Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「コイノカオリ」角田光代ほか(角川書店)

2006-09-15 | 児童書・ヤングアダルト
「コイノカオリ」角田光代ほか(角川書店)を読みました。
6人の女性作家による「コイノカオリ」にまつわる短編集。

収録作品は以下のとおり。
角田光代「水曜日の恋人」
島本理生「最後の教室」
栗田有起「泣きっつらにハニー」
生田紗代「海の中には夜」
宮下奈都「日をつなぐ」
井上荒野「犬と椎茸」

作品の主人公は中学生、高校生と作品を追うごとに順々に年齢があがっていくように並べられています。
シャンプーやレモンの香り、蜂蜜にタバコの香り。
こう列挙するといかにもあまずっぱい「恋の話」のようですが、そんな甘い話はひとつもありませんでした・・・。
不倫の恋、謎の女性、かなわぬ恋、居心地の悪い恋・・・
恋とは楽しくうれしいだけでなく、自分も他人もどうしようもなく振り回してしまう存在なのだなあと感じました。

私が一番すごい!と思ったのは宮下奈都(なつ)さん(1967年生まれ福井出身)。
2004年に文学界新人賞佳作に入選した新人の方だそうです。
新人でこの筆力?びっくり、そして脱帽。
シュウちゃんとの出会い、恋の物語から赤ん坊が生まれてからのとまどい、あせりと涙。
あーそうそう、新生児から半年くらいまでの赤ちゃんってこうなんだよね。
そして赤ちゃんがいる生活ってハンパじゃなくきついし自分がこわれてくんだよね・・・。
と実感しいしい読んだのでものすごーくしみました。
ぜひ赤ちゃんを育ててへたれてるママさんに読んでほしいなあと思った作品。



雑誌「文藝 2006年8月号」特集いしいしんじ(河出書房新社)

2006-09-15 | 児童書・ヤングアダルト
雑誌「文藝 2006年8月号」特集いしいしんじ(河出書房新社)を読みました。
特集は4枚の地図が案内する“いしいしんじ”の遊び方。
いしいしんじさんが書いた「自身の病歴」「作品間の分岐図」「場所とできごと年譜」「外国渡航歴」の4つの地図を下敷きに、いしいさんの4歳の時(!)の処女作「たいふう」(作品「ぶらんこのり」に収録)から最新作「みずうみ」(2006年冬刊行予定)まで、いしいさんのインタヴューが語られます。
ほかに川内倫子さん・長薗安浩さん・堀江敏幸さんそれぞれとの対談
特別掲載のキューバ日記
また、ところどころに角田光代さんやしりあがり寿さん、栗田有起さんなどのエッセイが挿入されています。
キューバの旅行記が楽しい。
文書の合間合間に入るスペイン語「ポキート(少し)」とか「あっちがカテドラル、あっちが新宿末広亭」とか、とてもユーモラスで自由な文章です。
奥さんの園子さんを喜ばせることがとても大事、と語るいしいさん、素敵。
リクルート社でサラリーマンをしていた時代に髪を派手な色にして短パンで通勤していた(あまり通勤していなかった)という話にびっくり。
いしいさんの文章は一見すると「かわいい」という感じだし、外見も「やさしそう」という感じだし、でもその中にはファンキーないしいさんがいるのだ。
それからいしいさんの数多い病歴にはびっくり。
インタビューの中の「アトピーはアレルギーとかじゃなくて、僕自身なんだと気づきました」という言葉に考えさせられました。
私自身アトピーがあるのですが、アトピーは「根治すべき病気」じゃなくて、「体質・自分そのもの」と考えると、自分の性格や考え方の一部みたいなものなのかなと・・・。そう考えるとアトピーを恨んだり、アトピーじゃない人を必要以上にうらやんだりということもなくなるかなと思いました。(まあそんなに簡単にはいきませんが・・・。)


「とるこ日記」(定金伸治・乙一・松原真琴著)集英社

2006-09-15 | トルコ関連
「とるこ日記 -ダメ人間作家トリオの脱力旅行記」(定金伸治・乙一・松原真琴著)集英社を読みました。
自称「半ひきこもり」の若手作家3人のトルコ旅行記。WEB連載していたものを単行本化したもので、イスタンブール、カッパドキア、ハットシャシュ、パムッカレ、エフェスをめぐります。
現地の人との心あたたまる交流(ほぼ)ナシ、人生観が変わる経験(ほぼ)ナシ、異文化と接し日本を考えさせられる経験(ほぼ)ナシ。
夕日や自然の美しさに感動しちゃうことちょっとアリ。
どこに行ってもくだらない会話のダラダラっぷり。
でもその「会話」自体がとても面白くて笑いながら読んでしまった一冊。
ぼられたりすられたりというトラブルに見舞われた旅行にもかかわらず、ちまたの力の入った旅行記とは一線を画す脱力旅行記。
定金さんが主文を書き、ふたりがつっこむという形式の日記で、この本を作るうえでの座談会や乙一さんの短編が同時収録されています。
実はこの3人の著書は読んだことがないのですが、この脱力っぷりと著作はだいぶイメージが違うみたいですね。面白い。
乙一さんは「悪い方なんていない・・・」「ミスター濡れたシャツ」「助かった。うっかり定金さんに話しかけられるとこだった」「タモリさんおなかこわしてないかな」などかわいいコメントがいっぱいで特に楽しかったです。