深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

形態形成場についての考察 2

2013-05-05 22:51:37 | 一治療家の視点

今回も映画『GANTZ』のテーマ「Ressurection in the Gantz Field」とともに、松原次良(じろう)先生からfacebookのメッセージで届いた、謎のような課題に対する回答を書く。内容は前回の「形態形成場についての考察1」の純粋な続きなので、未読の方はそちらを先に。


今回は形態形成場と手技療法との関わりについて切り込んでいく。ただし、形態形成場自体がまだ仮説であり、だから以下の論は仮説に仮説を重ねるものであることにも、ご注意いただきたい。そう、全ては仮説である。


オステオパシーの基本となる考え方に「構造が機能を決定する」というものがあると、まだ松原治療室でインターンをしていた時、松原先生から直に聞いたことがある。

オステオパシーに限らず、こうした考え方を取る手技療法、あるいは手技療法家は多いようだ──いろいろネット検索などをしていると、患者から症状の原因を聞かれると、判で押したように「背骨が歪んでるから」「骨盤が歪んでるから」「姿勢が悪いから」と答える人が、かなりの数いるらしいことがわかる。

そして、そういう治療家が患者に対して使う代表的な方法は、マッサージあるいはマッサージ的な揉みほぐし、そして直接的な矯正(アジャストメント)などである。

しかし、多くの治療家が経験的に知っていることだが、マッサージや矯正は仮にそれで症状が改善したように見えても、多くの場合それは一時的なものに過ぎなかったりする。

それはつまり、構造的な問題だからといって構造への直接的なアプローチだけをしていても、問題は解決しないということを意味している。

その理由は、形態形成場の存在を仮定すると非常に簡単に解くことができる。つまり、形態は場が決定しているのだから、形態だけを直接変えようとしても無理なのだ。もし症状(=機能の異常)の原因を歪み、変位などといった形態の異常に求めるなら、更にその先にある場(=形態形成場)までを視野に入れた形で治療しなければ、ただの無意味な行為の繰り返しでしかない。

では、そもそも場(field)とは何だろうか?

シェルドレイクの『生命のニューサイエンス』には次のような記述がある。

ニュートン力学では、すべての因果作用はエネルギーとしてとらえられた。エネルギーこそ、運動と変化の原理だったのである。現在は、そうした考え方とは異なり、重力と電磁力はによって説明されている。ニュートン力学では、力は物体から生じ(どのように生じるかは説明されなかった)、現代物理学では〈場〉が基本概念となっている。物体も、そのあいだにある空間も、ともに場を根底にもつとされているのだ。

そして重力場、電磁場、物質場について説明した後、彼は以下のように述べる。

これらの理論では、物理学的現象はエネルギーだけでなく、空間的な場の概念とエネルギーの概念とを組み合わせることによって説明される。したがって、エネルギーが変化をもたらす原因だと見なすことはできても、変化の順序を決めるのは場の空間的構造である。これらの構造は物理学的な作用は及ぼすが、それじたいはエネルギーではない──「幾何学的」あるいは空間的原因として働くだけだ。

ここから、場とは物質でもエネルギーでもない、それらを媒介する空間的構造である、ということがわかる。そして、その空間的構造が物質やエネルギーに大きな変化をもたらすのだ。

そうだとすると、治療(ワーク)というものを考える時、これまでのボディ・ワーク、エネルギー・ワークとは別の第3のワーク──フィールド・ワーク(注)──という切り口が必要になる。

例えば、人の持つ怒りや悲しみ、依存性衝動などが作り出す場(=思考場)にアプローチする、ロジャー・キャラハンの開発した思考場療法(Thought Field Therapy ; TFT)は、そうしたフィールド・ワークの1つの形だと言えるだろう。

また、バイオダイナミックなクラニオでは、心身システムは固有治療プランという、その人に最もふさわしい道筋で治癒に至るためのマスター・プランを用意している、と考えるが、その固有治療プランとはまさに形態形成場のことを指しているのではないだろうか。


本人に確認したわけではないので正しいかどうかわからないが、松原先生が最近、場に注目しているのは、もしかしたらそうした理由からかもしれない。

ちなみに松原先生が目をつけたものは、その時点ではマイナーだったり否定的に見られていても、その後、評価が一変するから、そういう意味では、これから治療の世界では場という概念が「来る」と考えていいだろう。

(注)通常のフィールド・ワークは、野外に出て調査を行う、という意味だが、ここでは全く違う意味で使っているので誤解なきよう(ま、誤解する人もいないとは思うが)。


ついでに、もう1つ。

数学の世界でfieldとは、代数学の重要なテーマの1つである体(たい)を意味する。体は、ある代数的構造、あるいはそうした構造を持った集合のことであり、例えば有理数や実数は体。

ところで体という漢字は「からだ」とも読む。つまり、場=field=体(たい)=体(からだ)という関係になる。これは果たして偶然だろうか?


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