富山きのこクラブ

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北陸三県きのこ会交流会

2008年07月06日 | きのこ

とても楽しい2日間だった。糟谷さんの講演メモそのたを残しておく。不明な部分や曖昧な点は追々修正する事とする。

ハナサナギタケ[ Paecilomyces tenuipes ]Dscn0229
Dscn0232初めて見た冬虫夏草。発生している環境も把握できた。

コムラサキシメジ[ Lepista sordida ]
Dscn0230 初見参。

ヒカゲシビレタケ[ Psilocybe argentipes  ]
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何度かお目にかかったことのあるきのこ。瞬く間に姿が見えなくなった。速やかに処分された様子。

ベニタケ属の一種
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FeSO4溶液でピンク色に変わった。ベニタケ属の同定には重要な呈色反応とのこと。

顕微鏡が置かれて、1つのコーナーになっている。
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糟谷さんの講演会
Dscn0244 氏の研究テーマは、分類学・系統学の分野では腹菌類、乾燥地(チュニジア)におけるきのこの多様性。生態学の分野では、砂浜海岸のきのこ、ザラミノシメジ属菌の生存戦略。

①Crinipellis
  ニセホウライタケ[Crinipellis stipitaria (Fr.) Pat.]とカヤネタケについて

②スナジホウライタケ[ Marasniellus mesosporus ]
  「カヤネダケ(川村)」、ハマニンニクに対する病原性の検証。

③スナジコザラミノシメジ[Melanoleuca nasilis ]
Dscn0245石川県/羽咋市で採取(食)。 菌子束にシスチジアあり。シスチジアの生態学的機能は良く判っていない。微細構造。ブラーの観察。シスチジアに土壌中のヒメミミズ類に対する致死効果がある。先端の微小物質を収集し(トビムシの)幼虫をおくともだえ苦しむ。

スナジガマノホタケ[Typhula mantima T. Hoshino ]
スナハマガマノホタケ
[Typhula maritima T. Hoshino, Takehashi & Kasuya]
(2008.7.17 糟谷さんのご指摘により修正)
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Dscn0247 汀線(波打ち際のことだそうだ)に近いハマニンニク群内に20~40mmの子実体ならびにΦ5mmの菌核を作る。雪の降る所にしか発生しない。菌核が波に漂って浜辺に打ち上げられ、発芽すると思われ…そうするとこのキノコは海流分散している可能性がある。

⑥ウスイロドングリタケ[ Disciseda candida ]
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⑦シロクモノコダケ[Arachniom album ]
Dscn0249 近畿地方でしか見つかっていない。

⑧アバタケシボウズタケ[Tulostoma adnaerens Lloyd ⇒?]
[Tulostoma adhaerens]
(2008.7.17 糟谷さんのご指摘により修正)
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菌子束がマット状に広がる

⑨ヒヨリヒメツチグリ[ Geastrum kotlabae ]
  外皮に著しい吸湿性を有し、柄を欠き、内皮にひだ状の孔縁盤を有するという肉眼的特徴がある。富山市八重津浜での採取記録あり。この仲間は孔縁盤が同定の一つのポイント。

⑩アカダマスッポンタケ[Phallus hadriani Vent. ]
Dscn0251 北海道にしか確認されていない。「新潟のきのこ」に記載があるが、サンプルが無い。

⑪コナガエノアカカゴタケ
  ツマミタケ属Lysurusへ行ったほうが良い

⑫アカダマノオオタイマツ[ Phallus rubicundus ]
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⑬スナヤマチャワンタケ
子実体のフェノロジー(⇒意味不明)
フェノロジーというのは,生物季節と訳します.きのこの場合,子実体がいつ,どのような条件で発生するか,ということを調べることです.
(2008.7.17 糟谷さんのコメント追記)


最後は駆け足だったが、糟谷さんの研究内容についての講演は大変興味深い内容 だった。自分の記録が不十分なのが惜しまれる。

クロホコリタケ
[ Lycoperdon nigrescens Wahlenb.:Pers.: ]Dscn0264 ホコリタケの形態的な特徴は、3種類のトゲが有る事。1つは表皮上面の大きな円錐状のトゲで一番目立つ。2つ目は大きなトゲの周りに生えている小さな円錐状のトゲ。3つ目は外皮の下方に有るつぶれたような疣。クロホコリタケは幼菌の頃からトゲが黒いこと、胞子がより粗面であることからホコリタケと区別するそうだ。


北陸三県きのこ会交流会

2008年07月06日 | きのこ

富山きのこクラブの皆様

7月5日(土)
 南や北の方では記録的な大雨になったそうで、天候が心配されましたが…一転して猛暑日!金沢市のキゴ山・医王山で北陸三県のきのこ会交流会がありました。

