HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

白は質が左右する。

2018-09-12 05:08:39 | Weblog
 メンズのファッション雑誌はめったに見ないが、先日、図書館で調べものをした折、雑誌コーナーで開架されている「レオン」の2018年9月号に目が留った。特集タイトルは「『上下おソロ』で楽チンお洒落」。手に取ってペラペラめくっていると、「『白T、白ス』があれば、『上下おソロ』はキマるのです」との企画で、白のTシャツとスニーカーがピックアップされていた。



 9月号なので、秋物の立ち上がりだ。「共地のジャケット&パンツを着こなす」にも、残暑を考えると、インナーはTシャツで十分。それに同色のスニーカーを合わせようという提案のようだ。どちらも白なら清潔感もあるし、お洒落に見える。それに50代のオヤジが若々しくに見える着こなしは、ブランドは別にしても単色の組み合わせくらいじゃないか。なかなか的を射た企画だと思った。



 もともと足下を白のスニーカーで決めるスタイリングは、モデルが先行していた。 シーズンは冬。着丈がくるぶしが見えるくらいスリムパンツやシフォン系素材のロングスカート。そんな上部が黒無地なら下には白を合わせる。秋冬は上から下までダークトーンで統一しがちなので、足下を明るくして軽やかに着こなす狙いのようだった。



 これがトレンドとして広がり、レディスではジャケット&パンツでもインナーと足下をホワイトに統一する着こなしも出現した。それがレオンの編集企画で、50代のオヤジ世代にまで入って来たということだ。ただ、ちょいワルオヤジでも冬場にくるぶしを見せるのは堪えるから、秋の立ち上がりというのがギリギリの線だろう。まあ、レオン編集部が中高年読者に忖度したとも言えるが。

 そもそも、ヤング向けとオヤジ向けの根本的な違いは、価格やブランドを背景とした質感の差だと思う。若者なら、Tシャツが4オンス台の薄手を着ても様になる。ブランドも問わないから、H&M、ユニクロ、ザラ、GUでもOKだ。その分をスニーカーに投資して、ABCマートかなんかで1万円強のものが購入できる。逆に無印良品で3000円程度で買えるコットンスニーカーでも十分だろう。

 ところが、体の線が崩れかけたオヤジは、さすがにペラペラのTシャツでは年齢をカバーできない。というか、ジャケットのインナーに薄手の白Tなんかを着ると下着に見えて貧乏臭い。しかし、コシのある上質なメリヤス素材を使ったTシャツなら、体型に負けない強さがある。ファッション的には薄手のセーターを着る感覚に近いと思う。秋口なら、気候的にもセーターよりTシャツの方が向くのだ。

 価格は6000円〜1万円。価格に見合うクオリティはあるだろうから、一度洗濯して襟ぐりが伸びる心配はないと思う。染みがつきやすいという難点はあるが、大事に着れば1シーズンで終わりにはならない。実際、「ファクトリエ」はスタッフが2年前、昨年と購入した自社ブランドの白T(6,480円)を着てサイトに登場している。上質なTシャツほど洗濯するほどに体に馴染んで来る。3年も着れば、十分に元はとれるし、流行もないからリピーターになるはずだ。

 スニーカーは「靴」という性格から、読者に対し金銭的な余裕があれば、より上質なものを選ぼうという提案だ。これは今に始まったことではなく、モダンボーイの時代から「ショセに洒落が宿る」との不文律がある。歯科医だった母方の祖父も生前、靴にはお金をかけていたというから、間違いないと思う。革靴の場合、売れる色は8割が黒と言われ、逆に白のスニーカーなら大人向けのファッション提案にもなる。

 もっとも、レオンの編集方針は、国内外のラグジュアリー&デザイナーブランドのプレス・プロモーションを貫くところ。白のTシャツやスニーカーでもそうしたアイテムがピックアップされている。雑誌掲載の分は高級靴メーカーの「ジョンロブ」「ジェイエムウエストン」「サントーニ」から、中級の「スプリングコート」、量販ブランドの「コンバース」まで。価格は最高が11万円、最低が1万円代と幅広いが、やはりラグジュアリーブランドは最低でも数万円はするので、ドレスシューズの感覚だろう。

 実際に見て試着してみたいが、筆者が住む福岡では中洲で働くお兄さんの御用達のようなものはあるが、白無地でシンプルなものにはまずお目にかかれない。唯一、コンバースのレザースニーカー「オールスター・クップ」がソラリアプラザのオンリーショップに置いてあったので、確かめてみた。価格は14,000円と、本革にしては値ごろだ。

 レオンの記事には「高級感のあるスムースレザーをアッパーに使用しつつデザインもミニマルを徹底的に追求しており、ストリートシーンでよく見かける既存モデルとは一線を画す上品な佇まいが特徴です」とあった。だが、実際に現物を見ると、ベースがオールスターだけに高級で上品なイメージはない。試着はしていないが、スタッフの話では、「海外規格なので、日本仕様より横幅が多少広い」とのことだった。



