HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

露呈したコンセプトの大甘さ。

2013-03-01 15:59:31 | Weblog
 3月2日から約1ヵ月間をかけて「ファッションウィーク福岡」が開催される。福岡市の天神や博多駅界隈に立地する百貨店、ファッションビルなどを巻き込み、セールやイベントによる共同販促の行うものだ。
 主催は「福岡アジアファッション拠点推進会議」で、地場ファッション産業の振興事業の一環となっている。ただ、参画する企業は、中心部の大手小売業やデベロッパー、流通が主体のため、周辺に立地する「地場小売業」への相乗効果はほとんどない。
 中心部のビルインであれば、中央のナショナルチェーンでも恩恵が受けられるが、エリアから外れる「地元ショップ」には何のメリットもないのだ。こうした点を見ても、「地場ファッション産業の振興」が単なるお題目で、いかに形骸化しているかがわかる。

 さらにそれを象徴するのがイベントの内容だ。3月1日はオープニング企画で、ライブパフォーマンスやファッション&トークショー。これは打ち上げ花火的で、理解できなくはない。
 しかし、約1ヵ月間の間に4回に分けて開催される「セミナー」は、 第一弾が「カリスマ達が語るゴスロリ」、第2弾が「モテるファッション、モテないファッション」、第3弾が「人気スタイリスト亀恭子さんのファッション講座」、第4弾が「シトウレイのstreet fashion Tips!」というラインナップ。
 それぞれ一般向けの客寄せ的なテーマである。講演者の顔ぶれがタレントライクな業界人であるところをみても、地場業界が期待するほどではない。まあ、共同販促で多くのお客に買い物させるという目的のギミックと考えれば、致し方ないかもしれない。

 だが、亀恭子を除き、これまでに拠点推進会議が実施した業界向けセミナーも、同じ顔ぶれで、同等の内容だった。つまり、企画に当たる側が前回の参加者の反響に基づき、今回は講演内容や人選を熟考したとは、思えないのだ。
 また、推進会議の母体は福岡商工会議所である。そこが所管する事業なら、対象は地場ファッション業界や事業者であるはず。それを通り越して、一般向けの企画に傾倒するのはどうか。それでは明らかに事業目的の軸がブレていく。
 間接的に地場の業界や事業者も潤うと言われればそうかもしれないが、商工会議所が本来行うべき業界振興や経営指導ではないのか。 そこに稚拙な企画、大甘なコンセプトが露呈する。

 もっとも、周辺から漏れ伝わってくることを総合すれば、これらの企画は実質的に事業を掌握する利害関係者の思惑で動いていると、考える方がごく自然だ。企画運営委員長は、ファッション専門学校の校長。自校の有利になる企画を考えるのは、当然だろう。
 19歳、20歳の専門学校生には「チャイナプラスワン」や「テキスタイル連携」、「セールの前倒し」なんてテーマより、「スタイリスト」や「ファッション雑誌」の方が興味津々だし、次ぎなる入学者確保まで想定すればなおさらだ。まあ、この程度のミーハーセミナーを聞いたからといって、アパレルはもちろん、メディアの世界に簡単に就職できるはずもないのだが。

 またFACo(福岡アジアコレクション)のプロデュースに当たる、ローカルテレビも深夜枠の自主制作番組をリンクさせる程度。地方色を拭えないショップレポートが大半だから、東京在住の業界人にコネを付け、パイプを作りたいという目的があるは、容易に想像がつく。
 言い換えれば、それだけファッション音痴だってことだろう。周囲に「FACoはNBでやりたい」と語っていることを見ても、地域振興はこれぽっちも考えていないということである。
 こうして今回の事業も、利害関係者の凡庸な脳みそと思惑で行われ、投資効果が極めて曖昧なものになりそうである。

 今回の広報活動については、資金に限界があるためマス媒体は使われていない。公共広報誌の他はガイドブックとサイトが主体で、告知は行き届いていないようだ。
 ただ、それらを見ても「媒体を作ったのだから、お前ら広告を出せ」と言われているような気がしてならない。ディーラーヘルプも、販促提案もあったものではない。これでは商法改正前の総会屋系代理店と、どこが違うのだろうか。
 地場ファッション産業の振興事業と言っておきながら、専門学校やローカルテレビ、そしてマイナーメディアと、その周辺の業界が潤う事業と化す。これは先頃、物議を醸した福岡市の「かわいい区」にも共通する。的外れも甚だしいということである。

 推進会議が掲げるスローガン通りに「福岡を元気のあるファッション都市」にするには、地場産業の問題点を解決し、新たなビジネスを作り出すこと。決してタレントを使うことでも、イベントを行うことでもない。その目的が明確になっていかない以上、今後も糾弾せざるを得ない。



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