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主人公と一緒に成長できるアニメ『ブルーピリオド』

2021-12-14 20:44:00 | 趣味人的レビュー

主人公の矢口八虎(やとら)は、大抵のことは人並み以上に出来る高校2年生だ。髪を金髪に染め、高校生のくせに酒もタバコもやっていて、ダチとつるんで夜通し遊んでいても、成績は学年トップクラス。だから、そのまま普通にやっていれば大学もかなりいいところを狙えるはずの彼は、しかし何をやっても本気になれず、生きている実感がなかった。そんな時、たまたま美術室で見た1枚の絵に心を奪われ、触発されて、ほとんど絵など描いたことがなかったにもかかわらず美術部に入部してしまう(その時、彼を魅了したのは、3年生で美術部員の森まるの描いていた天使の絵だった)。そこで絵を描くことにのめり込んだ彼は、森先輩が美大を目指すのを見て、自分も本気で美大を受験することを考えるようになる。親からは経済上の理由で、大学は国公立で現役合格、という条件を言い渡されていた八虎が美大に行くとしたら、東京藝大一択となる。だがそこは時には倍率20倍にもなる、3浪4浪当たり前の、ある意味東大より難しい大学だった

 

アニメ『ブルーピリオド』は、自身が東京藝大の卒業生である山口つばさが実体験に基づいて描く同名のマンガのアニメ化作品である(制作はSeven Arcs)。原作は今も「月刊アフタヌーン」で連載中だが、2020年にマンガ大賞と講談社漫画賞(一般部門)を受賞したこともあり、今回のアニメもネットなどでは、2021年冬期の「覇権アニメ」候補との下馬評だった。私も、同じ「月刊アフタヌーン」で連載されていたマンガが原作のアニメ『波よ聞いてくれ』のような凄い作品になるのでは、という期待があった。

ところが、いざ蓋を開けてみたらあまりにもスカスカな感じに拍子抜けして、覇権アニメどころか「途中切りするほどヒドくもないから、取り敢えず流して見てる」アニメになってしまった。少なくとも3話くらいまでは完全にそうだった。だが回が進むにつれて、そんな「取り敢えず流して見てる」なんてことはできなくなってきて、今は何度も繰り返し見て内容を反芻してる。

ちなみに、本屋で『ブルピリ』の単行本第1巻が「自由にお読みください」になっていたので、それをパラパラと見たところ、アニメは単行本1巻当たり2話くらいで作っていて、アニメには出てこないシーンやセリフが結構ある。理由はそれだけではないが、今回のアニメは取り分け原作勢には評判が悪いようだ。

私は原作を読んでいないので原作と比較することは出来ないが、それでもアニメ『ブルピリ』を何度も繰り返し見るのは、八虎の成長物語がそれを見ている私にも多くの気づきを与えてくれるからだ。例えば、11話で藝大の2次試験に臨んだ彼が「自分の描く絵は自分が見ている世界の反映だ」と気づくシーンがある。「イヤイヤ、そんなの当たり前じゃん」と思われるかもしれないが、そういうことを知識として「知っている」ことと、実感として「腑に落ちる」あるいは「肚(はら)落ちする」こととは全く違う。そして『ブルピリ』は、八虎たち登場人物が何かに気づく=腑に落ちると、見ているこっちも同じように肚落ちする不思議なアニメなのだ。それは私だけなのか誰もがそうなのかは分からないけれど、私はこの『ブルピリ』を通して八虎(や彼の周囲の人たち)とともに、たくさんのことに気づき、成長できたように思う。

アニメは残るところあと1回。もちろん上にも書いたように連載は今も続いていて、八虎は無事、藝大に一発合格するのは分かっているが、作品制作を通して自己を見つめ続ける彼の気づきと成長を最後まで共有したいと思っている。


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