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「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

治療ツールとしての数学 2

2011-09-12 18:27:15 | 症例から考える

今回はアニメ『ダンタリアンの書架』のOP、「Cras numquam scire」とともにどうぞ。前半はYuccaの歌うラテン語の歌詞、後半に小野大輔による日本語の訳詞の朗読がある。

さて1の続き。1では、
・数学の定理を治療ツールとして使うためには、使う側がこの定理の意味を理解していなければならないこと
しかし、
・『残酷な天使のテーゼ』の間奏部分で使われている「ファリア…」という言葉は、意味は分からなくてもただ書けば、治療ツールとして使えること
を述べた。

では、その差はどこにあるのか?


これはあくまで私の考えだが、それは
「ファリア…」のような祈りの文句が、その言葉あるいは音(おん)自体に意味を内包しているのに対して、上の定理はそうではないから
ではないだろうか。

1では『ガロア理論入門』に定理18として出ている

EがKの正規拡大体であるための(必要十分)条件は、EがK内のある分離多項式の分解体となっていることである。

を例に使ったが、この定理がその言葉自体に意味を内包しているのではないことは、次のように簡単に示すことができる。

定理の中に使われていているKやEという文字は、便宜的に体(たい)やその部分体に付けられた「仮の名」であって、KやEという文字/言葉を使うことに特に意味はない。だからここで、Kを太郎、Eを次郎に換えて全体を

次郎が太郎の正規拡大体であるための(必要十分)条件は、次郎が太郎内のある分離多項式の分解体となっていることである。

と書き換えても、この定理自体が表現していることは変わらない。つまり、定理はそれを述べる言葉自体が意味を内包しているわけではない、ということがわかる。

それに対して、例えば祝詞(のりと)などは、それを唱える際は一言一句間違えることが許されないと聞く。それはつまり、祝詞にはその言葉自体に意味が内包されているからだと考えられる(逆に言えば、唱える人はとにかく間違えさえしなければ、意味など分かっていなくてもよいのかもしれない)。

つまり定理の場合、それが表現していることの意味は定理の言葉を読むそれぞれの人の中にある。だから、その定理をツールして使えるためには、使う側がこの定理の意味を理解していなければならないのだ。


ところで、ここでは例として上に示した定理18を使ったが、別にこれだけが治療ツールになりうるわけではない。多くの定理やその証明(の一部)がツールとして使える(そのことは、ウチに来ている患者の何人かが既に体験している)。

美しい定理や優れた証明は、それ自体が最高レベルの芸術作品にも比肩することができるということを最近、数学書を読むようになって実感している。これまでも私はテクスチャー・セラピーと称して、国宝クラスの仏像や世界的な名画などの写真を治療ツールとして使ってきたが、高いレベルの数学もそれと同じくらいのパワーを持っているということだ。

今はパワーストーンを持ったりパワースポットを巡ることが流行りだが、ちゃんとした数学書が1冊あれば十分その代わりになるだろう(といっても、ただ持っているだけじゃなく読まなければ、その本の持つパワーを引き出すことはできないが)。

それでも、これは私の経験だが、本を全部読んで理解していなくても、とにかくパラパラでもいいから全体に目を通しておくと、上のように「ここで定理18を…」というのは無理でも、その本の丸ごと全体を治療ツールとして使うことができる(し、ケースによっては中身の個々の定理や証明ではなく、本を丸ごと使った方が効果があることもある)。


さて、例としてあげた上の定理はガロア理論に至るためのもので、代数学や体論(たいろん)を知らない人に「これを理解してツールとしてお使いください」というのは、あまりにもひどいので、誰にでもわかるものを1つご紹介しよう。それは

(-1)×(-1)=1

である。これもまた非常に強力なツールとして使うことのできるものだ。使い方は1に書いた通り。


ただし、これを十分なポテンシャルを持つツールとして使うためには条件がある。それは「これを証明した上で使ってください」ということだ。

そのためにはまず、これを証明するための前提となる公理系(つまり最初に定める約束事)を示しておく必要がある。それは次のものである。

任意の要素a,bに対して、その和a+bと積abとが定義され、以下の条件を満たす。
1.a+b=b+a(和の交換律)
2.(a+b)+c=a+(b+c)(和の結合律)
3.全てのaに対してa+0=aを満たすような0が存在する(0の存在)
4.任意のaに対してa+(-a)=0を満たすような-aが存在する(-aの存在)
5.ab=ba(積の交換律)
6.(ab)c=a(bc)(積の結合律)
7.a(b+c)=ab+ac(分配律)
8.全てのaに対してa1=aを満たす1が存在する(1の存在)
9.0でない任意のaに対してa(a^-1)=1を満たすa^-1が存在する(a^-1の存在)
10.1≠0(0以外の要素の存在)

これらが成り立つことを前提に(-1)×(-1)=1を証明するのだが、ノー・ヒントでは少し難しいかもしれないので、ヒントを。

以下の問題を順番に解いていけば証明できるはず。なお問1だけは、この記事の一番下に解答を載せておくので、ご参考までに。

問1.3を満たす0はただ1つであることを示せ。
問2.4を満たす-aは各aに対してただ1つであることを示せ。
問3.-(-a)=aを示せ。
問4.0a=0であることを示せ。
問5.(-1)a=-aであることを示せ。
問6.(-1)(-1)=1を示せ。























問1の解答:
3を満たすものがもう1つあるとして、それを0’とすると
0=0+0’=0’
よって0と0’は同一のものであり、0はただ1つ存在することが示された。
(以上、出典は『解析入門Ⅰ』)

 


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