つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

清明

2015-04-12 11:50:35 | ジャズ


  「暦便覧」には「万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれる也」とあります。


   清明とは清浄明潔を略したもので、

 
  万物にいきいきとした気がみなぎってくる頃です。


  清新明朗、曇りのない溌剌とした春気。 咲き競う百花が匂うときです・・・




    今日聴いたジャズ・・・



   the PAUL DESMOND QUARTET /  LIVE 




   本作は、1924年11月25日生まれ、アメリカ合衆国のジャズ・アルトサックス奏者、ポール・デスモンドのリーダー作。


   エド・ピッカード(g)、ドン・トンプソン(b)、ジョリー・フラー(ds)と共に綴るワン・ホーン・カルテット作品。


   カナダ・トロントでのライブ録音。。。


   ポール・デスモンドはウエスト・コーストジャズを代表するミュージシャンの一人、作曲家で、デイヴ・ブルーベック・カルテット


   在籍時に作曲した「TAKE FIVE」などで知られる。


   いわゆる、トロントでの同メンバーによる三部作といわれるライブ盤では「LIKE SOMEONE IN LOVE」 もある。


  ただ、もう一枚の作品は所有していない。


  ポール・デスモンドはデイブ・ブルーベック・カルテットの他にも、モダンジャズ・カルテット、ジム・ホール、ジェリー・マリガン


  達との共演も多く、リーダー作だけではなく、サイドメンとしての貢献にも目を見張るものがある。


  本作は、全9曲、デスモンドらしく柔和で優しくリラックスした雰囲気でのライブが聴ける。時折拍手が聞こえるので、


  ライブ盤なんだなぁと思う。それくらい聴衆も穏やかな4人のプレイに耳を傾けている様子が伝わってくる。


  デスモンドだけではなく、ギター、、ベースソロ、またギターとベースの掛けあいも本盤の聴きどころとなっている。


  ほとんどが馴染み深い曲ばかりなので、聴きやすいアルバムだと思う。


  40年も前に録音されたとは思えない、まさしく今、このライブを目の前で聴いているかのような錯覚を覚える。


  リラックスした中にも、研ぎ澄まされたデスモンドの作品を改めて聴き直してみたい。




1・WENDY・・・2・WAVE・・・3・THINGS AIN’T WHAT THEY USED TO BE・・・4・NANCY・・・5・カーニバルの朝
6・HERE’S THAT RAINY DAY・・・7・MY FUNNY VALENTINE・・・8・TAKE FIVE・・・9・LINE FOR LYONS・・・



   ※ 1977年5月30日 肺癌の為 52歳の若さで亡くなった。




      PAUL DESMOND(as)
      ED BICKERT(g)
      DON THOMPSON(b)
      JERRY FULLER(ds)



