深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

勇者の章

2017-12-23 22:58:08 | 趣味人的レビュー

アニメ『結城友奈は勇者である(ゆゆゆ)』のことは本放送の前に本屋で立ち読みしたアニメ雑誌で知っていた。ただ、書かれていたのは確か「人の役に立ちたいと勇者部で活躍する女子中学生の話」みたいな内容だったと思う。で、「深夜アニメで女子中学生の部活動を見せられてもなー」と思ってしまった私は、最初から見ないことに決めた。
けれど今、放送中の『ゆゆゆ』の第2期「鷲尾須美の章」と「勇者の章」を見て、その判断は完全に間違えていたと言わざるをない。

まあ『まどマギ』の時もキャラの絵柄を見て「何だ、萌えブタ狙いのアニメか」とバカにして本放送は見ず、放送が終わった後にネットで評判を知ってあわてて見たくらいだから、私の判断も当てにはならないんだが。

「『まどマギ』以降、魔法少女ものは本当に作りにくくなった」と業界では言われているらしい。そこで出てきたのは『魔法少女育成計画(まほいく)』のような魔法少女同士の殺し合いみたいなエグイ路線だが、逆に『まどマギ』が打ち出した方向性を再構築しながら継承する路線もあって、その代表作と言えるのが『ゆゆゆ』ではないだろうか。

『ゆゆゆ』第2期は「鷲尾須美の章」と「勇者の章」の間に『ゆゆゆ』第1期の総集編(第1期の物語を30分に圧縮しているだけに、かなりムチャなもの)があって、私は『ゆゆゆ』第1期についてはニコ動でタダで見られる第1話とこの総集編しか知らないが、一応『ゆゆゆ』のストーリーを簡単に述べてみよう(ちなみに「鷲尾須美の章」は第1期の前日譚、「勇者の章」は後日譚に当たる)。

結城友奈は四国(の多分、讃岐国=香川県)にある讃州(さんしゅう)中学校の2年生。学校では勇者部に所属している。勇者部とは困っている人がいたら積極的に助けることをモットーとした部で、部員は友奈の他に3年生で部長の犬吠埼風(ふう)と、その妹で1年の樹(いつき)がいる。そこに友奈が、隣の家に越してきて讃州中学校に転入することになった2年の東郷美森を誘い、部員は4人になった(なお東郷は脚が悪く車椅子で生活しているが、それだけでなくここ2年間の記憶が完全に欠落している)。
幼稚園で劇をやるなどの活動をしていた勇者部だったが、ある日、突然異変が起こる。周囲の全てが時間が止まったように動かなくなる中で勇者部の部員だけが動けるのだ。あわてて教室を飛び出し、妹の元に駆け寄った風は樹に険しい表情で告げた。「よく聞いて樹、私たちが『当たり』だった!」。

物語の舞台となっている日本では、「神樹(しんじゅ)様」を祀る国家レベルの宗教団体、大赦(たいしゃ)が、ちょうど戦前の国家神道のように強大な力を持っている。大赦の目的は侵攻してくる敵、バーテックスから神樹様を守り、世界を破滅から救うこと。そのバーテックスと戦うことができる勇者は適性を持った少女に限られるため、大赦は勇者候補となる少女のグループを各地に作りバーテックスの出現に備えていたのだ。そして最終的に神樹様が勇者として選んだのが讃州中学勇者部の4人だった。

バーテックスが現れると「樹海化」という現象が起こり、元の世界は動きが止まり、勇者だけがバーテックスのいる樹海へと飛ばされる。4人は戸惑いながらも大赦から支給されたスマホで勇者に変身して戦い、何とか撃退に成功する。
その後、更に人員を強化するため、大赦は勇者として特別の訓練を積んできた三好夏凜(かりん)を讃州中学勇者部に送り込んでくる。当初は勇者部の活動に否定的で他のメンバと衝突することも多かった夏凜だが、次第に周囲に心を開くようになり協力関係を構築していく。風の話ではバーテックスは全部で12体存在し、それらを全て撃退することができれば世界は滅亡を回避し、勇者もお役御免になるとのことだった。そして勇者の最大の武器は貯め込んだ力を一気に解放する「満開」。バーテックスが大攻勢を仕掛ける中、少女たちは次々に満開しバーテックスを全滅させることに成功する。

だが元の世界に戻った少女たちの体には、全員ある異常が現れていた!

その原因を探る中、東郷は病院でなぜか彼女のことを「わっしー」と呼ぶ少女に出会う。体中を包帯で巻かれベッドから起き上がることもできないその少女、乃木園子もまたかつて勇者だった。そして園子は東郷に、大赦が隠し続けてきた勇者システムの秘密、そしてバーテックスとこの世界にまつわる真実を語り出す…。

この先はネタバレになるので書かないが、1つヒントを述べるなら「満開」して咲き誇った花はやがて散る「散華(さんげ)」を迎えることになる、ということだ。ただし勇者はバーテックスとの戦い以外では決して死ぬことはない、ということは書いておこう。

だからバーテックスを倒すまでは『ゆゆゆ』(もっと正確には「結城友奈の章」)という物語の前半に過ぎない。後半で少女たちの本当の戦いが始まるのだ

──が、その後日譚「勇者の章」では少女たちの心を打ち砕くような更なる真実が待っていた。

とにかく『ゆゆゆ』という物語を一言で言い表すなら「理不尽」という言葉が最もふさわしいだろう。『まどマギ』では登場人物たちは1つの願いと引き替えに自らの意思でキュウべえと契約することができた。けれど、ある日突然、勇者に選ばれ、否応なく戦いへと駆り立てられていく『ゆゆゆ』では、その選択権すら与えられていない。そういう意味で、『ゆゆゆ』は『まほいく』とはベクトルが全く異なるが、この上なくエグイ話だ。

と同時に、これはまた暗喩に満ちた物語でもある。上にも書いたが戦前の国家神道を思わせる宗教組織、世界を守るという大義の下に若者の命を使い捨てにする仕組み、そしてそのことに疑問を感じながらも黙々と従うだけの人々、更には「散華」という言葉──過去の日本をカリカチュアしたようなこの物語の中に、この国の未来の姿が二重写しになって見えてしまう気がするのはなぜだろう? 『ゆゆゆ』は何か予見的なものを感じる不気味な作品でもある。

それはともかく、勇者部がモットーとする「勇者部五箇条」

一.挨拶はきちんと
一.なるべく諦めない
一.よく寝て、よく食べる
一.悩んだら相談!
一.なせば大抵なんとかなる

は、そのほどよいユルさが感動的で、ゼヒ取り入れたいと思う所存。

最後に『結城友奈は勇者である―勇者の章ー』のPVを貼っておこう。


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