HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

負の話題しか印象にない。

2015-12-13 14:28:20 | Weblog
 The FLAGイシュー、今回は2015年上半期(1月~6月)で驚きの多かったニュースについて、振り返ってみたい。

 何といっても、衝撃的だったというか、そうならざるを得なかったのだろうと思ったのは、5月に発表された「ワールド 過去最大の構造改革」である。
 
 ニュースの見出しとしては、前向きな印象も受けるが、平たく言えば莫大な数のブランドリストラと閉店を意味する。

 具体的には今期末(2016年3月)を目処に、不採算だった10~15のブランドを廃止し、400~500店舗をクローズするというもの。1社規模でこのようなリストラをこれまでに見た記憶がないので、その大ナタ振りがうかがい知れる。

 ワールドはイトキンと双璧をなす「専門店系アパレル」の筆頭格だった。ところが、成長の原動力だった展示会卸営業による受注生産、売れ筋フォロー生産が通用したのは、バブル期までだったと思う。

 景気低迷で卸先専門店が売上げ不振に陥り、売掛金の回収にも事欠く有り様。そこで独自企画による製造小売り、いわゆるSPAにシフトし、百貨店やSCへの直営店展開をメーン販路とし、店頭起点によるQRなど情報整備にも注力した。

 ところが、そうしたビジネスモデルも、大企業ゆえの効率優先、売れ筋追求、安易なODM企画などが仇となってブランド乱立によるカニバリゼーションを引き起こす。さらにデフレ禍は、完全に消費者のファッションに対する価値観まで変えた。

 かつてのように高額な投資をする客層は少なくなり、一部のセレクトSPAやSC業態を除き、中途半端なブランド、原価率を圧縮しただけの商品企画は、目の肥えた消費者には見透かされてしまった。

 行きつく先が低価格ブランドやファストファッションにまで、自社のマーケットが食われるようになったのだ。

 ただ、構造改革におけるブランド廃止や閉店は、マイナス面の処理やコストカットに過ぎない。

 百貨店向けのニューミセスブランド「リフレクト」や、リブランディングが奏功した「インデックス」が売上げ好調だから注力する、EC専用のブランドを立ち上げるといっても、これまでの経緯を考えると、かつてのような「すごいお店」や「感動する商品」はイメージしづらい。

 基本的にSPA路線は引き継いでいくのだから、全体的にヒットブランドが生まれにくいマーケット環境おいて、どこまでプラス成長に転換できるのかは疑問に思う。

 それでなくても、消費者の高級ブランドへの関心の薄れ、マーケット自体の縮小均衡と低価格化は深刻だ。既存の好調業態という持ち駒が少ない中で、V字回復への道筋は決して容易ではないと感じる。

 2つめの注目ニュースは、「ノームコアの波及」である。ノームコアそのものは、昨年、究極に普通のファッション?として流行した。

 今年は春夏からヤングメンズで、「大人っぽいスタイリング」として登場している。

 だが、もともとメンズ自体にそれほどアイテムがなく、デザインのバリエーションも限られている。ご多分に漏れず、ヤングのトレンドファッション離れも進んでいるようで、購入するアイテムは着回しが利くアイテムに偏りがちみたいだ。

 売って行きたい側としては、少しでも数字を伸ばす上では、誰もが着こなせるプレーンなアイテムにならざるを得ないということだろう。

 ただ、トラッドテイストまで行ってしまうと、シーズントレンドが打ち出せない。だから、「究極」「普通」のノーマル、コアというニュアンスで、気分くらいは今年風のトレンド色を打ち出したかったのではないか。

 ヤングも買い物には学習効果が働き、消費者としてもどんどん賢くなっている。それはそれでいいのだけど、1点豪華主義とは言えないまでも、着回しが利くアウターなんかは少し上質なものを選んでほしいと思っていた。その辺の仕掛けが今年の春夏には、打ち出されたということなのだろう。

 個人的には、プレーンなアイテムによる着こなしの方がセンスが問われると思うし、ノームコアをファッションとして際立たせるように感じる。

 どちらにしても業界用語というか、言葉だけは「コツン」くらいのヒットになったのかもしれない。でも、メーカーやブランドの大半が商品企画の面で「ノームコアらしさ」を打ち出したかと言えば、それほどでもなかったという印象である。
 
 もう一つが「トップショップの国内5店舗閉店」だ。

 グローバルブランド、ファストファッションと、デフレの中で騒がれたのもつかの間、多店舗化できずに一等地へのイニシャルコストが早期回収できず、ペイしなかったのが最大の要因だと思う。

 低価格を実現するための超ローコストなもの作りは理解できるが、それを超えるだけのブランド力やデザイン性がなければ、外資と言えども日本市場では競争力を持てないのを露呈したということだ。

 ラフォーレ原宿で最初に見た時、事前にプレスリリースに書かれていた「デザイナーとのコラボを仕掛ける」「モードの匂いのある旬の商品」というセールスポイントには、首を傾げざるを得なかった。

 レディスはともかく、メンズの「トップマン」はロンドンのストリートテイストと言われれば、そうかなという程度だった。

 ファストファッションだから、「リーズナブルで買える」のは確かだが、それほど高いデザイン性はなく、逆に素材のクオリティがかなり低く、「モードの匂い」からコレクションのランウエイを想像すると、全く期待はずれだった。

 モード=練りに練ったクリエーション、素材からデザインまで凝りに凝って作り上げているとのイメージをもつお客からすれば、正直、デビュー時から肩すかし、期待はずれに映ったのではないだろうか。

 いきなりの閉店発表は、デベロッパーにとっては、寝耳に水だったのかもしれない。でも、同時期に撤退した韓国のMIXXOを含め、何でもかんでも目新しいグローバルブランドを持ってきただけでは、日本市場では通用しないということ。

 その辺の難しさが教訓となったニュースではなかったかと思う。

 以上、今年上半期で、印象に残ったものを挙げてみた。だが、あまりポジティブな話題はなかった。来年は少しでもテンションが上がって、服を買いたくなるように、一縷の望みを持ちたい。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする