HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

流行はボトムから浸透?

2017-01-25 07:41:29 | Weblog
 今年のトレンドはどうなるのか。さらに売れるアイテムとなると、予測は難しい。アパレル業界が厳しい環境に置かれている中で、何とか抜け出そうという仕掛けがうまくトレンドになってくれると、儲けものと言った感じだろうか。

 デザイン面の傾向と言えば、一昨年にこのコラムで「太めが復活しそうな予感」と題して書いたが、昨年あたりからメンズでは、ヤングのトップスでワイドシルエットを取り入れる動きが出始めている。

 昨年の春夏はSPAを中心にビッグシルエットのTシャツが売り出され、秋物ではセレクトが打ち出したワッフルにも、リラックス系のシルエットが加えられた。MA-1の進化型としてパッデッドでドロップショルダーのジップアップジャケットも出てきている。ワイドなトップスなら、今年はヤングアダルトくらいまで広がる予感がする。

 細身一辺倒だったボトムでも、すでに「oversized」が散見されるようになっており、なおかつクロップドやロールアップしたものが登場している。雑誌メディアはスタイリング提案をし始めているが、実需レベルでいきなり上下とも太めにすると、上背があってよほどスタイルが良くない限り野暮ったく見えてしまう。まして一大トレンドになるかは別問題だ。今年のマーケットがゴロっと変わるかは、秋以降の商戦になるのではないか。

 戦略的、先行提案で考えると、商品にバリエーションを増やせるSPAなら、1アイテムが10型くらいあれば半分程度を太めにして様子をみることができるだろう。昨年のMDでその動きを見せたところもあった。おそらく今年はさらに顕著になるかもしれない。

 セレクトはどうだろうか。派生業態を持っているところなら、思いきって挑戦できなくはない。でも、オンリー業態がフェイスをいきなり変えてしまうのは、反動が大きさから二の足を踏むだろう。なおさら、仕入れオンリーの店舗になると、個々のメーカーがこぞって打ち出さない限り、打ち出しは難しい。

 そもそも日本セレクトは、根底にアングロアメリカンスタイルがある。それを日本人の体型に合わせて焼き直して売れたわけで、モード感漂うリラックススタイルとは相容れないはずだ。御三家にとっては太めのシルエットと言っても古き良きクラシックが本筋だろう。なおさらカジュアルに取り入れるのは容易ではないから、アメリカンスタイル本来のシルエットに回帰する方が妥当ではないのかとも思う。

 だが、後発、新興勢力のセレクトとなると、思いきってトレンドを仕掛けないと、市場もなかなか反応しないわけで、その辺の塩梅が今年の勝負所かもしれない。トップスは比較的受け入れやすく、ユニクロでもできるが、ガラっと変えて行くには、いかにカッコよく穿きこなすボトムを提案できるかだろう。

 平均的日本人の脚の長さ、ヒップラインという永遠のテーマに対して、スタイル良く見せるシルエット&着丈&裾幅の黄金比率があるかどうか、また導き出せるかどうかである。試着をしたお客に対し、ショップスタッフが「シルエット、きれいでしょう」なんて聞き飽きたフレーズではなく、姿見を見た瞬間に「いいじゃん」と思わせるような商品企画がカギになるのではないか。

 それを実現するには、コットンのギャバやツイル、麻といったワンパターン素材では「落ち感」がハッキリして、裾にかけてのストレートなラインはブルースリーのカンフーパンツのように見えてしまう。モード感を出すにはフラットな生地では難しそうだ。あまりに厚手だと春夏ものは熱さがネックだし、コストを考えると妙な小細工も難しい。デニムをはじめ、コードレーンやシアサッカー、ピケなどの定番生地で新鮮さを出せるか。リラックス過ぎずにタウンに堪えられる素材使いがどうなるのか楽しみだ。

 秋冬になるとツイードやホームスパンなどで、トラディッショナルなテイストの方が打ち出しやすい。さすがに70年代のバギーやパンタロンは難しいが、太めでも裾を細めにしたり、ロールアップしたりするクラシカルな穿きこなしだと、トップスとの相性も良くなるはずだ。

