眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

郷愁

2008-04-27 | 
会いたくて
 ただそれだけ
  郷愁の一歩手前の信号で立ち往生した
   意識が鮮明になり
    ガラス細工のワイングラスの中
     赤い魂が眠っているのだ
      僕らはあの日教会のミサで
       ワインを舐め
        そうしてやがて来るであろう再会を待ちわびた
         永遠にやって来ない約束の残渣

         神様
          どうか皆を憐れんで

          孤独な道化師の煙草の火が明るかった
         愛情を確証する為に
        何度も不快な安否を気使う伝言
       茜色の夕暮れ時に孤独を感じるのは
      哀しいほど惨めになるからだろうか?
     そうして泣くのだよ
    会いたい
   僕の玩具箱の全部をあげるから
  会いたい
 
 零したワインの赤で白いシャツが汚れた
警戒なワルツの舞踏会
 君は真摯なタキシードでマスカレードを気取った
  
   いいえ 私は 誰の物でも在りませぬ

    残されたワインを納屋で飲み比べた
     こっちの方さ
      仮面の君が自堕落な酔いどれの僕を誘う
       僕らは狐狩りの唄を歌った

        夢

        深海探査船の報告
         沈んだ船には宝物なんて無かったのだよ
          ただ
           一枚の手紙が残った

           青いインクが文字を描く
           
            会いたい

           どうして僕らはひとりぼっちなのだろう・
          群集のあきれ返るひといきれに溺れながら
         あなたの姿を何百年も捜している
        後姿のあなたの
       羽の折れた背中越しの微笑を望む
      何百光年も捜している
     たとえ記憶する言葉を忘れた瞬間でさえ
    意識が覚醒する酔いどれた深夜零時
   起床した郷愁に身を任せるのだ

 ぴー。

洗濯機のシグナルが時刻を教える
 先生、あの想いは何処に行くのですか?
  知らないのかい?
   全自動洗濯機が優雅に答える
    全部が終わるのに25分だ
     
     空いたいんです

      全体、誰に会いたいのだい?

       其れが解らないのです

        まずはこの洗濯物を太陽の下で干すように
         先生が教育的指導を丹念に施した

          太陽の下で消毒された意識

           会いたいと願う切り傷の痛み

            風景は鮮明で夏がやがて訪れるのだろう

             お願い
              許して

             神様
            どうか皆を憐れんで

           忘れないように

          会いたい

         苦しいよ




      
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サーカスの結末

2008-04-24 | 
サーカスの結末
 それはどんな物よりも
  儚く切ない
愛する人を失った如くに
  まるで

   青いピエロ
    年老いた道化の結末
   顔の分厚い化粧も落とさずに
    グラスのワインを二杯飲み干し
     そっと紙煙草にマッチを掏って
      上手そうに吸い込み
       深いため息をついた

テントが厳かに片付けられる
  もう旅の仕度をしなければ
   ここには居られなくなる

 ライオンや象に
  最後の食事が与えられた
   これが最後だとわかっているのだろうか?
 猿がその軽薄さで身軽に
  誰彼なく愛想を振りまく
 カメレオンがそれを見て
 冷静に体を沈黙という色に変えた

ワインをあおっている
 松明に明かりの下  
  車にもたれかかって
   皆 夢の続きを追う
「もう若くはないからね 
  今の人生で十分さ。」
  ピエロがまだ若いブランコ乗りに呟く

   カード使いが
  一枚のカードを手にした

  孤独

   もういつか
    魔法は
   消えてしまった

  だから
  吟遊詩人がリュートを奏で始め
  唄を唄う

   松明の明かりが消えて亡くなる頃には

    全て終わる


     すべて


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パニック

2008-04-22 | 
地下鉄を待つ間
 どうしてこんなに人が多いのか
  ため息をつく町の当たり前の風景
   連続した風景にため息をついた午後
    魚の影が懐かくって
     深呼吸をした

     オノ・ヨーコが「グレープフルーツ」で描いていた

      呼吸しなさい

       やらなくちゃいけないことが多すぎて
        パニックだ

        路地に潜り込んで
         路に迷う猫
          友人と待ち合わせをして二時間
           ベンチの隣に座っていたホームレスも
            何処かに消えてしまった
             僕は煙草に灯をつけ
              そうして月を眺めた
             繁華街に向かって
            綺麗に着飾った女性と男性が
           嬉しそうに笑いながら
          目の前を通り過ぎる
         僕は缶ビールを潰した
        まるで野良犬だ
       そういえば
      この街ではただの一匹の野良犬も見ない
     みんな何処に消えてしまったのだろう?

