HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

イベントはもう販促にはつながらない?

2013-08-20 12:49:47 | Weblog
 渋谷パルコが創業40周年を記念して、10月18日~28日に「シブカル祭。」なるイベントを開催する。今年は同館内やミュージアム、広場などで、アート作品の展示やライブ、ダンスパフォーマンスなどを行うという。同イベントは過去2回、来場者が約50万人と好評を博している。そのため、今年は「応援」をテーマに才能を発掘し、新しいチャレンジに取り組む女性クリエーターたちの様々な作品を発表するそうだ。

 もともとパルコは文化事業、カルチャー発信には積極的だった。その後、長い低迷を抜け、再び攻勢に出てからも、イベント事業に注力する方針は変えていない。裏を返せば、ファッションビルの看板、有名なブランドやショップをリーシングするだけでは、館全体にそれほどの集客効果は見込めないということだろう。

 テナントに力があれば、個の売上げは十分に上げられるが、全部が全部そうとは限らない。ただ、パルコはイベントを集客の手段にはしているものの、販促につなげているとは思えない。イベントそのものが商材的な要素で、お客はそれを求めてやって来ているからだ。デベロッパーとしての期待度も、結果的に売上げにつながってくれればという程度にしか見えない。

 今年の場合、「若手クリエーター」ということからしても、決してビッグネームのタレントではないが、カルチャー色が全面に出ることでパルコらしさは際立つ。それはストレートに集客効果を狙うというより、参加型にすることでSNSなどで情報が拡散されれば、逆に集客が図れるかもしれないというものだろう。今の時代のイベントはこういう手法の方が実効性が期待できるということである。

 一方、テナント側はイベントに販促効果を期待するのは言うまでもない。イベント経費はテナントの売上げ部率に内在する販促費が当てられている。当然、集客が図られるのなら、売上げにつなげたいだろうが、館自体がお客で賑わっても皆が商品を買うとは考えにくい。むしろ、集客=販促にはつながらないのが、昨今のイベントの特徴とも言える。

 パルコの場合、2012年決算は増収増益だった。同社はその理由について売れ筋テナントのリーシングとカルチャーイベント、そしてハウスカードの「ポイント還元」が相乗効果を発揮したと見ている。ただ、月次売上げでは、13年7月はバーゲンという夏の最大販促イベントを展開したにも関わらず、対前年比では渋谷店(93.9%)、池袋店(94.6%)、名古屋(89.4%)と大都市の店舗は苦戦した。全店を見ても昨対をクリアしたのは、札幌や福岡など5店に過ぎない。

 セールになればプライスダウンするのだから、お客の購買点数を増やさなければ、売上げは伸びない。つまり、割引は集客効果にはなっても、もう販促にはつながらなくなっているのだ。だからこそ、デベロッパーはレギュラー月にハウスカードのポイント還元率アップというキャンペーンを展開するし、テナント側もこれの実効性があることで不満は漏らすところは少ない。ただ、テナントの中には、デベロッパーが代理店に企画から丸投げするイベントに異議を唱えるところがあるのも確かだ。

 パルコほどカルチャー色が出せない駅ビル、JR博多シティが1周年記念イベントを実施した。企画は競合プレゼンで、某代理店のものが通った。それは地元で活動するクリエーターによるオリジナルレターセットの展示だった。これにはさずがに販促効果を疑う声が出たのは、言うまでもない。しかも、「筋が違う」との声もあちこちから聞かれた。

 先に天神のイムズでも同じようなイベントが行われていたから、カルチャー色の企画として通りやすかったのかもしれない。それにあまり経費をかけない条件もあったようだ。代理店側も子飼いを含め地元のクリエーターに「営業の場」を与える約束で参加させたのは容易にわかる。ただ、その経費は間接的にテナントが部率から支払われているのだから、不満が出るのは当たり前だ。

 大都市のパルコが示すようにブランド乱立の中で、イベントが販促効果を発揮するのは難しくなってきている。だから、イベントそのものを商材にする戦略はわからないでもない。テナントもイベントによる販促効果に期待する時代ではなくなったことを自覚すべきだろう。イベントで集客が図られれば、プロパーで販売することに力を入れるべきなのだ。

 ただ、集客や販促といった目的を考えるイベントなら、少なくともその達成度合いが明確に検証されなければならない。巨額な公金が使われるものではなおさらだ。奇しくも、今月末には8月9日にプレゼンが実施された来春実施の「ファッションウィーク福岡2014」の事業委託業者が決定する。

 企画運営委員長のY氏は、代理店各社が雁首揃えた説明会で「福岡に多くのお客さんを呼び、服を買ってもらう。イベントはその手段」を強調していた。まあ、天神などで商業施設を運営するデベロッパー各位も出席していたため、リップサービスもあたっただろう。それに福岡アジアコレクションの大義を当初の産業振興や人材育成から、「集客に貢献している」とすり替えたことを見てもよくわかる。

 しかし、パルコほどのカルチャー色を出せず、やはり売上げ効率を求めるデベロッパーが集客効果だけで満足するはずがない。また、700万円という事業資金には市民や県民の血税が含まれている。この再配分が代理店や都市部の商業施設だけで良いはずがない。一般の小売店だってファッションを売っているところはいくらもあるし、多くのお客に来てほしいのは共通の願いだ。代理店の企画を発展させ、適当なところで線引きすることは許されないのだ。

 説明会が終わった後、代理店は早速、イベント会社に会場設営の見積もりを取っていたようだ。もう頭の中はイベント一色なのである。でも、その程度で集客を図り、それを販促にまでつなげられるはずがない。 Y氏は前回の失敗原因を「準備期間がなかった」と、突貫企画のせいにしていた。でも、今回とて代理店が企画に時間を割いたのは10日程度。業者が決まればその企画内容で進めていくだろうから、そんなものは言い訳に過ぎない。

 イベントに対する期待や効果は、集客すれば良い、販促につながらないと無意味。主催者や委託業者と小売業者で、温度差がある。ただ、結果は数字であり、それがイベントによるものなのか否かは、きちんと検証されなければならない。失敗すれば企画当事者が詰め腹を切るくらいの覚悟は当然だろう。パルコのような上場企業はもちろんのことだが、市民の血税を使う公共事業ならなおさらである。
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