9:30~ 受付開始
 開通した東海北陸道JCを横目に金沢市/キゴ山自然学習館に到着すると、既に40数名の老若男女が集まっておりました。そんな訳で、9:35 には石川きのこの会の池田会長のご挨拶があり、交流会が始まりました。
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10:00~12:00 きのこ採取
 富山組と福井組…2つのコースに分かれて採取の開始ですが…既に気温は30℃を超えていたのではないでしょうか?そろそろ夏のきのこにお目にかかれるかと思っていたのですが…全く見つかりませんでした。
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12:00~ 同定会
 採取されたきのこの同定会に先立ち、池田先生からレクチャーがありました。先生が作成された検索表を基に、ひだのあるきのこを中心に(イグチの仲間は採取されませんでしたので…)検索の仕方を教わりました。この検索表はとても判り易いです!(しっかりと…500円でした。)
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筑波大の糟谷氏…HPきのこのねどこ(きのこのねどこ)作者です。ホコリタケの仲間や海岸のきのこの第一人者だそうで、日本の菌学界の期待の星だそうです。
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 石川県立農大/田中准教授からササに発生するバッカクキン類の説明を頂きました。共生しているのか、寄生しているのか…まだ良く判ってはいないそうです。それにしてもナイスガイ!
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14:30~ 講演会
 筑波大大学院生命環境科学研究科 植物寄生菌研究室/糟谷氏から「砂浜海岸のきのこ」の題目で講演していただきました。
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講演内容は大きく3点でした。
1、砂浜とはどのような環境か
 ⇒外からの刺激に敏感な環境で、台風・波、漂着物、動物死骸等有機物による自然的撹乱、そして護岸工事や車の乗り入れなどの人為的撹乱に大きな影響を受ける環境。
2、砂浜のきのこの多様性、分布と形態
①ニセホウライタケとカヤネタケ
②スナジホウライタケ
③ザラミノシメジ属
スナジガマノホタケスナハマガマノホタケ(糟谷さんのご指摘により修正)
の研究内容と代表的な砂浜海岸のきのこ(10種類)の解説をしていただきました。
3、きのこ視点から見た日本の砂浜
 ⇒砂浜が外部撹乱に敏感なので、砂浜のきのこも大きな影響を受ける。2007年度の菌類レッドリストに絶滅危惧種Ⅰ類にアカダマスッポンタケ、Ⅱ類にコナガエノアカカゴタケ・アカダマノオオタイマツが掲載、情報不足にケシボウズタケ・ナガエノホコリタケ・アラナミケシボウズタケ・ウネミケシボウズタケ・ハマベダンゴタケが掲載された。
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存在を脅かす、菌類レベルでの要因として
①特殊な環境・宿主に依存し、その環境が減少。
②分布が限定され、その環境が悪化している。
③乱獲
「アサイさんがケシボウズを採り過ぎている ^^;」

 糟谷さんのような、第一線で活躍されている研究者のお話を聞くことができる機会は少ないので、非常に面白かったです。

18:00~ 懇親会
 湯涌温泉の奥座敷「銭がめ」に場所を移し、昼間の汗を檜風呂で流してから、懇親会が始まりました。宿主からは岩魚の骨酒の差し入れもあり、大変に盛り上がりました。
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20:00~ 夜の勉強会
 橋屋さんからはオオヒラタケ等、池田先生からはアカダマノスッポンタケアカダマキヌガサタケのお話があったような気がします…この辺りから私の記憶とメモは途切れ始めています。
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勉強会終了後も、あれやこれやときのこ談義に花が咲いていました…明日に続く。

7月6日(日)
今日も良い天気。優しいお湯の温泉で朝風呂を浴びて…すっきりと(少し二日酔い?)二日目に突入です。

8:30~ きのこ採取
2日目は「医王の里」に場所を変えて、採取を行いました。
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10:30~ 同定および顕微鏡観察
 糟谷さんが現役の星ならば、こちらは石川きのこの会の期待の星です。
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11:30~ 池田先生の同定講座
 昨日に引き続き、池田先生から講義がありました。きのこの同定で重要な胞子紋のとり方の説明と、検索表に沿ってのきのこの検索の方法を教わりました。
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13:00 解散
 池田先生のご挨拶があり、今年の3県交流会も無事、終了しました。楽しい時間はアッと言う間に過ぎて行ってしまいますね。
福井きのこの会の笠原会長からお知らせ。
 「福井きのこの会は今年で20周年を迎えます。つきましては、11月1・2日(土・日)に福井駅前できのこ展を開催しますので、是非、足をお運びください。」とのことでした。
富山きのこの会の栗林さんからのお知らせ。
「来年の3県交流会は2009年9月26・27日、白山の裏側・白川村の大白川国有林での観察を予定しています。」

それでは皆様、またお会いいたしましょう。

14:00~ 砂浜海岸きのこの観察
 交流会終了後、有志で内灘海岸へ砂浜海岸きのこの観察に出かけました。とうとう雨が降り出しましたが、約10名のメンバーが糟谷さんと共にきのこ探しを行いました。
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 植栽されたオオハマガヤが繁茂しており、スナジクズタケが発生していても良さそうな環境だそうですが…全く姿が見えませんでした。

糟谷氏はオオハマガヤを採取し、研究に使用するそうです。Dscn0274これが!最先端の砂浜きのこ研究者の研究スタイルです。(やはり…サンダル履きで!)

この頃思うこと
「ふしぎな生きものカビ・きのこ-菌学入門」の英語題は、"The Mysterious World of Mushrooms, Molds and Mycologists"で…素直に訳すと「キノコ・カビそして菌学者の奇妙な世界」。この本に触発されたのか?菌の世界に嵌まり込んでいる人は、とても面白い人がたくさんおられるようで…観察対象がこちらのほうへシフトするのではないかと…。

_/_/_/_/_/ 遅筆でゴメンm(_ _)m伊藤春雄_/_/_/_/_/