深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

専門家は断言しないが半可通は断言する

2023-11-15 18:27:36 | 一治療家の視点

新型コロナのパンデミックに世の中が騒然としていた頃のこと。昼のある情報番組で新型コロナが今後どうなっていくかについて専門家に話を聞いた際、出演した専門家が「これはいろいろな条件によって変わっていくので、明確なことは言えない」と答えたのを、MCがちょっと皮肉を込めて「専門家なら『こうだ!』とズバッと答えてほしいですよね」と言いながら引き取ったのを見たことがあった。このMCに限らず、「専門家」と称する人に対するイメージは、「一般人では分からない問題に明確な答えが出せる人」というものだろう。

けれども、何かを学んでいけばいくほど、どんなことも「これはこう」と単純に割り切れるものでないことが分かってくる。かくして本物の専門家になればなるほど、言葉は慎重で歯切れの悪い曖昧なものになっていく。あるいは、そうならざるを得なくなる。逆に言えば、何かを断定的に語ることができるのは、専門家でも何でもなく、ただ無知なだけの人だ。

X(旧ツイッター)にこんな投稿がある。

専門家はなかなか断言しないが、半可通は断言する。そして素人は、断言しない専門家より断言する半可通を当てにしてしまう。それが何故かというと、素人が求めているのは実は「正しい知識」ではなく「安心」だからだ
(引用元URLは、https://twitter.com/raurublock/status/1130340382137446400)

昔、私はある成功セミナーに参加したことがあるが、そこで講師から言われたのは「とにかく言い切れ」ということだった。「『~だと思う』とか『~かもしれない』ではなく、『~だ』と言い切ることで相手に自分の強さを感じさせることができるんだから、根拠なんか何もなくても、とにかく言い切れ」と。

いつの時代も世の中は混沌としていて、人は不安で何か頼れるものを求めているから、何かを断定的に言い切ることは、そういう人たちに響くだろう。恐らく人が悪徳商法に引っかかったり陰謀論やカルト宗教にハマってしまう理由の1つは、「あなたにはこれが必要だ!」とか「世の真実はこれだ!」と(何の根拠もなくても)断言されると、不安を抱えた人がそこに、ある種の安心感を見い出すからだろう。

上のセミナーの話からも分かるように、実はそうした断定的な言い切りはほとんどの場合、強さを錯覚させて相手を操ることを意図した“まやかし”でしかない。それでも相手の不安につけ込むこのやり方は絶大な効果がある。が、その一方で副作用も強い。治療業界(あるいは医療業界)でも、「患者から『治りますか?』と聞かれたら根拠など何もなくても『治ります』と答える。患者はそういう答えを聞きたいのだから、そう答えるのがやさしさであり務めだ」という人がいるが、その結果として(一部で)起こっていることは以前「ダメ治療にハマらない方法」で述べた。

そもそもスピ系が大好きな量子論は、この世界は全て確率の形でしか表すことができないと述べている。量子論に照らしても、この世界に断定的に語り得ることなどない。だから我々はこの気持ちの悪い不確実性を受け入れるしかないのだ。

ちなみに私は、「治りますか?」と聞かれたら何の根拠もなく「治ります」と断言することが治療家のやさしさだとも務めだとも全く思わない。なので、「『治りますか?』と質問したら嘘でもいいから『治ります』と答えてほしい」という人はウチに来るべきではないし、来ないでほしい。そういう「やさしい嘘」を求める人が行くべきところは他にあるはずだから。

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