また「去るモノ」が増えてしまった。
「愛知県と小牧市、桃花台線9月廃止発表」(中日新聞、3/29)
「桃花台線廃止 きょう表明 愛知県小牧市 47億円回収不能に」(読売新聞、3/28)
記事の要旨をまとめると次のようになる。
○愛知県知事と小牧市長が記者会見を開き、「自立的経営の展望が見込めないため、これ以上の公的支援は行えない」として存続断念を正式に発表した。
この発表により桃花台線は9月を目処に廃止される。
○桃花台線を運行する「桃花台新交通」は4月以降に臨時取締役会・株主総会を開き、軌道事業廃止・会社解散を決議し、事業の廃止許可申請を国土交通大臣へ提出する等、廃線手続に入る。
○廃止後の代替バス運行に際しては、現在の桃花台線利用者の意向を踏まえて路線を設定する。その検討は4月以降本格化する。
代替バスの運転開始時期は混乱を避けるため桃花台線廃止前とし、同線と重複する形で運転期間を設定する。
○桃花台新交通に愛知県と小牧市は約57億円を貸付金・拠出金の形で負担しているが、同社所有地の処分見込益約10億を差し引いても県は約43億、市は約4.3億の回収が不可能になる。同様に桃花台新交通に出資している名鉄をはじめとする民間企業も同様に約13億円が回収不能になる見込み。
○桃花台新交通自体は廃止と同時に従業員約40名を解雇し、整理業務へ移行する。
桃花台新交通の資金が枯渇する秋、桃花台線は姿を消すことになった。
去年3月17日で「再生・存続の可能性を模索する」としておいて、その一年後には全く正反対の結論に至った。
「磁気誘導バス」への大幅な改修コスト増が報道された昨年11月以降、県の考えは廃止に一気に傾いている。
それは単に廃止時期を明言していないだけで、既に結論は出ていたという印象しか受けない。
従って、昨日の記者会見が県として初めて公式に「存続断念」を表明しても水面下の「規定路線」が表面化したに過ぎない。
話は横に逸れるが、今回の存続議論に止めを差したのがトヨタの「IMTS早期実用化困難」の表明にあったことが28日の中日新聞に掲載されていた。
桃花台線存続の前提として「磁気誘導式バス」への転換が考えられていたが、実用化のメドが立たず、桃花台線への投入が困難になったことが一気に廃止に踏み切る要因になった。
要旨をまとめておくと、次のようになる。
○トヨタ自動車が2月初めに「IMTSの早期実用化は困難」とする判断を愛知県に伝えた。
○県に伝えられた内容はIMTSシステムを乗用車の自動運転に役立てる技術として確立できたはものの、事業用の技術としては今後数年間で実用化できる見通しはない。
トヨタ自動車としては公共交通機関へ導入するには乗用車とは違った耐久性や安全性の検証を必要とし、今後の市場の見極めなどになお時間がかかると判断したと思われる。
結局、桃花台線の存続検討に際しては実用化の目処も立たない「磁気誘導バス」に振り回されたという印象しかない。
「愛・地球博」でも運行されたIMTS、これを応用した「磁気誘導バス」を導入しようとしたが、これを導入したいと表明したのは桃花台線のみ。
トヨタ自動車にしてみれば事業として成立するかどうか疑わしい上、技術的な検証も必要とする。
その事実を昨年度の検討時に引き出せなかった愛知県の甘さは指摘しておく必要がある。
ひょっとしたら「廃止」という結論を引き出すための「口実」に「磁気誘導バス」が利用された可能性も・・・と思わなくもないが、現時点では「陰謀論」の類だろう。
話を元に戻す。
桃花台線に「廃止」という結論が出された以上、事後の処理には様々な問題点が発生する。
代替交通機関は先述したように検討が本格化するので除外するとしても、高架橋の撤去、建設時に国から受け取った補助金返還協議は避けられない。
前者については再利用が困難な箇所は撤去、再利用が可能な部分の用途の検討が必要だろう。これにより撤去コストがどれだけ抑制できるかが一つの焦点になる。
