HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

継ぎ接ぎがクルーに再登場?

2015-12-16 12:58:16 | Weblog
 12月の半ばを過ぎ、アパレル各社では2016年春夏企画の営業が佳境を迎えている。

 特にレディスは、この秋の流れを引き継ぎ、やや太め、ストンとした落ち感のあるラインが目立つ。

 また年が明けると、日差しが日に日に明るくなるので、企画サイドとしては気分を高揚させて、服を買ってもらおうという意図から、柔らかく光沢のある素材に目が向く。

 素材は定番の綿や麻よりも、レーヨンやポリエステルの方がしわにならず、シルエットをスッキリ見せてくれるから、立ち上がりは採用しがちだ。

 ただ、毎年、春先の気温は低温傾向が続くので、アイテム自体は羽織ものやコート類の方がニーズは高いだろうからと、企画に盛り込んでいるメーカーが少なくない。

 SPAは1月末からライトな単品にコロッと変わってしまうけど、重衣料も押さえておかないと、数字が取れるアイテムはそうそうないのである。

 個人的には、レディスにはブライトカラーの春レザーを数年前から提案しているが、「価格が割高になる」「販売期間が短い」「お客は冬物の代用で十分だろう」などから、中々採用されないでいる。

 まあ、レザー単品というより、インナーやボトムと組み合わせたMD全体がカギになることは理解している。だからと言って、インナーやボトムにそれほどトレンド変化があるかと言えば、それもありそうもない。

 とすれば、立ち上がりはシルエットを変えたアウターで勝負しようってことになる。レディスでいうところのスプリングコートか、コーディガンか。

 数年前から、冬のコートが余分な装飾を削ぎ落としたシンプルなデザインに回帰。ヤング向けはコクーンやチェスターなど、シルエットに主張を持たせてカジュアルなアイテムと上手に組み合わせて着こなすスタイルが定着している。

 その流れは来春にも引き継がれている。だから、コートの裾からのぞくボトムにも何か主張があるアイテムはないだろうかと思った矢先、あるメーカーから何種類かに染めを変えたデニムをパッチーワークしたジーンズが発表された。

 パッチワークジーンズはジーンズという名称さえ定着していなかった昭和47~48年頃、原宿を中心に大流行した。だから、我々世代には「継ぎ接ぎのGパン」と言った方が馴染みがある。

 裾幅30cmくらいの「ベルボトム」が主流で、英国から上陸した踵高10cm以上のプラットフォームシューズ、いわゆるロンドンブーツを合わせるのがお決まりのコーディネートだった。

 最初にミュージシャンが一斉に穿きこなし、次いで芸能人の多くが飛びついた。

 ベルボトムジーンズは、もともとカウボーイのブーツカット仕様がタウンウエアにも採用されたり、裾が広がったフェミニンなパンタロンの影響を受けて流行したようだ。

 だが、今ほど体格に恵まれなかった若者にとっては、身体に貼り付くようなタイトなシルエットで、膝下からは極端に広がるフレアライン、さらに博多で言うところの「地面をぞろひく」長さが奇妙ながら、実にカッコ良かったのである。

 少なくとも身長が男子で170cm、女子で150cmに満たないものにとっては、ロンドブーツとの組み合わせは、脚を長く見せるための救世主となったのは間違いないだろう。

 「膝下が異状に長い」とか「短足の証拠だ」とか揶揄されたが、業界的には中古のジーンズを寄せ集めて作り、新品より高い値段で売れたのも事実である。だから、今でいう付加価値アイテムとして先鞭を付けた商品ではなかったかと思う。

 筆者は当時、中学生だったが、好きなミュージシャンが穿いていたのを真似したくて、お袋に無理を言って、手持ちのジーンズ2本をテレコにして縫い合わせてもらった記憶がある。

 その後、スリムなシルエットも売り出され、パッチワークの前裾を割って、ブーツを出す穿き方も流行した。でも、50年代に入ると、原宿ファッションがデザイナー系に移ったため、貧乏くささから完全に消滅した。

 ジーンズ業界では、プロモーション用や染め見本など非売品としてパッチワークを作ってはいたのだろうが、市販では今回久々にお目にかかり懐かしくも新鮮に感じた。

 発表された ステュディオ・ダ・ルチザンの商品は、4種類のデニムをブロック状にカットして、パッチワークに縫い合わせたもの。シルエットはストレートで、トレンドの細身ではない。

 他にハーフパンツもあるということだから、こちらはサーファーが良く穿いているシアサッカー・パチワークのデニム版と言えそうだ。

 デザイン面を比較するとどうだろうか。70年代のジーンズはあえて接ぎ1枚1枚の大きさを変えたクレイジーパターンだった。そのため、ジーパン屋のおじさんの感性で生み出された1点ものに他ならない。

 それに対し、今回は当時とは時代も生産背景も大きく変わったので、同サイズのブロックデニムが採用され、色のみが染めや加工で4種に分かれるというもの。ある程度の量産を前提とするから、あまりに非効率にならないように計算された上での企画だと思う。

 筆者はジーンズ業界のことはあまり詳しくないので、これ以上の解説は専門家である南充浩さんに譲るとして、はたしてパッチワークジーンズを穿いて、街中を闊歩する若者は増えるのだろうか。

 まあ、ジーンズはユニクロなどのSPAが進出して、専業メーカーはマーケットシェアでも価格競争でも厳しい状況に置かれている。

 ただ、SPA側にしても、細身のシルエット、ストレッチ素材、加工以外のトレンドを打ち出せずにいる。今回のようなパッチワークを大量生産のラインに乗せようとすれば、複雑な仕様から生産効率が下がってコストが跳ね上がる。

 それ以上に、トレンドにならなかった時のリスクから、どうしても突飛な企画や派手なデザインには二の足を踏む。だから、こうした手間がかかり、マニア受けしそうなデザインは中小専業メーカーの企画力の見せ所でもあるだろう。

 これがトレンドになると、一気にSPAも生産し出すだろうが。

 ジーズンが値段の差だけでどこも変わり映えしない中、 スタイリングや着こなしを考える上では、価格の高さは抜きにしても面白いデザインではないかと思う。

 どうしても、春ものの着こなしはトップスやアウターがスッキリしてしまうと、主張がなくなってボケてくる。その点では、ボトムがパッチワークになると、スニーカーとの組み合わでも相性よく、意外にイケるかもしれない。

 レディスを担当してきた身とすれば、スカートなんかもでもモザイク柄のように見えていい線いくのではないかと思う。

 特殊加工なんかを施して、洗うたびに色落ちの違うパッチワークも面白いのではないだろうか。加工にこだわるシャネルなんかが発表しそうな感じだ。

 ともあれ、春物のボトムが気になるところだ。
コメント
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