       1975年10月、11月 トロントにて録音・・・



花冷え

2015-04-10 12:26:12 | ジャズ


  真夏のような陽気の日があったかと思うと、必ず寒の戻りがある。

 
  その中でも 菜の花やレンギョウが土手を黄色に染めている。


  桃が咲き、水仙が咲き、ハクモクレンが咲き、アセビが咲いている。


  梅が香り、沈丁花が香り、時には辛夷が香る。


  紅梅の香りは濃密に甘く、辛夷の香りは淡く、草原を吹き渡る風のようにふっくらとしている・・・




   今日聴いたジャズ・・・



   STEVE GROSSMAN・・・「STANDARDS」



   本作は、1951年1月18日 ニューヨーク、ブルックリン生まれのテナーサックス奏者、スティーヴ・グロスマンのリーダー作。


   フレッド・ヘンケ(p)、ウォルター・ブッカー(b)、吉田正広(ds)を起用した、ワンホーン・カルテット作品。


   全8曲、馴染み深いスタンダードもあれば、マイルスの初期のオリジナル「ハーフ・ネルソン」、、1954年にパッド・バラッドが


   作曲した「ミスター・サンドマン」、、M・プラドの作曲「タイム・ウォズ」など、いわゆるスタンダード集では珍しい曲が収録


   されている。70年代のはじめにマイルス・グループでフュージョンの洗礼を受けているグロスマンらしく、マイルスの曲を冒頭に

   持ってきているのも頷ける。


   本アルバムの選曲はすべてグロスマンによるものらしい。


   野太い音色、、ビ・バップのスタンダードを完璧に消化した熱いアドリブが冴えわたる。


   凡庸なスタンダード集に終わらず、グロスマンならではの個性的な曲趣のアルバムに仕上がっている一枚。。



1・HALF NELSON・・・2・WHEN I FALL IN LOVE・・・3・枯葉・・・4・JUST IN TIME・・・5・MR・SANDMAN
6・朝日のようにさわやかに・・・7・TIME WAS・・・8・EASY LIVING・・・




      スティーヴ・グロスマン(ts)
      フレッド・ヘンケ(p)
      ウォルター・ブッカー(b)
      吉田正広(ds)



        1985年11月 NYにて録音・・・

それぞれの四月

2015-04-06 11:35:59 | ジャズ



   四月。さまざまな花の前線がさざなみとなって通り過ぎて行く月。

   
   白いハナモモが咲き、コブシが咲く月。山ではカタクリの花が風に泳ぎ、


   ヤマブキソウが明るい丘の斜面を黄に染める月。


   柳が芽吹き、カツラの赤い芽が伸び、万物が移ろい行く月。そういう「四月」をギュスターブ・カンは歌った。


   あゝ花開くうつくしき四月よ /  されど若し我が恋人われより遠く /  北の国なる霧の中にあらば / 何かせん、


   四月の新しき歌 / 四月の白きリラの花、野ばらの花も / 梢を縫ひて黄金と開く四月の日光も (永井荷風訳)


   四月の声をきいて「さあ、これからだ」と奮い立つのは青年、「もう一年の四分の一がすぎてしまったのか」と思うのが中年、


   という分類があるらしい。 みなさまは、どちらでしょうか・・・・・




    今日聴いたジャズ・・・


   MATT DUSK・・・「MY FUNNY VALENTINE」
            (the CHET BAKER SONGBOOK)





   本作は、1978年カナダ・オンタリオ州トロント生まれ、21世紀のフランク・シナトラともいわれるヴォーカリスト、


   マット・ダスクのリーダー作。あこがれの存在であるチェット・ベイカーの没後25周年を記念してリリースされた、


   トリビュート作品となっている。しかしながら全曲がチェットの愛奏曲ばかりを採りあげているわけではなく、ダスクが


   言っているように・・・


   ”この作品は「チェット・ベイカー・ソングブック」と冠されていますが、この作品の目的はチェットの有名曲を収録することでは
    ありません。音楽に対するチェットの情熱を形にしてアルバムを作ったのです。
    収録曲の中には、チェットがあまり演奏しなかったものもあります。
    しかし、僕はチェットによるその曲に感動し、自分に影響を与えてくれた音楽に敬意を払うときが来るときには、
    まっさきにこの楽曲を選ぼうと思っていたのです ”


   アルバムは、80人編成のオーケストラを従え、大御所、トランペット、フリューゲルホーン奏者 アルトゥーロ・サンドヴァルが


   3曲(1、2、10)に参加、エミリー・クレア・バーロウ(vo)が4曲目に参加、グイド・バッソ(flh)が11曲目に参加、


   EDYTA GORNIAK(vo)が6曲目に参加、サラ・ガザレク(vo)が13曲目に参加、RYAN AHLWARDT(vo)が12曲目に参加・・・・


   と豪華なゲストが華を添え、ラスト3曲のボーナス・トラックも加え、全15曲で構成されている。


   つぶやくように歌うチェットの声質とは異なるけれど、一枚をとうして聴くとマット・ダスクの誠意みたいなものが伝わってくる。


   中でも、エミリー・クレア・バーロウと歌う「ENBRACEABLE YOU」、、RYAN AHLWARDTと歌う「I FALL IN LOVE TOO EASILY」


