Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ナンバー9ドリーム」デイヴィッド・ミッチェル著(高吉一郎訳)新潮社

2007-07-12 | いしいしんじ
「ナンバー9ドリーム」デイヴィッド・ミッチェル著(高吉一郎訳)新潮クレスト・ブックスを読みました。
主人公、19歳の詠爾(えいじ)は故郷の屋久島を出ました。彼は名前も知らぬ父を探すために東京へ。村上春樹やジョン・レノンへのオマージュに溢れた疾走する物語。いしいしんじさんが「週刊ブックレビュー」で紹介されていました。

とっても面白かったです。こんなに面白かった作品は本当に久しぶり。
舞台は現代の日本。作者はイギリス人の方(奥様は日本人)ですが、日本語でもとから書かれていたようにまったく違和感がなく読みました。
作品は9章にわかれています。
章ごとに詠爾の妄想であったり、映画のストーリーであったり、手紙であったり、ある人の小説であったり、日記であったり・・・詠爾の語りとは別の要素が入りこんできて話が重層にふくらみます。
「埋立地」の第四章は迫力。圧倒されました。

「九番目の夢の意味はあらゆる意味が死に絶え消滅した後に始まる・・・」
詠爾の父親の正体は?第九章に描かれる夢とは?

作者は村上春樹さんの作品に深い共感を抱いているようで、作中にも「ねじまき鳥クロニクル」が登場していますが、私はどちらかというと「父を求める詠爾」が「母を求めるカフカ」(「少年カフカ」)に重なりました。
とはいってもストーリーはもちろんまったくオリジナルのもの。
本の分厚さを忘れて一気に読んでしまいました。
この作者のほかの作品の邦訳が待たれます!