 思いっきりモードに振るなら、ジョッパーズを今風にアレンジしたり、ドローコードを使って脇や裾に脚にフィットさせるようにしたり、下にレギンスを穿くレイヤードスタイルとかの変化がほしい。それだとロングブーツやレースアップスニーカーと合わせられる。同じテイストのトップスとコーディネート次第では、近未来的でスポーティな着こなしになるのではないか。



 一方、レディスはトレンドだからではなく、痩せて見える方がスタイルがいいとの固定観念から、タイトシルエットは鉄板だ。それがトレンドとして定着し、ストレッチ素材の浸透もあって、ここ20年ほどは細身全盛だった。しかし、ファッションは体型をカバーしながらいかに自己を主張するかも大事で、シルエット変化がトレンドのカギを握る部分はある。バルーンやコクーンといったラインの登場がそうであり、ドメコンやモードエレガンスへの反転も後押しした。

 アワーグラスラインという女性服の基本形から脱却しつつ、決して太って見えない、ウエスト回りがダボッとしないという条件を克服できれば、太めは新鮮に見え売れていくだろう。ただ、ワイドでボクシーになると、メンズよりもなおさらトップスとボトムのバランスが重要になる。その答えとしては、シャツではヨークと切り替えで前身頃にしっかりドレープを入れたり、ウエストから下を異素材でフレアやフリル処理も考えられる。逆に後身頃の分量を多めにしてボリュームを出すのも手だ。スタイリングは何も正面から見られるとは限らないからである。

 ニットでは袖口や裾にかけて緩やかに広がるライズステッチ、ウォーベン切り替えなどを取り入れるとスッキリ見える。身幅はそれほど太めにしなくても、袖を思いっきりoversizedにするとか、ドロップドショルダーにすれば、かなり変化がつく。

 ボトムはワイドシルエットがずっと存在していたので、メンズほどの抵抗はないと思う。今年のトレンド感とすれば、レングスだろうか。くるぶし上ほどのクロップドパンツで、これをデニムやキャンバス地で仕掛けても行けるのではないか。ヒップラインから裾に広がるワイドラインで丈は短め、メンズテーラーのようなトラウサーズ、ウエストにプリーツを入れたもの、大胆に入れたサイドスリット等々は、タウンのみならずオフィスでも十分通用する。ワイドパンツは穿くと颯爽として見えるので、キャリア層の女性にはぜひ挑戦してほしい。

 モード感を出すなら、裾を極端に広げたカットソーのワイドレッグもありだ。鳶職の兄ちゃんみたいだけど、海外では暴走族スタイルもクールなのだから、穿きこなし次第だと思う。裾を絞らないからロングスカート風にも見えるし。これならSPAのジョガーパンツやガウチョパンツに飽き足りない層を開拓できるかもしれない。ボトムのワイドラインは、レディスの方がメンズより抵抗がないはず。どんどん打ち出して行けば、トレンドになっていく可能性は高い。細身は飽きたと感じている層にいかにアプローチできるかがカギになるはずだ。

 メンズ、レディスに共通することは、全体を完全に太めにするのではなく、パーツやディテールで変化を付けると、だいぶ変わったように見えて来ると思う。SPAなら無地が中心だから、1アイテムでいろいろと打ち出せるのではないか。NBや専門店系アパレルが単品でどう変化を付けるかだが、上下、フルアイテムではかなりのリスクがあるので、挑むには腹をくくらないと難しい。

 メタボが気になるおじさん、おばさんはタイトは着づらいし、ワイドは太ってみえるからさらに抵抗感があるかもしれない。でも、メンズスーツではアルマーニスタイルで一世を風靡したソフトスーツがリバイバルするとの見方もある。当然、パンツもプリーツが復活するだろう。これならおじさんだってゆったり穿けるし、自分が20代の時の流行に戻ったと考えれば、決して気後れしないと思う。

 メーカー側にとっては、用尺が増えてのコストアップが頭の痛い問題だが、ヒットトレンドになれば売上げもつく。筆者はレディス専門畑で来たので、今年は昨年とはガラッと変わって、ワイドなシルエットの女性が街を闊歩する光景を見てみたい。

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