   は特に気に入っている。




1・MY FUNNY VALENTINE・・・2・TIME AFTER TIME・・・3・ANGEL EYES・・・4・EMBRACEABLE YOU・・・5・COME RAIN OR
  COME SHINE・・・6・ALL THE WAY・・・7・DEEP IN A DREAM・・・8・THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU
9・THAT OLD FEELING・・・10・LET’S GET LOST・・・11・SOMEONE TO WATCH OVER ME・・・12・I FALL IN LOVE TOO
  EASILY・・・13・I GET ALONG WITHOUT YOU VERY WELL・・・14・EVERYTHING HAPPEN TO ME
15・HOW DEEP IS THE OCEAN・・・





     MATT DUSK(vo)

     ADREAN FARRUGIA(p)
     REG SCHWAGER(g)
     ROSS MACLNTYRE(b)
     BEN RILEY(ds)

     THE SYMPOSIUM STUDIO SYMPHONY ORCHESTRA  他



    2012年1月 カナダ・トロントにて録音・・・

EMBRACEABLE YOU  





   


  


   


   



   


連翹忌

2015-04-03 12:14:09 | ジャズ


  きのう二日は、詩人高村光太郎の連翹忌だった。


  光太郎は晩年、東京・中野区のアトリエで自炊生活をしながら十和田湖畔を飾る裸婦像の制作を続けた。


  その庭には毎年、レンギョウの黄の花がたわわに咲いた。


  亡くなった日も、みごとに咲いていた。


  告別式の日、お棺の上には、詩人が日ごろ愛用したビールのコップがおかれ、一枝の庭のレンギョウがいけられたという。


  人びとは光太郎忌を連翹忌と呼ぶようになった。


  レンギョウの一つ一つの花はごく平凡で、きわだった特徴もないけれど、巨大な集合体になると、風を黄に染めるような存在感がある。



  鮮やかな黄の花びらが光りを浴び、光を吸い、光をはね返し、光と戯れているさまには陽春のはなやぎがある・・・・




     今日聴いたジャズ・・・



   STEWY VON WATTENWYL・・・「DIENDA」




   本作は、1962年スイス生まれのジャズ・ピアニスト、スチュイフォンワッテンヴィルのリーダー作。


   全11曲中、スチュイのオリジナル3、6、、表題曲の8「DIENDA」は、ケニー・カークランド(p)の曲、、他はお馴染みの


   スタンダードで綴られている。



   アルバム一枚をとうして聴いた印象は、スロー、、ミディアム、、アップテンポと様々に曲調を変えながら、それぞれの曲で


   アレンジ&解釈がユニークで凝ったものに仕上がっている。


   同じくスタンダード中心の作品、「COOKIN’ LIVE」と併せて聴いてみると愉しい。聴きやすさからいえば、”COOKIN’LIVE’”


   の方が聴きやすいかも知れないけれど、”面白味”は本盤の方がまさっているように感じる。


   いずれにしても、スチュイの作品は、魅力的なものが多い。



   ※ スチュイフォンワッテンヴィル


    ベルン音楽院でピアノを学び、1990年からジャズのキャリアを開始した。
    アートファーマーやクラークテリー、、ジョニー・グリフィンなどアメリカの著名ミュージシャンとの共演歴を重ねる。
    絶妙なテクニックとスウィング感を持ち、バビッシュな衝動を追及する独自なポジションは、ヨーロッパ・ピアノ・ジャズに
    新風を起こした。

    「アメリカバップ・スタンダードはこのトリオに引きつがれた、この10年間で最大の発見」と讃えられる。
    ライブでの圧倒的な演奏で、現在のヨーロッパ・ピアノ・ジャズのレベルの高さ、面白さを伝える。




1・MY MAN’S GONE NOW・・・2・I MEAN YOU・・・3・HOLD MY HAND・・・4・MY FAVORITE THINGS・・・5・BLUE IN GREEN
6・HELLBLAU・・・7・MY ONE AND ONLY LOVE・・・8・LULLABY OF BIRDLAND・・・9・REFLECTION・・・10・I’M GLAD
  THERE IS YOU・・・・



    STEWY VON WATTENWYL(p)
    DANIEL SCHLAPPI(b)
    REGGIE JOHNSON(b)
    TOBIAS FRIEDLI(ds)



        2004年8月5-7日録音・・・・