つれづれなるままに聴いたジャズ

  よるの雨の音は

さびしい胸にともしびのように

   ともる



 

茗荷(みょうが)の花

2012-10-26 16:30:41 | ジャズ

 ショウガ科の多年草。原産地は中国。湿地に自生するが、畑で栽培される。
 春先の槍のように尖った若芽は茗荷竹、夏に土から出てきた花穂が茗荷の子といって、どちらも独特の香りがあり、
 食用とする。

 茗荷の子が成長し、八~十月ごろに地下茎より花序を出し、大きな唇形の淡黄色の花を開く。
 花は一日でしぼむが、鞘(さや)状の鱗弁をつけた茎の間から次々とやわらかい花を開き、すこぶる印象的。
 
 古くメガ(芽香)といわれたものが訛って、ミョウガの名になったという。
 茗荷を食べると物忘れをするという俗信は、日本各地にある。江戸時代の咄(はなし)本、「醒睡笑(せいすいしょう)」(1628年)
 に、茗荷の別名を鈍根草(どんこんそう)といい、学問をする人は食べるなと記されている。
 物忘れしそうな雰囲気は、むしろこの花のほうにあるといっていいだろう。


 ”亡きひとの声の残れる秋茗荷 ”(森 澄雄)・・・


 今日聴いたジャズ・・・


 LEE KONITZ&THE BRAZILIAN BAND・・・「BRAZILIAN SERENADE」


 1927年10月13日、アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ生まれのジャズ・アルトサックス奏者、作曲家、リー・コニッツ
 のリーダーアルバム。前年の「ラプソディ」につづくジャズボッサの第2弾。

 前作もよかったけれど、本作はトム・ハレルの参加と前作のメンバーよりレベルが高いことが一層の魅力となっている。
 

ホメロ・ルバンボ(ギター)、デヴィッド・キコスキー(ピアノ)、デイヴ・ファンク(ベース)ダジューカ・ダフォンセカ(ドラム)
 ヴァルティーニョ・アナスタシオ(パーカッション)という顔ぶれ。
 A・C・ジョビンの曲を中心に、トム・ハレルが一曲(#4)を提供し、タイトル曲はリー・コニッツによるもの、全8曲で構成されている。


1・FAVELA・・2・ONCE I LOVED・・3・RECADO BOSSA NOVA・・4・SEPTEMBER・・5・DINDI・・6・WAVE・・7・MEDITATION・・
8・BRAZILIAN SERENADE・・・


 美しいメロディ・ラインを綴るトム・ハレルをフィーチャーしてよりロマンティックにパッション溢れるブラジル風セレナーデを
 聴かせてくれる。

 1996年3月20、21、22日、シアー・サウンド・レコーディング・スタジオにて録音・・・

錦木(にしきぎ)

2012-10-25 00:46:21 | ジャズ

 ニシキギ科の落葉低木。錦木の花は小さく地味であるが、この花が地に散り敷くさまは美しい。
 果実は楕円形で紅葉するころに二つに割れ、中から黄赤色の艶のある種子を現わす。錦木はその名のとうり、紅葉がもっとも美しい
 ところから名づけられた。山野に自生する木だが、紅葉を見るために庭木とされ、また生け花の材料となった。
 枝にコルク質の翼(よく)のあるのがこの木の特徴で、その形状は矢羽を思わせる。


 ”深寝して錦木紅葉きはまりぬ ”(加藤 三七子)・・・


 今日聴いたジャズ・・・

 DANIEL GASSIN TRIO・・・「CROSSOVER」


 オーストラリアはメルボルンを中心に活躍するピアニスト、ダニエル・ガシン率いるピアノトリオ作品。

 ダニエル・ガシンは地元、メルボルンで様々なアーティストとの共演やヨーロッパに滞在しての活動も経験し、2003年に
 「LA TROBE UNIVERSITY YOUNG ARTISTS’AWARD」を受賞、その受賞によってデビュー作「ROUNDTRIP」を発表。
 そして、本作「CROSSOVER」(2007年録音)に至る。

 オリジナルを中心とした全7曲。エヴァンス、ハービー、キースなどの影響を受けているらしく、ヨーロッパ系のしっとりとした
 リリシズムが聴かれる。アルバム全体に叙情的な趣を感じる。


