HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

新しいが古着を制す。

2023-04-26 07:35:05 | Weblog
 古着が人気だ。筆者が住む福岡でも高級ブランド店が撤退する一方、古着店の進出は跡を絶たない。過去3年間にビルイン、路面で14店舗が出店した。2022年12月には東京・下北沢などで人気を博する「デザートスノー」が満を辞して福岡パルコにオープン。何度か訪れてみたが、比較的プレーンなアイテムを揃え、編集もきちんとしている。商品の状態が良く、これなら古着に抵抗がある人でも購入のハードルが下がるのではないかと感じる。

 その1ヶ月ほど前、大分市から大名に進出したのが「ゆとり」だ。商品は古着の割にトレンドから大きく外れないものを揃え、価格を抑えているところも競争力になりそうだ。大阪からは「カカヴァカ アール」や「JAM」が進出した。両店とも古着店の王道を行くような店舗で、広い店内にはジーンズからロゴ入りのTシャツやスエット、スタジャンまでアメカジテイスト、バリエーションの豊富さで勝負している。



 古着は若者に限ったわけではない。ヴィンテージやデザイナーブランドの輸入物は品質も良く、経年によって逆に味が出てくるため、洋服マニアの中高年を捉えて成長している。今まで古着を扱うことなど考えられなかった百貨店(伊勢丹本店)が古着店と提携して催事を展開するまでになった。担当バイヤーも「ヴィンテージクローズはお洒落な着こなしとして身近になってきた」と堂々と語っている。

 2000年以降、グローバルSPAやファストファッションは、製造コストを下げて作ったチープな服でマーケットを攻略した。古着人気はその反動でもあると思う。量産の服のように同じものが出回らず価格が手頃なこともあって、個性を主張したい若者は取り入れやすい。また、新品の服と比較して価値が高いと判断すれば、若者は多少割高でも手を伸ばす。中高年の洋服マニアなら、なおさらだろう。

 昔なら古着店は、その店を訪れるマニアやファンが対象だった。ところが、今ではネット通販が普及したことで、マーケットは全国に広がる。その古着を欲しいと思うお客がどこかにいるかもしれない。店舗販売と並行してオンライン販売を強化するところは、全国から御用達がある。マッチングの可能性が古着店の営業を下支えしているわけだ。

 ワールドのグループ会社で、主要都市にデザイナーズブランドのユーズド店を展開するRAGTAGは、オンラインショップで展開する商品を店舗に取り寄せできるようにしている。(但し、税込20万円以上の商品が含まれている場合は取り寄せできない)古着でも実際に試着をしたり実物を見てから、購入を判断したいというお客の要望にそったものだ。

 古着専業ではないセカンドストリートでも、各店舗の在庫を近隣店に取り寄せることができる。古着の人気が高まるにつれ、各店が各様の仕入れや品揃え、販売スタイルを競うようになった。古着と言えど、ファッションアイテムである以上、OMO(オンライン&オフラインの融合)はお客を捉える重要な手段となる。全国に店舗を構えれば、自社のネットワーク、物流網も最大限に生かしていこうということだ。

 ただ、大都市を中心に古着店は群雄割拠の状態になっている。そのため、次のビジネスモデルをどう構築していくかが勝負の分かれ道になる。1994年、大阪ミナミのアメリカ村で産声を上げたWEGOは、90年代末の東京・下北沢進出を皮切りに一気に全国展開の古着店にのしあがった。2000年代に入ると、アパレルにも進出してユーズド風ストリートカジュアルで、H&Mを凌駕するファストファッションに躍り出た。

 その手法はODM(相手先デザイン製造)調達で、デッドストック素材を活用したり、デッドストック製品のをリメイクすることで、エッジが効いたトレンド商品を低価格で打ち出した。デザイナーもの、アメカジ、ヴィンテージなど数々の古着を扱うことで磨かれた感性がユーズド風の商品作りにも生きたわけだ。


