変わるのかなあ。でもお菓子の話だからこんな甘口のラストもありなのかな?

最近日本でも「職場にメタボ対策を」などといわれていますが、あれもこの健全健康党と同じ発想を感じます。一般的に「痩せていたほうがいい」というのと、上から「でぶ禁止」といわれるのとではまったく違います。
人間には悪いものをじゃんじゃん食べて早死にする権利だってあるのだ!