新型コロナ 死者最多水準続く “高齢者の感染の多さが背景”
2021年2月7日 15時48分 新型コロナウイルス
先月以降、新型コロナウイルスの感染者の数は減少傾向となる一方、亡くなった人は今月3日には過去最多の120人となるなど最多の水準が続いています。この背景として、厚生労働省の専門家会合は、医療機関や福祉施設でのクラスターの発生が全国的に相次ぎ、重症化しやすい高齢者の感染が多い状況が続いているためだと分析しています。
死者6000人超 増加ペース上がる
新型コロナウイルスに感染し亡くなった人の数は去年11月から増加傾向が続き、今月3日には全国で120人と過去最多となり、累計で6000人を超えました。
亡くなる人は、去年2月13日に初めて報告されたあと、
▽1000人となったのは5か月余りあとの7月下旬で、
▽2000人となったのはそれから4か月後の11月下旬でしたが、
▽先月23日に5000人を超えてから6000人になるまでに要したのは11日で、
感染者が減る傾向が見えてきたにもかかわらず、亡くなる人が増加するペースが上がっています。
一方、重症者の数は、去年夏から10月ごろまでは全国で150人前後で推移していましたが、その後、増え続け、先月27日には過去最多となる1043人に達しました。
今月に入ってからは徐々に減る傾向が見られますが、6日時点で815人と多い状態が続いています。
亡くなる人の過去最多の水準が続き、重症者がなかなか減らない背景には、重症化するリスクの高い高齢者の感染が増えていることがあり、60代以上で感染した人は東京都のデータでは、
▽去年12月には3339人で全体のおよそ17%、
▽先月には8153人で全体のおよそ21%、
▽今月は6日までで1061人と全体のおよそ30%を占め、
全国でも高齢者の感染が増える傾向が見られています。
さらに、このところ多くなっているのが高齢者が多くいる施設などでの感染で、内閣官房が先月27日までの10日間に全国で確認された220件のクラスターについてまとめたところ、
▽高齢者施設や福祉施設での発生が109件とほぼ半数を占め、
そのほかには、
▽学校と職場がそれぞれ32件、
▽医療機関が31件、
▽食店やカラオケ店で12件、
▽幼稚園や保育施設で11件、
▽飲食店以外での会食が9件、
▽その他が13件となっていました。
厚生労働省によりますと、去年6月から8月にかけて感染した人のうち、重症化した人は、
▽50代以下では0.3%だったのに対して、
▽60代以上は8.5%、
亡くなった人は、
▽50代以下では0.06%でしたが、
▽60代以上では5.7%で、
高齢になればなるほど重症や死亡に至る割合が高いことが分かっています。
厚生労働省の専門家会合は、医療機関や福祉施設でのクラスターの発生が全国で相次いでいて、重症化するリスクが高い高齢者の感染が多い状況が続いているとして、今後についても「重症者や亡くなる人が増加する可能性がある」と指摘しています。
また、政府の分科会は「高齢者施設での感染は直接、重症者や亡くなる人の増加につながる」として、施設の職員に対する定期的な検査の実施や、国に対策チームを設置することなど、施設での感染対策を強化するよう求めています。
感染者ピークは先月4日ごろ
全国の新型コロナウイルスの感染者数は、患者が発症した日で見ると、年末年始に急激に増え、先月4日ごろがピークで、その後、減少に転じていることが厚生労働省の専門家会合の資料から明らかになりました。
新型コロナウイルスの感染者数のデータは、感染が確定した人数を各自治体が連日、発表していますが、報告の遅れなどによって日ごとの人数が変わるため、感染状況を正確に分析するには、患者が発症した日ごとのデータが必要とされています。
今月1日に開かれた厚生労働省の専門家会合では、先月下旬までの全国の感染者の数を発症日ごとにまとめたデータが示されました。
それによりますと、感染者数は、去年12月下旬から1月初旬にかけて急激に増加し、1月4日ごろにピークに達したあと、減少傾向に転じていました。
専門家会合は、年末年始の急激な感染拡大は、若い世代から中年の世代での忘年会の影響や、帰省を通じてほかの年代にも広がったことが背景にあるとみられるとしています。
そのうえで、先月初旬以降に減少に転じたことについて、国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長は、先週開かれた専門家会合のあとの記者会見で「年末に患者数が急激に増えたことや、首都圏の知事が緊急事態宣言の発出を要請したことなどから、深刻な状況だというメッセージが市民に伝わり、年明け以降、接触の機会が急激に減ったためではないか」と指摘しています。
専門家 高齢者は回復に時間かかり医療ひっ迫解消されず
重症患者の治療を行ってきた国立国際医療研究センターの忽那賢志医師は、重症患者が大きく減らない現状について「いったん重症化してしまうと、なかなかすぐには回復できない。特に、最近増えている高齢者の場合は、合併症が起きたり、呼吸の際に使う筋肉が元に戻りにくかったりして、より長い時間がかかることもある。このため、感染者の数が減少しても重症者が減り始めるまでに時間がかかってしまっていて、新規感染者の数が減っていても、医療現場のひっ迫状況は解消されていない」と話しています。
また、亡くなる人が増えていることについて「重症になって数週間治療しても、どうしても救命できず亡くなってしまう方もいて、亡くなる人の数のピークは重症患者のピークよりもさらにあとに来る。最近は少しずつ重症者が減ってきているが、症状が改善して人工呼吸器から離脱する人がいる一方で、残念ながら、亡くなってしまうことで重症者のカウントから外れる方がいるという側面もある」と説明しています。
そのうえで「感染者が減ってきたことで、国立国際医療研究センターでは、明らかに先月に比べて新規の患者の受け入れが減ってきている。多くの人の努力のおかげで、医療従事者として非常に感謝している。ただ、ここで感染者が増え始めてしまえばまた非常に大変な事態になってしまうので、確実に減少したというレベルまで、何とか感染対策を続けていただきたい」と訴えています。