HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

ネット通販に待ったをかけるのは。

2011-10-17 12:55:11 | Weblog
 インターネット通販のファッションウォーカーは、ファッション通販サイトなどを運営するファッション・コ・ラボに事業を譲渡した。同社はもともと、携帯通販サイトのガールズウォーカードットコムや東京ガールズコレクション(TGC)を運営するゼイヴェル(現在のブランディング)が、2005年に設立したPC向け通販サイトだ。

 11年8月期の売上高は約80億円、TGCに登場するものなど300ブランドを展開し、60万人ものメルマガ登録会員を抱える。その規模はゾゾタウンのスタイルトゥデイ、マガシーク、スタイライフに次ぐ。譲渡先のファッション・コ・ラボはNBアパレルのワールドが100%出資する子会社だから、メディアはワールドが事実上買収することになるとの論調を伝えている。
 年商3000億円超のワールドからすれば、80億円程度の企業は中堅ブランド一つ分の程度の売上げに過ぎないが、買収の背景には自社が一番弱いF1層向けに新たなブランドを開発するより、既存のプラットフォームを手に入れた方が手っ取り早いとの考えもあるだろう。

 それ以上に3期連続で減収減益のワールドにとって、売上げ回復は待った無し。長らく専門店卸や百貨店SPA、バイイングSPAなど「店舗販売」を主なチャンネルとしてきただけに、ネット通販においてはマーケティングも、商品開発も遅れをとっている。
 これだけスマートフォンが普及すれば、携帯ショッピングがPCサイトに一本化されるのは時間の問題だし、店舗や販売スタッフなどコスト面を考えてもネット通販は魅力的だ。経営戦略的に買収は売上げ回復ととともに、販売チャンネルに対する選択と集中、業態バランスを見据えてのことだ。

 でも、このまま店舗販売とネット通販が逆転してしまうのだろうか。ネット通販業界はその業況指標をアクティブ率(顧客が1年以内に商品を購入した比率)やコンバージョンレート(アクセス数に対する購入比率)で表す。アクティブ率はゾゾタウンが38%でダントツだが、マガシークやスタイライフは同20%強程度に止まる。それでも良いという考え方もあるが。
 ただ、ネット通販の場合、購入後の商品の動きはわからない。顧客の中にはイメージとそぐわなければ、そのままオークションやユーズドに流すものもいるだろう。それではブランド力が低下する恐れがあると、ネット通販を拒否するアパレルメーカーも少なくない。
 小売り側にもネットチャンネルで直販するメーカーとは、実質バッティングを認めたとして取引しないとところもある。店舗や人員に莫大な投資をしているにも関わらず、業界の不文律がなし崩しになるからだ。

 今の状況を考えると、ネット通販はまだまだ伸びシロがあると思うが、いくらサイトがあっても新しいコンテンツ(商品)が増えなければ売上げは拡大しない。地デジに変わってチャンネルが増えても、視聴率が伸びないテレビを見れば一目瞭然である。
 IT事業者が好きなマーケティングには、既存の市場を捨てたところに新たな市場が生まれるという考え方もある。インターネットにぜったい馴染まない人肌の温もりを感じるブランド。中小零細の専門店系アパレルが得意とする加工や染めの技術を生かした商品。それはリアルな接客でないと感じることができない。こうしたコンテンツの復活こそが、ネット通販に待ったをかけるのではないかと思う。
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