後者については「国次第」ということになる。
いずれにせよ、これらのコストは県の「税金」が財源となってくる。
従って、「公」の負担は「約57億円+α」ということになる。
開業から15年半で廃止という悲惨な結末。
そもそもの原因はモータリーゼーションを読み違えたり、競合路線を考慮しなかった需要の過大な予測にあったと言えるが、桃花台線建設の前提であった桃花台ニュータウンの入居人口が伸び悩んだことも大きいし、名鉄小牧線の名古屋市内直通が予定より遅延したこともまた大きい。
特に小牧線の名古屋市内直通まで健全な経営を確立できずに財務体質を痛めつけてしまったのが致命的だと個人的には思う。
いずれにしても、桃花台線を含めた桃花台ニュータウン建設計画そのものが甘かった、ということは結果論ではあるけれど指摘せざるを得ない。
単に桃花台線の問題のみならず、「まちづくり」の問題として捉えた場合、県の責任は更に大きくなる。
結局、ニュータウンの住民に「利用されない」インフラを作り、しかもそれを短期間で廃止せざるを得なくなったことはどう控えめに見ても「まちづくり」の失策と考える。
ともあれ、桃花台線を巡る結論は出た。
次の焦点は代替バス路線をどう構築するかということにかかってくる。
住民に利用しやすい代替バス路線をどうするか。
半年足らずという短期間でどこまで意見を反映した路線計画が出来るか注目してみたい。
そして、桃花台線廃止が桃花台ニュータウンに長期的にどのような影響を及ぼすか。
利用者の数から見て「影響はない」という見方もできるのだが・・・。
「愛知県と小牧市、桃花台線9月廃止発表」(中日新聞、3/29)
「桃花台線廃止 きょう表明 愛知県小牧市 47億円回収不能に」(読売新聞、3/28)
記事の要旨をまとめると次のようになる。
○愛知県知事と小牧市長が記者会見を開き、「自立的経営の展望が見込めないため、これ以上の公的支援は行えない」として存続断念を正式に発表した。
この発表により桃花台線は9月を目処に廃止される。
○桃花台線を運行する「桃花台新交通」は4月以降に臨時取締役会・株主総会を開き、軌道事業廃止・会社解散を決議し、事業の廃止許可申請を国土交通大臣へ提出する等、廃線手続に入る。
○廃止後の代替バス運行に際しては、現在の桃花台線利用者の意向を踏まえて路線を設定する。その検討は4月以降本格化する。
代替バスの運転開始時期は混乱を避けるため桃花台線廃止前とし、同線と重複する形で運転期間を設定する。
○桃花台新交通に愛知県と小牧市は約57億円を貸付金・拠出金の形で負担しているが、同社所有地の処分見込益約10億を差し引いても県は約43億、市は約4.3億の回収が不可能になる。同様に桃花台新交通に出資している名鉄をはじめとする民間企業も同様に約13億円が回収不能になる見込み。
○桃花台新交通自体は廃止と同時に従業員約40名を解雇し、整理業務へ移行する。
桃花台新交通の資金が枯渇する秋、桃花台線は姿を消すことになった。
去年3月17日で「再生・存続の可能性を模索する」としておいて、その一年後には全く正反対の結論に至った。
「磁気誘導バス」への大幅な改修コスト増が報道された昨年11月以降、県の考えは廃止に一気に傾いている。
それは単に廃止時期を明言していないだけで、既に結論は出ていたという印象しか受けない。
従って、昨日の記者会見が県として初めて公式に「存続断念」を表明しても水面下の「規定路線」が表面化したに過ぎない。
話は横に逸れるが、今回の存続議論に止めを差したのがトヨタの「IMTS早期実用化困難」の表明にあったことが28日の中日新聞に掲載されていた。
桃花台線存続の前提として「磁気誘導式バス」への転換が考えられていたが、実用化のメドが立たず、桃花台線への投入が困難になったことが一気に廃止に踏み切る要因になった。
要旨をまとめておくと、次のようになる。