1・FREEFALL・・2・CROSSOVER・・3・7e ARRONDISSEMENT・・4・RELEASE・・5・MIDDLE MAN・・6・DON’T FORGET THE POET・・
7・THE PEACOCKS・・・


 一曲目「FREEFALL」からリリカルかつ軽快なリズムで突き抜ける心地よい演奏が聴ける。5の「MIDDLE MAN」ではエヴァンスを彷彿と
 させるフレーズが見え隠れするエレガントなワルツを披露している。

 すっきりとした骨格の佳曲に三者のインタープレイが絶妙な肉付けを施している。
 6はエンリコ・ピエアヌンツィの曲、7はジミー・ロウルズの曲・・と美旋律と繊細に満ちた名演となっている。

 「DON’T FORGET THE POET」をピアノトリオで聴けるのは珍しい。
  エンリコ・ピアヌンツィのアルバムでも(アルバム名も同じ)最も気に入っているだけに、興味深い一曲。


  DANIEL GASSIN(p)
  SAM ANNING(b)
  DANIEL SUSNJAR(ds)


  2007年8月30日録音・・・


千振(せんぶり)

2012-10-24 15:33:26 | ジャズ

 リンドウ科の二年草。古くから知られた薬草である。野山に生え、草丈20センチ~30センチ。
 直立した茎の先に、直径1・5センチほどの白に紫の筋のある花をつける。五枚の離弁花のようであるが、深く裂けた合弁花である。
 
 可憐な星形なのでよく目立つ。花のころ根ごと摘み取って乾燥させ、煎じて飲むと胃痛によく効く。
 熱湯のなかで千回振りだしてもなお苦味のあるところからこの名がついた。
 当薬と名づけられるほど効くので「医者倒し」という方言もある。


 ”他は顧みず千振を引きにけり ”(森田 峠)・・・



 今日聴いたジャズ・・・

 IRENE KRAL・・・「THE GENTLE RAIN」

 本作は、1月18日米国イリノイ州シカゴ生まれのヴォーカリスト、アイリーン・クラールのリーダーアルバム。

 亡くなる前の年の録音。アラン・ブロードベントとのデュオ。タイトル曲にもなっているルイス・ボンファ、アル・コーン、
 ジョニー・マンデル、デューク・エリントン、タッド・ダメロン、などのあまり取り上げられないナンバーを選曲し、
 アラン・ブロードベントの伴奏で、しっとりと、歌詞をかみしめながら丁寧に歌い上げている。
 10年ほどのブランクを埋めるかのように、晩年に立て続けに録音している。本作もその中の一枚。

1・THE GENTLE RAIN・・2・THE UNDERDOG・・3・YOU ARE THERE・・4・SOMETHING TO LIVE FOR・・5・IF YOU COULD
 SEE ME NOW・・6・WHAT’T NEW・・7・THE ANTIQUE MEDLEY・・・1)REMEMBER・・2)SOMEDAY I’LL FIND YOU・・
3)I’LL SEE YOU AGAIN・・4)ALL ALONE・・8・BLUE GARDENIA・・・

 彼女の歌唱を邪魔することなく、優しく引き立てているアラン・ブロードベントのピアノは特筆に値する。


 IRENE KRAL(vo)
 ALAN BROADBENT(p)

  1977年8月21日、ニューヨークにて録音。

 アイリーン・クラール:

 チョイス・レーベルに録音した代表作「恋の行方」「ジェントル・レイン」で不滅の人気と評価を得ているヴォーカリスト。
 バラードに優れた才能を発揮した。
 メイナード・ファーガソン・ハーブ・ポメロイのオーケストラなどで活躍。
 結婚後に西海岸へ移り、10年近く音楽界から遠ざかったが、74年にカムバックした。日本でも人気が高くライブ録音も残した。


  78年8月18日、乳癌の為46歳で亡くなった・・・

霜降(そうこう)

2012-10-23 14:14:09 | ジャズ

 今日、十月二十三日は霜降。
 「暦便覧」には「つゆが陰気に結ばれて、霜となりて降るゆへ也」とある。秋も末、霜が降りることから「しもふり」ともいう。
 霜降の頃の朝は澄んだいい匂いがする。楓をはじめ、紅葉が一気に始まる。
 晩秋のもの哀しさと寂しさが同居する時期でもある。

 霜降が過ぎると、秋は深い。そして風にさらわれるように一年の六分の五が去ろうとしている。
 一年を時計にたとえれば、今ごろはたそがれ時をすぎた夜の八時ごろだろうか・・・

