Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

引用だらけ.....

2011-06-22 | Others
 「征服者は久しく島民を支配し、征服者の法律によって島を食い物にしようとしてきた。シチリア島のほかの地方と同じく、カステラマーレの歴史は幾世紀にもわたって動乱にあけくれた。島はギリシャ人やサラセン人、ノルマン人によって、スペイン人やドイツ人やイギリス人によって、また十字軍の時代からファシストにいたるまでさまざまの国のさまざまの人種によって十六回も征服されつづけてきたと、ボナンノも何かで読んだのを記憶している。彼らはすべてシチリア島にやってきて、人間が故国からはなれたときにやる悪業を重ね、シチリアの歴史は他民族による凌辱と蹂躙の連続だった」
これは前回の話「汝の父を敬え」の一節です。

イタリアの、特に南部について書かれたものを読むと、これに近い歴史から為政者を信用しにくい風土が育まれたとあります。

最近よくTVで政治家が、何かにつけて「政治不信をまねく.....」なんて言いますが、言葉とは裏腹にさらに状況は加速して、さすがに温厚な人でも「愚劣な方がたくさんおいでだ...」なんて呟くのを聞きます。



「代々農業をつづけ、穀物やオリーブ、トマトその他の野菜を栽培し、食肉用と取引のために羊と牛を育てた。政府からわずかな金の出る事業を一手に請負い、港にも影響力を持ち、商人たちにも勢力があって、彼らを保護してやるかわりにその保護料を受けとってきた。彼らはその昔の君主や太守と同じく文字通りその地域の町々を支配し、奉仕の代償として被支配者たちに租税を課した。彼らの奉仕とは、近隣の紛争の仲裁であり、盗まれたものをとり戻してやることであり、家庭内のすべての問題に援助の手をさしのべ、名誉を傷つけたり人妻を辱めたりする者をこらしめてやることであった。彼らは同郷人の裁判では判事にとりなしてやり、パレルモの政治家からは山岳地帯の着実な支持票の見返りとしてさまざまの特典を受けた。しばしば不正を働いたけれども、法律はだいたい彼らの味方だった。幾世紀も前から、この地方の貧困と悪疫はシチリアの政府によって、ローマの議会によって、それ以前の外国の支配者によってかえりみられなかったのである。だから、結局、貴族たちがやるのを見てきたように、法律を自分たちのものにしてその法律を勝手にまげてきた。

 彼らは、法のもとで平等はないと信じた。法律は征服者によって書かれたのである。二千年の昔までさかのぼるシチリアの乱世につぐ乱世の歴史で、島はギリシャの法律、ローマ法、アラブの法律、ゴート人やノルマン人、アンジュー王家、アラゴン王朝の法律によって統治されてきた―いずれも征服者の艦隊がシチリアに新しい法律をもたらし、それがどんな法律であろうと、法律はつねに貧者よりも金持を助け、弱者よりも権力者にくみするように思われた。法律は村人たちのあいだの復讐を禁止したが、政府の番人や国王の軍隊による組織的な残虐行為や殺戮を許し―戦争は許され、内輪揉めは禁じられたのだ―そしてまっさきに国王の軍隊に駆り集められたのが農民である。食物や飲物、衣類、薬品、文学、性行動を規制する法律はおよそ権力を握る貴族の生活様式の延長だった。法律はその貴族の過去を反映した。貴族の性格が上品かつ寛大であれば、法律もそのどちらかになり、またキリスト教徒か回教徒かによって、東方文化に影響されたか、西方文化に影響されたかによって、さらに慈悲深いか、逆に残酷であるかによって法律もそのどちらかを反映したのである。ドイツの専制君主フレデリック二世は姦婦の鼻は切りとるべしとの布告を出したが、ほかの懶惰淫乱な暴君は法廷で妾を宥し、人妻を誘惑しても大目に見た。時代がかわると、しばしば法律も変り、新しい法律がそれまで行われていた法律と矛盾することもあったという事実を、為政者たちはさして気にもとめなかったらしい。彼らは大衆を支配し、権力の座にしがみつくことに汲々としていたのである」

すみません、またしても写しだしたらサルみたいに止まらなくなってしまいました。
汝の父を敬えのような話を読んでいると、運命は従う者を潮にのせ抗う者を曳いていく、という昔の人の言葉も思い出します。
また、ヴィスコンティの「山猫」も重なってきます。

今日は強い日射しが降り注いで、梅雨が明けたらこんな感じというシュミレーションみたいな陽気でした。重い話の口直しに、盛夏が待ち遠しいような爽やかな色遣いの、1937年のアメリカの広告をどうぞ。




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