○トヨタ自動車が2月初めに「IMTSの早期実用化は困難」とする判断を愛知県に伝えた。
○県に伝えられた内容はIMTSシステムを乗用車の自動運転に役立てる技術として確立できたはものの、事業用の技術としては今後数年間で実用化できる見通しはない。
トヨタ自動車としては公共交通機関へ導入するには乗用車とは違った耐久性や安全性の検証を必要とし、今後の市場の見極めなどになお時間がかかると判断したと思われる。
結局、桃花台線の存続検討に際しては実用化の目処も立たない「磁気誘導バス」に振り回されたという印象しかない。
「愛・地球博」でも運行されたIMTS、これを応用した「磁気誘導バス」を導入しようとしたが、これを導入したいと表明したのは桃花台線のみ。
トヨタ自動車にしてみれば事業として成立するかどうか疑わしい上、技術的な検証も必要とする。
その事実を昨年度の検討時に引き出せなかった愛知県の甘さは指摘しておく必要がある。
ひょっとしたら「廃止」という結論を引き出すための「口実」に「磁気誘導バス」が利用された可能性も・・・と思わなくもないが、現時点では「陰謀論」の類だろう。
話を元に戻す。
桃花台線に「廃止」という結論が出された以上、事後の処理には様々な問題点が発生する。
代替交通機関は先述したように検討が本格化するので除外するとしても、高架橋の撤去、建設時に国から受け取った補助金返還協議は避けられない。
前者については再利用が困難な箇所は撤去、再利用が可能な部分の用途の検討が必要だろう。これにより撤去コストがどれだけ抑制できるかが一つの焦点になる。
後者については「国次第」ということになる。
いずれにせよ、これらのコストは県の「税金」が財源となってくる。
従って、「公」の負担は「約57億円+α」ということになる。
開業から15年半で廃止という悲惨な結末。
そもそもの原因はモータリーゼーションを読み違えたり、競合路線を考慮しなかった需要の過大な予測にあったと言えるが、桃花台線建設の前提であった桃花台ニュータウンの入居人口が伸び悩んだことも大きいし、名鉄小牧線の名古屋市内直通が予定より遅延したこともまた大きい。
特に小牧線の名古屋市内直通まで健全な経営を確立できずに財務体質を痛めつけてしまったのが致命的だと個人的には思う。
いずれにしても、桃花台線を含めた桃花台ニュータウン建設計画そのものが甘かった、ということは結果論ではあるけれど指摘せざるを得ない。
単に桃花台線の問題のみならず、「まちづくり」の問題として捉えた場合、県の責任は更に大きくなる。
結局、ニュータウンの住民に「利用されない」インフラを作り、しかもそれを短期間で廃止せざるを得なくなったことはどう控えめに見ても「まちづくり」の失策と考える。
ともあれ、桃花台線を巡る結論は出た。
次の焦点は代替バス路線をどう構築するかということにかかってくる。
住民に利用しやすい代替バス路線をどうするか。
半年足らずという短期間でどこまで意見を反映した路線計画が出来るか注目してみたい。
そして、桃花台線廃止が桃花台ニュータウンに長期的にどのような影響を及ぼすか。
利用者の数から見て「影響はない」という見方もできるのだが・・・。
>それは単に廃止時期を明言していないだけで、既に結論は出ていたという印象しか受けない。
同感です。
それと、小牧市長や小牧市議会議員達の行動や発言には、正直、あきれて言葉も出ませんでした。
彼らがこれまでやっていた事といえば、経営改善がまったく望めないような、「焼け石に水」の策を、いくつかやったぐらい。しかも、住民との話し合いや意見交換などを行なわなかったのは、愛知県だけでなく、彼らも同じです。その上で、なんら解決策を示す事無く、愛知県の方針を知っていながら、「単なるパフォーマンス」としての「判断の延長」・・・。
最後になりましたが、こちらの記事に、トラックバックさせてもらいました。