深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

体に問いかける 2

2007-03-23 20:33:46 | 症例から考える

その患者はひどい咳と痰の症状があり、病院で“びまん性汎細(はんはり)気管支炎”と診断され、現在も通院治療を続けているが改善せず、ウチにも通ってきている。

ウチでは、外側からの働きかけとしては、横隔膜、心膜などの弱さをAK(アプライド・キネシオロジー)的に取る治療、主に肺の自動力を調整するための内臓マニピュレーション、肺経・脾経を中心に反応の出ているツボへの刺鍼(注1)を行うと同時に、内側からの働きかけとして、クラニオ(クラニオセイクラル・ワーク=頭蓋仙骨療法)と併用してフォーカシングを行っている。

その結果として、治療を始めた当初は(関節リウマチもあり、その薬も含めて)6種類だった薬を2種類に減らすことができたが、主訴そのものにはあまり変化はなく、最近、咳がひどくなったため、一時的にだが薬が1種類増えてしまった。

(注1)手の太陰肺経と足の太陰脾経は、同じ「太陰」という名を持つ同名経の関係にあるだけでなく、水液の運化を司る脾は「生痰の源」と呼ばれ、痰との関係が深い。そのためか、この患者は肺経よりむしろ脾経のツボに反応が出ていることが多い。

症状には明確な改善は見られないものの、フォーカシングした結果には著名な変化が見られる。この人はフォーカシングした部分の状態がヴィジュアルなイメージとして見えるようで、右下腹部にフォーカシングした時には、最初「赤っぽくて雲のように渦巻いた感じ」だったのが、治療後は「赤味が取れて、ポヤポヤと手招きしている感じ」に変わった。

さて、この人がフォーカシングした肺の様子は「風紋のようなザラザラした感じ」が、時間が経つにつれて「引き込まれるような不安定感」、次いで「揺れて不安定な感じに変わった」ところから始まった。

次の回の治療では、肺へのフォーカシングの結果(注2)は「月の表面のような荒涼とした感じの中に縦線が何本かあって、それが動いている」状態が、治療によって「動いている縦線は画面の端の方になり、中央には丸いものが重なったり動いたりしている」イメージに変わった。

(注2)肺でも、必ずしも同じ部分をフォーカシングしているわけではないので、単純には比較できないが、毎回一貫してこうしたものを感じているので、全体がほぼ同じような状態になっていると考えられる。

その次の回では、やはり「ザラッとした風景の中に縦線が何本か」というところから始まったため、試みに、以前の調子が良かった頃はどうだったのか、という問いかけをしてもらうと、見えているイメージがもっとサラッとしたものに変わり、風景全体も、それまで狭かったのが広々としたものになった、とのこと。やはり、体は過去の状態もきちんと記憶(記録?)して持っているのだ。

そこで更に、では今の状態と過去の良かった時の状態の差分を埋めるには何が必要なのか、と問いかけてもらった。すると、小さな粒が活発に動いているイメージが現れたが、それが何を意味しているのかはまだハッキリとはわからない。ただ、それはクラニオで言う固有治療プラン(=その人自身の体が持っている、治癒に至るための最もふさわしい道筋)の一部なのかもしれない。

その後、回を重ねるごとに、肺にフォーカシングした時に見えるイメージ(風景)は、荒涼とした感じが薄れ、少しずつ綺麗なものになってきているが、症状そのものには大きな変化がない。そこで、これも別の試みとして、今のペースで変化したとすると1カ月後にはどうなっているか、と問いかけてもらった。その結果、今より更に綺麗になった風景が見えた。このことは、体自身もその変化をある程度予測することができること、そして我々の進んでいる治療ルートが(最も正しいものかどうかはわからないが、少なくとも)間違っていないことを示している、と私は考えている。

それにしても、体というものは我々が一般的に想像しているより遙かに高い知性を持っている。そのことを、この人の治療を通じて改めて感じた。そして今、我々は体が示した1カ月後の姿に向けて治療を続けている。


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