深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

筋反射テスト考 その13

2020-12-02 21:21:33 | 一治療家の視点

このブログにこれまで何度も書いてきたことだが、キネシオロジーの筋反射テストとは、ある問題(=問い)に対して、この世界における絶対的な正解を導くものではなく、術者の世界観に沿った比較的妥当な解を導くためのツールである。

ほとんどの人は、その人の世界観が世界の本質を正しく反映していると錯覚しているから、「自分の世界観に沿った妥当な解」が、まるで「この世界における絶対的な正解」のように見えてしまうが、そうではないことは、例えば先の大統領選で敗北しながらそれを認めようとせず、「選挙に不正があった」と主張し続けるドナルド・トランプを見ていれば明らかだろう。

唯一絶対神をいただき「その神の示す答えが正解だ」と信じられる一神教教徒ならば違うのかもしれないが、私は唯一絶対神など信じていないし、そもそもこの世界は複雑で、正解のある問題などまずないと思っているので、筋反射テストにも「この世界における絶対的な正解」などは期待していない。

では、筋反射テストを使うことの意味というか、それによるアドバンテージは何か?といえば、それは術者が縦横に世界観を切り替えながら「その世界観に沿った妥当な解」を積み重ねることで、1つだけの世界観によるものより確実性の高い解に到達できるということである。

例えば、解剖・生理を基本とする西洋医学的な身体観と、陰陽五行説に基づき気や経絡といったものを重視する東洋医学(中医学)的な身体観。1人の患者に対してこの2つの身体観をスイッチすると、それだけで筋反射テストの結果が変わるのが簡単に確認できる。それは、物理的実体としての身体もその状態も絶対的なものではなく、それを見る観点によって(また、もちろん術者自身の西洋医学、東洋医学に対する知識の広さや深さによっても)相対的に変化することを表している。

同じことは西洋医学と東洋医学だけでなく、体系化された2つの施術メソッドの間にも言える(できれば、それはカイロプラクティックと経絡治療のようなかけ離れたものの間で調べた方が反応の差は分かりやすいだろう)。

それ以外にも世界観を変える仕方としては、例えば位相を切り替えてみるというのも使える手だ。詳しくは「人体に位相を導入する」の中で書いたが、位相を変えるとは空間構造の定義そもののを変えてしまうことなので、位相を変えることでそれまで検出できなかった問題が検出できるようになる。それは人体の解剖・生理に関する術者の知識の広さや深さと全く無関係ではないものの、それとはまた別のものである。

あるいは、自分以外の別のものの目を通して見る、という方法もある。それは例えば「○○先生なら、こんな時どうするだろう?」というところから、その○○先生を自分の中に擬似的に呼び出し、その「疑似○○先生」の視点から患者を診るというもので、私は空蝉(うつせみ)と呼んでいる。この空蝉を使うと自分では気づけなかった問題やその解決法を得ることができるので、個人的にとても重宝している(もちろんこの場合、その○○先生は単に名前だけ知っている人ではなく、実際に見知っている人の方がいいことは言うまでもない)。

更にこれの応用として、「キネシオロジーの『風景』」に述べた環世界をヒントに、人間ではなく別の動物を使った空蝉も考えられる。例えば犬。嗅覚が人の数十倍から1億倍と言われる犬の環世界は人のそれとは全くちがっているはずで、当然、人として筋反射テストをした場合と犬として行った場合では、その結果も自ずから異なるものになることが分かる(ただし、テスト結果の確実性を増やすためには、やはりその動物のことを詳しく知っておく必要はあるだろう)。

またそれらとは違う世界観の切り替え方として、我々は暗黙の了解として身体を空間的な存在として捉えているが、それを時間的な存在として捉えるやり方もある。これについては「ボディマインドを時間的に捉える」にも書いたが、そこで述べた時遡行(ときそこう)はまるで冗談のような方法ながら、今この瞬間の身体では検出できない問題を過去に遡って検出することができる。

そんなふうに、筋反射テストは術者が世界観を切り替えるごとに、その世界観に沿った妥当な解を示してくれる。そしてそこにこそ、このテストを用いる本当のアドバンテージがあるのだと私は思う。


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