 近くの民家の庭先では、まだ朝顔が咲き続けている。最後の一輪かと思えば、次の日も、また一輪と咲く。
 小さくて、消え入りそうに淡い青色の朝顔だけど、それでも冷気に耐えて咲く姿はいじらしい・・・


 今日聴いたジャズ・・・

 TIM SUND TRIO・・・「TRIALOGUE」


 本作はドイツのピアニスト、TIM SUNDの2002年のピアノトリオ盤。
 ヨーロッパらしい落ち着いた美しさを湛えた好盤。全編、美しいメロディで彩られている。
 一聴するとECMらしさを感じる。心地よい空間の広がり・・・ドイツならではの硬質なタッチと深部からきらめきを放つ
 クオリティの高いリリシズム。。
 ヨーロピアン・ピアノトリオの系譜を受け継いだ美しい一枚。
 「NARDIS」「BLUE IN GREEN」「THE PEACOCKS」など馴染み深い曲が収められているところも嬉しい。


1・NARDIS・・2・PUZZLE 1499・・3・BLUE IN GREEN・・4・WHEN WILL THE BLUES LEAVE・・5・TRIALOGUE#1:
  THE CAGE MAP・・6・HIDDEN RHAPSODY・・7・TRIAGUE#2 LET’S OPEN THE YEAR!・・8・EL ROJO・・
9・TRIAGUE#3 A DEEPER SEASON・・10・THE PEACOCKS・・11・TRIAGUE#4 THE EVERGREEN TERRACE・・
12・RAVI・・・


 TIM SUND(p)
 MARTIN LILLICH(b)
 MICHAEL KERSTING(ds)


  2001年7、8月、録音。

  ライナーノーツはリッチー・バイラークによるもの・・・

藤袴(ふじばかま)

2012-10-22 15:20:43 | ジャズ

 キク科の多年草。秋の七草のひとつ。高さ一メートルあまりに達し、八、九月ごろ、茎の上に藤色の花をつける。
 弁の形が筒をなし、袴をはいたように見えるのでこの名がついた。
 奈良時代に中国から渡米し、古歌に蘭の花として詠まれたのも、藤袴である。
 気品があって美しい花である。おもに関東以西、四国、九州地方の河べりの土手などに自生しているが、数は著しく少なくなった。
 よく似ている鵯花(ひろどりばな)は香りが少ないので、よく、見分けることができる。


 ” 想ひごとふと声に出ず藤袴 ”(永万 裕子)・・・


 今日聴いたジャズ・・・

 NEW YORK LULLABY・・・「FRANCESCO CAFISO NEW YORK QUARTET」


 1989年 5月24日、イタリア、シチリア島のヴィットリア生まれ、ジャズ・アルト・サックス奏者、フランチェスコ・カフィーソ
 のリーダーアルバム。初スタジオ録音盤。スタンダード集。
 録音当時、彼は16歳という若さ・・・誰が聴いても16歳の演奏とは信じ難いのではないかと思う。

 ウィントン・マルサリスは「イタリアで見つけた宝石」と言い、ハリー・アレンは”これほど若くて才能に溢れたプレイヤーを
 見たことがない”と言っている。

 メンバーには、デヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、デヴィッド・ウィリアムス(b)、ジョー・ファンズワース(ds)という
 ベテランが顔を揃えている。


1・LULLAYBY OF BIRDLAND・・2REFLECTIONS・・3・POLKA DOTS AND MOONBEAM・・4・MY OLD FLAME・・5・ESTATE・・
6・WHAT’S NEW・・7・IMAGINATION・・8・WILLOW WEEP FOR ME・・9・SPEAK LOW・・

 16歳にして、これほどエモーショナルなプレイができるとは”驚き”の一言に尽きる。

 彼はすべてのミュージシャンが先生だと言っている。チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーン、ルイ・アームストロング、
 ビル・エヴァンス、それぞれのミュージシャンの音楽が自分に新たな、エモーションを教えてくれた・とも。


  FRANCESCO CAFISO(as)
  DAVID HAZELTINE(p)
  DAVID WILLIAMS(b)
  JOE FARNSWORTH(ds)


  2005年6月23、26日、ザ・スタジオ、ニューヨークにて録音。

  今後の活躍が楽しみなアルト・サックス奏者である・・・