    疲れた夕方
   大切な人と話をした
  理由は聞くな
 ただ頑張れ と云ってもらったのだ

   まだ頑張れる

    パニックの中でさえ

     地団太の孤独


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少年

2008-04-13 | 
青い孤独が空を満たした瞬間
 蝉の声が止まない
  何度も夢を見て
   汗をかいて飛び起きた
    喉がひどく渇いた

    誰とも喋りたくないと少年が拒絶し
     運動場の真ん中に円を描き込む
      いったい誰に向かい
       電波を流すというのだろう
        とっくに夕焼けのおれんじ色だ

     僕ができる事といえば
      ハンバーガーとコーラを差し出すことくらい
       皮肉の嘲笑で観客達は
        彼のかばんを隠したのだ
         舌を出し
          皆が帰ったあと
           彼はかばんをさがさなくっちゃならない
            過酷な宝探しさ
             猫だけが一緒に探してくれたのだ

     いいかい?
      誰が犯人で誰が被害者なのか?
       どうしてお金持ちが夜食の献立に迷い
        少年がパンの切れ端で神を祝福するのだろう?
     それとも
      そんなことなんて当たり前すぎて
       誰もが無関心を装うのだろうか?
        まるでカメレオンの如く
         くるくるとその色を変えて

       やがて夜の帳が訪れる
        星たちは少年の味方だった
         月が微笑み
          柔らかな灯りを照らす
           少年は
            はっか煙草に灯を点け
             星を見上げて
              独り言を呟く

        図書館の本の匂い
        古びた水族館の
        水の中を通り抜ける魚の尾びれ
        噴水は広場の中心に在って
        そうして少年の時間は
        隠されたかばんの記憶を
        永遠に見つけ出すことができない


        言葉は嘘だ

        最後に少年が呟く

        てくてくと

        何も持たずに月夜を歩く

        少年





         


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口笛

2008-04-09 | 
それらが見落とした世界の狭間で
 少女が口笛を吹いた
  哀しい旋律が空気の海を流れ行く
   どうして
    どうして鐘の音はあんなにも切ない
     
    僕は病室のベットで点滴の間
      草原の夢を見る

     色褪せた写真の中の
      みんなが笑っている
       懐かしい手紙は
        酔いどれの忘却の果て
         あれから時が流れ
          全ての物は草原の
           少女の口笛の記憶
            羅列された封印
             入り口の鍵が無い
              出口も見えない夢の淵
               哀しき口笛が歌った「絵のない絵本」

     馬鹿なのよ、あなた

     少女が呆れ顔で葉っぱを悪戯しながら呟いた
      大切な物に気付けないのよ
       失くしてから記憶にすがって

      そのとうりだ
       僕はなにも云えず黙って空を眺める
        丘の上から灰色の街が見渡せた
         あそこで僕はハンバーガーを齧り
          ワインを飲んだ
           一人きりの虚無の部屋
            ありきたりに調理道具をそろえ
             スパゲッティーを茹でた

         僕は夢をみる
        みんなが笑っていた
       もちろん僕も

     大丈夫。
    時間とはそうゆう物よ
   少しずつ痛みが薄らいでゆくの
  
  でも傷跡は消えない
 それに・・・。それにいつか君も消え行く。

少女は優しく微笑んだ
 大丈夫。
  あなたといるの悪くないわ
   
   僕は少しだけ安心して眠った
    
    大丈夫
     本当に大切なものは消えないわ

      少女の口笛が
       空想の草原に流れた


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87年頃

2008-04-05 | 
あれだけ嫌いだった
 安いバーボンを深夜に飲み干す僕を見たら
  きっと君は笑うだろうね
   あの匂いがいいのさ
    Guns n` rosesのスラッシュなんて
     舌が黒くなるまでジャックダニエルを飲んでいるんだぜ
      君の言葉が耳元で聴こえる
   
       87年に「アペタイト・フォー・ディストラクション」が
        僕らを驚愕の渦に巻き込んだ
         僕らは古いラジカセで
          間延びするほどカセットテープを回転させた
           安いバーボンを
            君はこよなく愛した

             2001年宇宙への旅

            一体、今の時間軸はどの界隈なのだろう?
           まるで人波に消える横浜中華街のチャンさんの様に
          仕込みの準備に出かけるのだ
         一杯ひっかけて体を暖めて
        旅の途中なのさ
       黴臭い旅行バックが好きだったのだ
      フェリーの甲板でかもめに餌を投げる
     けして餌に惑わされず空を飛ぶ君は
    ジョナサン・リヴィングストン
   或いは
  飛行機に乗り込むマイク・オールドフィールドの旋律で
 記載された音符には
長い長い気持ちが暗喩されていた
僕はそんな音たちや深夜にかならずかかって来る君の電話が好きだったのだ
 