古着の競争激化で、行き着く先は…

 先日、そんなWEGOが古着のリメイクを本格化させるとの報道を目にした。同社は古着の買い付けを主に「ベール仕入れ」で行っている。これは送料コストをできる限り削減するために古着を圧縮包装して塊にしたものだ。100枚程度ものものから200枚オーバーのものまで大小様々のタイプがある。価格はベール単位なので、古着1点にすると非常に単価が安く、大量に仕入れることができる。

 一方で、デメリットもある。圧縮された塊にはどんな古着が入っているかは確認できない。汚れやダメージはもちろん、臭いがきついものなどが含まれる可能性がある。販売できないものは廃棄処分に回すしかないが、それにしてもコストがかかる。WEGOはそうした古着をリメイクすることで、新たな価値を持たせて販売できるようにする。併せて、不良在庫をできるだけ出さず、SDGsにも取り組んでいく狙いだ。

 大阪にある同社の拠点に企画デザイン、縫製の施設を設け、デザイナー3人を加えた8人チームで仕立てる態勢をとる。デザインは古着を見てから構想するのではなく、先にアイデアを出し合った上で、売りにならない在庫の中から合致するものをピックアップして商品化するものだ。もちろん、二つの同じ商品がない完全1点ものになる。

 第1弾は全部で37型で、価格は最高で約25,000円。古着にしては割高だが、1点ものという付加価値とデザイン次第では購入するファンがいるかもしれない。今後、社内のデザイナーがどこまでのクリエイティビティを発揮できるか。また、縫製まで手がけることで、服としても完成度を高めていけるか。ユーズド風ストリートカジュアルを作り上げた同社だけに期待をして見ていきたい。



 ワールドが2022年11月2日~6日まで、東京のワールド北青山ビル1階で開催した「246st.MARKET」では、RAGTAGの在庫を集め、一般客に販売している。同イベントのコンセプトはGOOD FOR FUTURE。リユースとクリエイティブにフォーカスし、新品を販売する一次流通と古着を販売する二次流通を循環させるサスティナブルな市場を作り出すことにも取り組む。

 昨年のイベントでは、10名のクリエイターが常時約30万点保管されているRAGTAGの商品倉庫に足を運び、インスピレーションを感じた商品をセレクトし、ビル1階のスペースに展開した。筆者はたまたま東京出張と重なったので訪れてみたが、デザイナーものが中心に揃えられ、平日でもありながら訪れるお客さんも多く、購入まで行くケースも見られた。

 他社でも店頭、ネットと展開できていない莫大な量の古着があると思われ、その中で埋もれたものを発掘し、販売機会を作ることもサスティナブルな市場を作る上では重要なことだ。クリエーターとしても単なる古着の発掘だけでなく、他がデザインした服を見ることで刺激になるだろうし、新たなアイデアソースにもなると思う。



 古着店のビジネスモデルは、大きく分けると以下のようになる。
 ①買取り、再販する小規模店
 ②米国製のデニムやレザーを主体に販売
 ③世界のヴィンテージ&ブランド古着を扱う
 ④グラム単位で測り売りをする業態
 ⑤ブランド対象に買取り、再販する全国チェーン
 ⑥補修やリメイクを施して新たな価値を創出  ⇦今ココ

 次にどんな業態が出現し、どんなビジネスモデルを作り上げるか。古着はモード志向や奇麗目トレンドに圧倒される部分もあるが、リメイクのノウハウを高めればそれさえ可能になるかもしれない。

 ただ、JAMなど有力店は地方から東京に逆上陸しているが、優良エリアでの路面展開では家賃などコスト負担が重くなる。古着人気は確かだが、コンスタントに収益を上げられるかは別問題。次のビジネスモデルで確実に利益を生み出せるかが今後の勝負になる。メーカーや小売りの枠を超えて、各社がどんなモデルを構築するか。今後も目が離せない。


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