Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

縮む

2022-06-18 |  その他
コロナ期間中にも定期的に出かけなければならなかったのが理髪店と、それより少しサボリ気味でしたが歯科定期検診です。
本当に髪だけはキチンキチンと伸びますね。
先日、一回サボってしまった歯科検診に行くと、「よく磨けてますね!」と言われた割に痛い目にあいながら、「オミカギリっ!」とか言われながらツネられるおじさんになったみたいな気分を味わいました。

コロナ以前はたまに都内の同業者にお邪魔して、他愛ない雑談のうちに「この間こんな素材を扱ったらこうだった」とか「あの生地は裁断前にこうしたら後で良かった」なんて話を交換して帰って来ると、後々参考になったりします。
単純に生地の話だけでも、雑誌などの内容とはだいぶ違います。

今はどうか分かりませんが、私たちの頃は男子が簡易的な椅子など作っている間に、女子は被服製作に取り組んでいました。
手始めに、使う生地が服になってから変化しないよう「地のし」とか「地詰め」という工程があったと思います。
建築物も基礎がくるっているとどんなに上をきれいに作っても後々歪みが出てくるように、服も同様です。

あるメーカーがまだそれほど有名でなかった20年以上前、パターンオーダーを始めたとかオーダーを始めたというたび面白がって付き合っていました。

私がどこそこの仕立屋へ行ったというと、翌年には出張のついでにそこへ行って既製服を発注して来たとか、その会社が登り調子で熱心な時期でした。

そこの既製品に良い色柄があったのですが、着ているうちに次第によれて、手を加えてもどうしようもない状態になり結局処分しました。
ざっくりしたヘリンボーンで組織が安定しにくい素材ではありましたが、おそらくキチンとした下拵えが足りなかったのだろうと思います。

もし今同じ生地を見つけたとしたら水に通して乾かしてというのを繰り返すか、よく見てもう少し手荒く扱ってみるかもしれません。

昔から仕立屋さんによる経験値でそれぞれのやり方があるようで、相当デリケートな生地もお構いなく浴槽にどっぷり浸すという海外の仕立屋さんもいるそうです。

こういう話は長く探究心をもってやってこられた方に聴くのが一番だと思いますが、お話を伺った頃すでに60年近いキャリアだった方は、今の生地はあまり変化しないのではという合理的なお考えでしたが、同時にわずかではあるが一定のところまで少しづつ縮むという話もされていました。
結局、他店よりも更に入念に詰めていらっしゃったようです。

ここで服が変化すると聞いて、「それで最近ウエストがきついのかな?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、おそらくこういう場合パンツのウエストより、そこに収める中身の方が変化して可能性が高いので測ってみて下さい。



という訳で、作る服も生地を出来るだけ安定した状態にしてスタートしてもらうようにしていますが、先日本当に生地が縮んで足りなくなったという一件がありました。

よく寝具などザックリした製品には洗濯で縦横何%縮む可能性がありますよと書かれてますが、確かめるとそのウール素材は約3%縮んでいました。
滅多にないことですが、そういう不慮に備える為にもきちんした仕事をしてもらっていることに安堵したと同時に、お取引き先の皆さんが揃ってきちんとした仕事で支えて頂いてることを実感した出来事でもあります。

服はいつも通り何事もなかったように納まりましたが、皆さんの誠実な仕事の詰まった一着となりました。
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