ワクチン、高齢者に効果 英で80代超の4割に抗体
北米2021年2月17日 20:47
9日、イスラエルの商都テルアビブで、外国人住民への新型コロナウイルスワクチンの接種会場となった公共施設。多言語で案内されている(共同)
新型コロナウイルスのワクチン接種が17日、日本で始まった。先行する英国は5人に1人が免疫を獲得したとの調査結果を発表した。米国も新規感染者数が5週連続で減少しているほか、イスラエルでも60代超の入院患者が減少したという報告が出ている。ワクチン接種による感染収束への期待が高まってきた。
「国内の推計5人に1人が新型コロナに対する抗体(免疫)を獲得している」。英国国家統計局は16日、新型コロナの調査結果を公表した。2月1日までの約1カ月間、16歳以上の成人男女の血液を調べた結果、人口のおよそ18.5%が過去に新型コロナに感染したか、ワクチン接種によって防御機能を持つ免疫を獲得しているとみられることが分かった。
年齢別では、免疫を持っている割合が最も高いのは80歳以上で、およそ41%。この年齢層はワクチンの優先接種対象だった。2週間前に公表した同様の調査では26%だったことと比べると、予防接種による効果が確実に出ているようだ。
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ワクチンは感染症の発症を抑える仕組みだ。発症しなければ別の人に感染を広げにくくなると期待される。ファイザーなどの臨床試験(治験)では発症予防のほか、重症患者を抑える結果も出ている。
2020年12月にワクチン接種が始まった米国では、新規感染者の数が減少に転じた。米ジョンズ・ホプキンス大の集計では、1月初旬のピーク時に1日あたりの新規感染者数が30万人だったが、高齢者らにワクチン接種が進むにつれて減少し、2月15日時点では5万3千人となった。ロイター通信によると、米新規感染者数は14日までの1週間に前週比23%減の63万9000人強で、5週連続で減った。
米ワシントン大の保健指標評価研究所は、米感染減の要因の一つに「ワクチン接種数の継続的な拡大」を挙げた。英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」によると、15日時点のワクチン接種回数は米国が5522万回で、中国(4052万回)、英国(1612万回)を大きく上回る。
入院や重症化の抑制などの報告もある。イスラエルのワイツマン科学研究所によると、ワクチンを接種した高齢者は入院や重症化が減少しているとの結果が出たという。
具体的には2月6日時点の結果では60歳以上は3週間前と比べて入院患者が36%減、重症化は29%減っていた。ワクチンの接種が遅れた0~59歳は、入院が10.5%増、重症化も32%増えていた。早期接種した都市と遅れた都市を比べても、高齢者の入院数の減少に差が出たという。
ワクチンを接種するタイミングや生活環境、変異型などウイルスの種類によっても有効性は変わりうる。ただワクチンを接種することで体内に免疫ができ、新規感染者を減らせるとする報告が続々と上がっており、有用性が高いのは事実だ。
今後、日本で接種率を高めるには効果や副作用などの幅広い情報を公開し、透明性を高めることが欠かせない。厚生労働省は先行接種を受ける4万人の医療従事者のうち2万人の健康状態を追跡調査する。対象者は接種から8日目まで毎日「観察日誌」に体調などを記入する。厚労省の研究班が報告を毎週とりまとめ、審議会で開示する方針だ。
高齢者向けの接種が始まる4月以降、ファイザー製のほか英アストラゼネカ製と米モデルナ製のワクチン計300万回分についても健康状態をアンケートで調べる。
(先端医療エディター 高田倫志)