詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

日銀の目標?(読売新聞の記事の書き方/読み方)

2022-08-20 08:58:04 | 考える日記

 2022年08月20日の読売新聞(西部版・14版)一面に、「物価上昇」の記事。↓↓↓
 総務省が19日発表した7月の全国消費者物価指数(2020年=100)は、値動きの大きい生鮮食品を除く総合が102・2だった。前年同月と比べ2・4%上昇した。上昇は11か月連続で、日本銀行が物価目標とする2%を4か月連続で超えた。資源価格の上昇や円安で、エネルギーや食品を始め幅広い品目に影響が広がっている。
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 この記事に、「虚偽」はあるか。一見、ないように見える。
 だが、「日本銀行が物価目標とする2%を4か月連続で超えた」という書き方は、これでいいのか。たしかに日銀は物価上昇率を2%と設定していた。いつ設定したか、誰も思いだせないくらい前にである。そして、それは延々と実現されなかった。いまになって、突然、実現されている。その理由が、日銀の政策が成功したのなら、こういう書き方でいいだろうが、実際は、違う。
 読売新聞は、あいまいにごまかしている。「資源価格の上昇や円安で、エネルギーや食品を始め幅広い品目に影響が広がっている。」しかし、これが物価上昇の原因だ。ロシアのウクライナ侵攻で石油や天然ガスが高騰した。小麦などの原料も高騰した。そのあおりで、電気代、ガス代、食品が値上がりした。日銀がリードして、石油、天然ガス、食品を値上げに導いているのなら、読売新聞の書き方で問題がないだろうが、それは「事実」とは反する。
 「経過」あるいは「原因」を追及せず、「結果」だけを書いている。おそらく総務省のレクチャーに「日本銀行が物価目標とする2%を4か月連続で超えた」という表現があったのだろう。それをそのままつかっている。その表現が意味するものを吟味していない。これは単なる垂れ流し以上に、タチが悪い。いまの書き方では、総務省(政府)が「日本銀行が物価目標とする2%を4か月連続で超えた」と宣伝しているということがつたわりにくい。
 逆に見ていくといい。
 物価が2%上昇すると、家計はどうなるのか。赤字が2%増えるということである。日銀が目標としていたのは「物価の上昇」だけではないだろう。物価が上昇しても、それに対応できる「賃金の上昇」がなければ、意味がない。家計は苦しくなるだけだ。景気がよくなって、その反映として物価が上がっているのではなく、不景気なのに物価だけが上がっている、という「現実」にを無視している。

 読売新聞は、一方で、こんな記事を書いている。(08月17日)
↓↓↓
【ロンドン=池田晋一】英統計局が17日発表した7月の消費者物価指数の上昇率は前年同月比10・1%だった。1982年以来40年ぶりの高い水準で6月の9・4%から0・7ポイント拡大した。
 ロシアのウクライナ侵略に伴う光熱費の高騰や、食料品など幅広い値上がりが物価全体を押し上げた。イングランド銀行(中央銀行)は10~12月に消費者物価のインフレ(物価上昇)率は13%を超えるとみており、物価高は当面続く可能性が高い。
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 ここには、イングランド銀行の「物価上昇目標」は書かれていない。かわりに原因をはっきりと「ロシアのウクライナ侵略に伴う」と明記し、「物価高は当面続く可能性が高い」と予測している。
 イギリスで起きていることは、日本でも起きる。(すでに、世界で起きている。)
 最初の記事のつづきには
↓↓↓
 秋以降、食品を始め多くの値上げが見込まれている。民間調査機関の予測では、上昇率は年内に3%に達するとの見方が強まっている。
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と書いてある。
 「日銀の予測(目標)」は?
 前段で「日銀の目標」を書いたのなら、後段でも「日銀の目標」を書かないと意味がない。日銀の目標が「2%」だったのに、年内には「3%」になる。海外の物価の動きを見ると10%を超えるかもしれない。
 そうなったら、社会は、どうなる?

 そうなったらなったで、また、総務省がレクチャーしてくれる通りに書く? 国民をごまかす「表現」を教えてくれるから、気にしなくていい、いわれるままに書けばいい、ということか。

 物価の2%上昇の問題は、「日銀の目標」が達成されたかどうか、ではない。しかも、その「達成」が日銀主導の政策によるものでもないのだから、物価の抑制も日銀にはできなということを意味する。今後、どんどん物価があがることが予測される。どう対処するのか、それを先取りする形で追及しないといけないのに、知らん顔をしている。
 私は年金生活者。年金は、6月から減少した。物価は2%上昇し、さらに上昇すると予測されている。これは、私の生活はさらに苦しくなる、ということを意味している。「最低賃金」はアップするらしいが、それが年金にそのまま反映されるわけではない。逆に減っている。老人はかってに死んで行け、ということだろうか。それは「日銀の目標」だろうか。「読売新聞の目標」だろうか。

 

 


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