眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

2014-12-21 | 
扉を開けて一歩踏み出した瞬間
 僕らは草原の大地に呆然と立ち尽くしていた
  猫がしらんぷりをしてあくびをする
   扉は永遠に閉ざされ
    僕らは旅に出る事を余儀なくされた

     君が仕組んだ冗談だろう?
      僕が呟くと猫はにやにやと笑いながら答えた
       そうじゃないさ。
        これを望んだのはあんただ。
         ひとのせいにするのは、あんたの悪い癖さ。
          君はひとじぁなくて猫だろう?
           僕は喉まで出掛かった言葉を飲み込んだ

           退屈な現実の屈託の無い様相
          いつもと同じ帰り道
         変わらぬ風景
        僕は曖昧な日常に飽き飽きとしている
       確かにその通りだ
      猫が云った言葉は本当だった
     けれども奇妙なことに
    そこにはアルフォンス・ミュシヤ的な背景や
   ホルへ・ルイス・ボルヘスの様な神話的動物は存在しなかった
  ただ哀しいくらい緑の草原が果てしなく続いているだけだった
 
 緑の草原に一瞬長い影が伸びた
  少女の影だ
   あの日校庭の夕暮れ時に見た
    あの少女の影だった
     間違っちゃあいない僕が忘れる事無かった記憶の影
      僕らは顔を見合わせ
       黙って記憶の影を探して歩き出した
        それが旅に出た唯一の理由と意味だったからだ

         不穏
        不協和音
       単旋律の甘いノスタルジックな罠
      酒場のトイレで吐きながら
     四角い窓から月を眺めていた
    これが僕の人生なのだろうか?
   嗚咽した飲み屋の壁に身をもたれ僕は煙草に灯を点ける
  全体あの記憶の影は何処で見失ってしまったのだろう?
 少女はいつの間にか消え去っていた
そうして僕はどうしても彼女に連絡を取らなければならなかったのだ

  どうしてさ?
   猫が微笑みながら尋ねる

    それが僕の生きているアリバイだからさ

     だから

      だから我々は緑の草原を旅した

       失ってはいけない記憶の影を取り戻すために

        もう

         失ってはならないのだ

          青い月が仄かな明かりで灯した

           行こう

            知覚の扉は開かれたのだ



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ジングルベル

2014-12-02 | 
君の世界を想い
 風の中に白線を流した
  想いは空に消え
   永遠はいつかの午後に終焉を見せた
    淀んだ空気を深呼吸し
     君の微弱な電波を受信しようと錯乱した精神

      きっとたなびく匂いが哀しいから
       僕らはハンバーガーを齧るんだね
        君の口元のケチャップの余韻
         ハンケチでそっと拭い
          柔らかなクッションで蓋をする

           微弱な明かりの下
            僕らが失ったものを想うのだ
             垂れ下がった赤い花
              今夜も眠れそうにないから
               ウイスキーを舐め
                記憶の安寧に鎮座する
                 君じゃなくっちゃあ駄目なんだ

                 どうして人は生きているの?

                  僕がささやいた疑問に君がくすくす微笑んだ

                   皆、終わりに向かっているんだよ

                    あの退屈な教科書と眠たげな授業時間の様にかい?

                     煙草に灯を点け
                      君は都会の喧騒を笑った
      
                       退屈な授業と僕とどちらが好みかい?

                        僕は質問に答えずにいらいらと爪を噛んだ

                         終わりは必ず来るの?

                          もちろん。
                           始まりがあって終わりが或ることは救いだよ

                            救い?

                             そう。
                              君の厄介な美学の終焉、
                               その後日談の事さ。

                                煙草の白い灰が床に落ちた

                                 奴らは決して僕らを許さない。
                                  偽善の名の下に
                                   僕らの記憶を抹消するだろう。

                                   奴らは僕らの音楽を馬鹿にして
                                    嘲り
                                     罵り
                                      吹聴したんだ
                                       彼らの価値観の世界の法則で。

                                       君は
                                      君は外国に行った事があるかい?

                                     外国?

                                    そう。
                                   誰も知らない街角。
                                  そこで僕は永遠に歌を歌うんだ。
                                 それは決まった事なんだ。
                                だからもし君が旅を続けるのなら
                               いつかあの国で僕らは再会できると想うんだ。

                              再会?
                             どうして?
                            君も僕も此処にいるのに。

                           君はくすくす微笑んだ

                          まだ気ずいていないのかい?
                         僕は存在を抹消された記憶の残骸なんだ。
                        此処には存在していないのさ。

                       僕は此処にはいない。
                      厳密に云うとこの世界に僕の存在はない、
                     幽霊なんだよ。

                    僕はウイスキーをごくりと飲み込んだ

                   物語の終焉の近くなのさ。
                  君と僕とのね。

                 駱駝が口笛を吹き
                壁には青い扉が描かれていた

               ご覧、世界を。
              君が残り僕が旅立った世界。
             ただ歌だけが残ったんだ。
            哀しい風の中の出来事だよ。

           外国の知らない街角

          もし
         もし君が歌い続けるのなら
        僕らはそこで再会する
       約束が
      約束が果たされるのなら
     終焉の最果ての国で
    僕らは
   僕らの音楽を歌い続けるんだ

  僕らは歌い続けなければならないのだ

 僕は記憶の歌を歌う

黒いギターケースを抱えて

 眠れない夜に

  出会える君の影を探して

   深夜零時の街角を徘徊する

    答えて

     君じゃなくちゃあ

      やがて寒さが増すだろう

       かじかんだ手でギターを弾いた

        ね、

         答えて。

          どうして人は生きているの?

           終末の余韻

            気難しいパセージを弾き飛ばして

             君の微弱な電波を受信しようと錯乱した精神

              狂った帽子が笑う

               ね、

                答えて。



                 お願い。




                  ジングルベル


                   ジングルベル


                    
                    鈴が鳴る






























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