HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

白ラベルの黒子。

2022-04-27 06:33:43 | Weblog
 楽天市場をPCで利用する際、アパレルの特定ジャンルを開くと、トップページで新品と中古品がごちゃ混ぜで表示される。ページ左のカテゴリーをクリックしてそれぞれを分けなけない限り、商品名に付く中古表示が小さいので勘違いする人も多いのではないか。個人的には楽天市場のサイトは非常に見にくく、ほとんど利用しなくなってしまった。

 楽天側がユーザーの使い勝手を考え、サイトのデザインやプログラミングをたえず修正する姿勢でいるのか。それともアクセスやコンバージョンレートを上げるため、加盟店を増やすことしか眼中にないのか。メルカリが老弱男女のユーザーを獲得し、凄まじい勢いで利用されている点を見ると、やはり中古品は切り離して専門サイトを展開した方がユーザーにとっても、マーケティング的にも効果があると思うのだが。どうなのだろう。

 一方、有名ブランドをはじめ、Amazonなどのプラットフォーマーがアパレル販売でしのぎを削る米国では、secondhand(セコハン/中古品)のリセール(再販)でも専門サイトが次々と登場。リセール各社の中には、サイトデザインからプログラミングまでにテクノロジーを駆使し、商品の預かりからサイトアップの「ささげ業務」、販売、発送までのフルフィルメントでも、独自のシステムを構築している企業がある。


中古品リセールで独自システムを構築



 リセール事業者と新品販売の小売業が提携する動きもある。中古品通販の「thredUP」(https://www.thredup.com)は、アパレル専門店チェーンPACSUNの中古品専用サイト「Pre Loved PAC」(https://pacsun.thredup.com)を開設した。これは一体どういうことか。「新品を販売して収益を上げるアパレル専門店が中古品のリセールに乗り出せば、新品が売れなくなって逆効果ではないか」。そう言われれば、そこまでだ。



 しかし、PACSUNの狙いは違う。企業として幅広い消費者に「地球環境に負荷をかけず、エコロジーを進める」という企業姿勢をアピールするためだ。米国ではZ世代と言われる若年層で着古した洋服は捨てずにリユースするなど、循環させていこうという意識が強くなっている。こうした層をターゲットにするアパレル専門店としては、中古品のリセールはもはや避けて通れなくなっているのだ。

 ならば、自社でリセールの仕組みを作ればいい。しかし、リセール商品を探している消費者によって、求めるモデルは変わってくる。個店ごとに在庫を抱えたもの(セカンドストリート式)、ラグジュアリーブランドに絞ったもの、中古品の売り手と買い手をつなぐ(メルカリ式)ものなど、専門性が必要になるのだ。

 その上で、専門サイトを制作しなければならない。そこで消費者にとって使い勝手のいいサイトとは何か。それはデザインはもとより、プログラミングからアルゴリズムまでに左右される。かつてZOZOTOWNが中古品の販売を行なっていたが、商品管理からフルフィルメントまでのシステムが構築できず、顧客からのクレームが相次いで休止した。やはり新品を販売するのとは別のノウハウが必要になるわけだ。



 PACSUNの中古品専用サイトで提携したthredUPは目下、中古アパレルのリセールで急成長を遂げている。同社は巨大な処理センターを持ち、商品は売り手のメーカーや小売事業者などから預かりリセールを代行するだけ。HPではその業務フローが動画で公開されている。(https://www.thredup.com/impact)

 まず、売り手がWebサイトに登録すると箱とラベルが送られてくるので、売りたい商品を箱詰めして返送する。それをthredUPは売れるもの、売れないものに分別した後、撮影、スペック記載などのささげ業務を行ってサイトにアップする。商品は自動のハンガーリフトでカテゴリー別に仕分けされ、センターの巨大倉庫内にストックされる。商品が売れると、thredUP側の手数料が差し引かれて残りが売り手に送金される仕組みだ。

 売れなかった商品は売り手に戻すか、寄付するかの選択もあるが、前者の場合の費用は当然だが売り手の負担となる。つまり、thredUPは売り手のメーカーや小売事業者のマーケットプレイスに、リセール商品の預かりから販売までのフルフィルメントとテクノロジーをもつプラットフォームを販売していることになる。

 このプラットフォームでは、1日に10万着以上のアイテムを処理する。シングルSKUのロジスティクス用に構築されており、専門性を極めた分散処理のインフラ、独自のソフトウェア、データサイエンスで構成される。具体的には、視覚認識を強化するための機械学習とAI(人工知能)、リセール価格を決定するための多層のアルゴリズム、1日に数十万枚の写真を撮影するオートカメラなどが備わっている。米国のリセールビジネスはそこまでのシステムがあって、競争力を持てるということだ。


新品を販売する企業はリセールに取り組めない?

 新品を販売するメーカーや小売事業者がリセールのモデルを作り上げるのは、いくら米国と言えど容易ではない。thredUPも「従来の小売りおよびECはリセールの複雑さに対処するように設定されていない」と言い切る。楽天市場のサイトで新品と中古品がごちゃ混ぜになっているのも、当てはまるだろう。だから、thredUPのような企業が自社のリセールプラットフォームをメーカーや小売りに販売する。言わば、黒子に徹するわけだ。

 thredUPがPACSUNの中古品専用サイトをPACSUNのWebサイトと同じデザインにしたのも、thredUP色を消してPACSUNが自社のリセールを訴求しやすくするため。同社はこの仕組みを「Resale as a service/RaaS」と名付けているが、業界でも「White Label」という呼称があり、リセールビジネスの黒子として浸透しつつある。



 thredUPはこのサービスについて、「Powering the Future of Secondhand/中古品の未来に力を与える」と題し、契約企業を紹介している。そこにはAdidas、crocs、GAP、Abercrombie&Fitchなどの錚々たる企業、ブランドが名を連ねる。また、ディスカウントストアの「Walmart」のマーケットプレイスにも、thredUPのシステムが導入されているという。Walmartと言えど、お客がたまたま持っていた「高級ブランド品」を売りたいというニーズがあるからだろう。

 日本でも、あれだけメルカリが勢いを持ったのだから、中古品リセールが次のステージに移っていくのは間違いない。当然、その中にはアパレルなどリセールの仕組みを細分化して、専門サイトで運用していく選択肢もある。果たしてthredUPが作り上げたようなリセールのビジネスモデルを日本企業でやろうとするところが出てくるのか。



 ただ、現状ではネット通販の伸びから、投資マネーが物流用地の取得やセンター建設に流れている程度。しかし、EC自体は確実に成熟し次のステージに移っていく。商品は新品に限らず中古品もあるのだから、専門的なプラットフォーマーやフルフィルメントが求められるのは確実だ。ならば、不動産だけでなく、コンテンツとなる新たなリセールEC、またテクノロジー開発・整備への投資があってもいいのではないか。

 筆者は日本で流通するブランドではなかなか欲しい商品が見つからなくなり、一時は海外メーカーの商品を個人輸入するなどしていたが、それも最近ではめっきり減った。代わってタンス在庫をリメイクするため、新たに加える素材探しでリセールサイトを見るようになった。

 特にラグジュアリーブランドは上質な素材を使っているので、中古品でもリメイクには十分に耐えられる。ネットでは細かな質感まではわからないが、高級ブランドなら使用されている素資材は決して裏切らない。だから、解体して素材のみを利用するようにしている。

 エコやSDGsを意識したクリエーションを発表するデザイナーも増えている。だから、その素材調達先として中古品のリセールサイトにも潜在ニーズはあるのではないか。日本でもリセール専門のプラットフォーマーの登場が待たれるところだ。

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