 レオンでは取り上げられていないが、アディダスは今年、「STANSMITH NUUD」(価格不明)という白のレザースニーカーを発売している。こちらは写真で見ただけだが、革しぼが程よく出ていて、レギュラーのスタンスミスより質感が際立つ。通風用のパンチングがないのも、呼吸できる本革だからだろうか。シューレースを通す穴は、ハト目仕様ではなくパンチのみ。これはオールスター・クップにも共通する。

 NUUDは外革が純白だが、内側は着色してあるようで、フランス版ではグリーンというタイプもあった。足を入れると内側は見えないはずだが、モデルが履いて歩く時、インカラーがチラ見えするのを意識したのか。ブランドのカテゴリーがOriginalだけに裸をイメージさせる型式名からさりげない演出まで、計算し尽くしたのは容易に想像がつく。通販サイトではほとんどのサイズが売り切れているので、反響は高かったと思う。

 そんなことを考えながら、ザラも白のスニーカーを作っていたのを思い出した。改めて現物を確かめに事務所近くの天神西通りの店舗を訪れてみると、「エンボス加工入りホワイトプリムソール」「コントラストスニーカー」「マイクロパーフォレーション加工入りスニーカー」などがあった。どれもフェイクレザーだが、価格は5,000円〜7,000円程度で、スタンススミスの半額くらいだ。

 ファストファッションだから1シーズン持てば十分との理屈で、これらの価格に落ち着いたのはわかる。しかし、価格帯を度外視しても、どこか安っぽさは否めない。これならスタンスミスを2シーズン履いても、同じコストパフォーマンスになわけだが、お特感は全然違う。靴の企画には専門性が必要と言われるし、メジャーブランドが市場を制圧しているだけに、グローバルSPAでは切り崩しは容易ではないように感じる。



 因に筆者は、白のスニーカーは大好きで、昔から愛用している。大学生の頃、トップサイザーのデッキシューズをバイトして買ったのがブランドに触れるきっかけとなった。以来、イタリアブランドからリネン製のコンバースまでいろいろ履いた。汗かきで脂足という体質でもあり、夏場は特に欠かせないアイテムになっている。

 夏に履く白のスニーカーは体質上、キャンバス地になるため、どうしてもすぐに汚れてしまう。学生時代こそ、CMの真似事で、専用の洗剤とブラシを使って洗っていたが、最近はそれも面倒になり、2〜3足を用意してローテーションを組んで履いている。さすがに真夏はフェイクも本革も厳しいので、キャンバスやシンセチック(ファイバー素材)になるが、9月に入り涼しくなったので、レザーの出番となった。

 ザラのスニーカーを見ている時、スタッフが近づいてきて、「スニーカーに興味がありますか」と聞いてきた。そこで、「これは価格的に本革じゃなくて、フェイクですよね」と尋ねてみた。すると、スタッフは「スニーカーは本革を履く必要はありませんよ。足下はすごく汚れますから」との答え。確かにそれは一理ある。筆者も夏場に履く白のスニーカーでは体験して来た。

 ただ、そうした合理的な考え方と足下のお洒落は別ものだ。筆者は秋冬に履く白のレザースニーカーは汚れが目立って来ると、クリーナーを使って落としている。アッパーの部分は満員電車に乗って足を踏まれない限りはさほど汚れない。黒ずんで来るのはコバの部分でそこの汚れを落とせばいいだけだ。今履いているものはもう3年目になるが、目立った汚れは無く、ソールも減りもそれほどない。あと2〜3年はイケると思う。

 一方、白のTシャツも大好きで、年中着ている。こちらは一度着れば洗濯するから、耐用性を重視する。「United Athle」のブルータグ(7.1オンス/オープンエンドヤーン)は1枚700円程度だが、いくら洗濯してもどうにもならなかった。新品は大きめだが、洗濯すればちょうどいいフィット感になる。残念なことに廃番になり、手に入らなくなってしまった。

 次に着始めたのが10.2オンススーパーヘビーウエイトの白T。人によってゴワゴワで、ぶ厚過ぎると感じるかもしれない。でも、洗濯して襟ぐりが伸びることはなく、汗を吸っても肌にぺたっとくっ付かないので、筆者には好都合だ。見た目はレオンが取り上げているブランドの白Tと比べても遜色はないし、着てみると高いクオリティを実感できる。それでも価格は1枚1000円程度と格安。この夏も3枚ローテーションで着ていた。



 レオンが提唱する「『上下おソロ』はキマる」という企画にそったわけではないが、他に着るアイテムがないので白T、白スニともここ数年、初夏から秋口のジャケパンスタイルに活用している。ジャケパンはブランドのセットアップではないが、トーンや質感はおソロである。10.2オンスの白Tの下に4オンス程度のTシャツを着れば、福岡が肌寒くなる10月半ばくらいでもイケると思う。

 白のTシャツやスニーカーは、 ブランドや価格もさることながら、いかに上質でコストパフォーマンスが高いものを見つけて着こなすか。替えが必要になるから、2〜3点は持っていた方が良いからだ。これが筆者なりの見解であるが、50代以上のオヤジ世代がお洒落になりたいなら、ぜひともお試しいただければと思う。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 記号化は不滅か。 | トップ | 事業シフトへの試金石。 »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事