 キャベツの千切りがとても上手だった

  どうして僕らはあんなたやすい夢で酔いどれていられたのだろうか?
   君が呟く荒唐無稽な空想を
    音に変換しようと
     僕はディストーションの具合を因数分解した
      一小節に不可能なくらい音を詰め込んだ
       レガートで叩き出す音の持ち主を捜して歩いた
        君の夢は
         決して実現されなかった
          君の折れた翼の骨格は
           テラマイシンを塗っても良くはならない
            ジャックダニエルで消毒した応急処置
             やがて深く眠るのだろう
              まるで疲れ果てたジョナサンの様に

             コロッケが食べたい
            ケチャップだよ
           そのソースじゃ駄目さ

          キャベツの千切りを添えて

         君の得意料理だった

        学校給食よりは随分美味しかったよ

       バーボンとコロッケと音楽
      煙草の灯りの様に灯る夢の残骸
     前髪が焼けてジリリ、と音がした記憶

    87年の夏の出来事

   永遠の少年時代




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2008-04-04 | 
全世界に共有す
 哀しみの言語
 詩について志について死について

 悦びと哀しみの共有
  泣きたいのに泣けない老婆の為に
   僕は泣く

 鏡に映った姿が
  自分自身であることにきずくのに
   どれ程のものを得
    どれ程のものを失ったのか
  
  なにがしあわせで
   なにがふしあわせなのだろう?

汚い自分に
 嘔吐し嫌になる 道化はそれでも
  道化である以上
酒や童心や有象無象に溺れるわけにはいかない
 道化のレ・ゾンデートル
  守りたいものや
   一方ならぬ人の情けに甘えた瞬間
 鏡に映る自身が
  道化の道化としての義務を知る

 泣いたふりをして笑い
  舌を出した軽蔑は自分自身へ
酔ったふりをして馬鹿を繕い
 わずかにのこる自尊に嫌悪する

  酔ってはいけないのだ
   何もかもに
 それこそが
  道化のくぐりぬけた真実

鏡を見るたび
 紅い鼻に毛嫌いする感触を持とうとも

  道化は
 道化として生きなければならない
この世界に もし
義務や生きる理由があるとするならば

  溺れてはならない



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煙草と灯り

2008-04-03 | Weblog
昔、長崎の寮に住んでいた。
オランダ坂をあがってゆくと6年間住んだ寮にたどりつく。何度となく石畳の坂をのぼった。
寮は高台にあったので、屋根に上って見下ろすと港の灯りがとてもよく見えた。
当時、港にはクリスタルハーモニーという豪華客船が建造中で、その馬鹿でかい船は僕らの代が卒業するまで港にいすわりつずけた。

屋根から眺める風景は今でも脳裏に焼けついでいる。
ちいさな船が、朝方港に帰ってくるささやかな灯りはとても美くしかった。
マールボロやラークを吸いながら、僕達は何時間も飽きることなく船の灯りに心奪われていた。
ひとつの灯りは人が生きている証で、そうして夢の扉をあけてくれるドアだった。
いろんな気持ちが入り混じる。そんな風景を感じられる時間は永遠につずくはずなどない、ともわかっていた。だからその風景を忘れないよう、僕らはいつまでも飽きずに港に向かう船の灯りを大切に思った。

煙草に火をつける。
そうして懐かしい日々に思いをはせる。
忘れたくないことを忘れてしまう。嫌な思い出ばかり思い出してしまう。
そろそろ船の灯りを思い出そう。
前をむけるよに。足が動き出せるように。








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誰かさん

2008-04-02 | 
日が黄昏て暮れ行く頃
 世界が終わり
  やがて言葉は意味を見失う

  存在価値という論理は
   構築された虚構の産物

    ただ
     声が聴きたい

     苦しいほどに
      会いたい

    心が震えるほど想い焦がれたのは
     全体 何時のことだったのだろう?

     あの一言が云えたなら
      素直でありさえすれば
       誰かさんの
        存在価値に為り得たのだろうか?

     虚偽の記載報告書のように
    僕は青臭い自我で
   在りもしない嘘を塗り固めた
  素直であればよかったのにね
 永遠に失う
可能性の消失

 荒唐無稽なアリバイ創りにいそしむ
  
  馬鹿な話さ
   今頃になって
    笑えもしない
    
    馬鹿な話さ

     今頃になって

      狂おおしい程の
       意識の洪水

       声が聴きたい

        誰かさんの

            
       忘れてしまったよ







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