ひとひらの雲

つれづれなるままに書き留めた気まぐれ日記です

新しき年のはじめの初春の…

2014-02-12 19:27:59 | 日記
 ようやく春の日差しが感じられるようになりましたね。梅も咲き始めました。万物の息吹を感じ、希望に胸を膨らませる人も多いと思いますが、花粉症の人にはちょっと憂鬱な季節。
 花粉症であったかどうか、万葉人にも春の憂いを感じていた人がいました。

 うらうらに 照れる春日に 雲雀(ひばり)上がり 情(こころ)悲しも ひとりし思へば

 万葉集の編者といわれる大伴家持(おおとものやかもち)の歌です。春の空を見上げながら、何気ない悲しみに沈む心。家持は何を憂いていたのでしょうか。
 この人は歌ばかり作っていた人と思われがちですが、当時の貴族でもあり、地方勤務の多い官吏でもありました。お役人としての仕事もちゃんとしていたんですね。大伴氏の存続に腐心しながら何度か政争に巻き込まれ、左遷されることもありましたが、その度に復帰して中納言にまで昇っています。死後は藤原種継(ふじわらたねつぐ)暗殺事件の首謀者として官籍から除名されるという憂き目に遭いましたけれど、没後21年経った大同元年(桓武天皇崩御時)旧位(従三位)に復しています。結構波乱の人生だったんですね。

 春の日差しに映える梅の花

 そういえば先週、都心では45年ぶりの大雪が降りました。子供の頃は大喜びした積雪ですが、大人になると先のことが案じられて憂鬱になります。家のまわりの雪かきをしなければならないとか、外出が困難になるとか、停電するかもしれないとか、しばらく残る風の冷たさを思い、早くやんで欲しいと願わずにはいられません。もし降り積もるものが吉事であったら、もっともっと降って欲しいと思えるのでしょうけれど。

 新しき 年のはじめの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事(よごと)

 万葉集の最後に収められた家持の歌です。「吉事」というのは「めでたいこと」、「いやしけ」というのは「絶えることなく重なる」という意味だそうです。今日降る雪のように吉事が降り積もって欲しいといった感じでしょうか。正月の大雪は豊年の瑞兆とされていました。そして未来への祈りをこめたこの歌をもって万葉集は終わるのです。

 2月8日の大雪の前、立春にもちらほらと雪が舞いました。立春というのは旧暦でいうとお正月になります。近年随分気候が変わったようにいわれますけれど、雪の降る時期は千年以上前の万葉の昔も今もあまり変わりはないようですね。
 今年は大雪が降った分、よい事がたくさんあって欲しいものです。

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