眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

赤い花

2024-08-08 | 
凝縮させた記憶の場所に
 赤い花が咲いた
  如雨露で水をかけ
   しばらくぼんやりと煙草をふかした
    庭園は世界の果て
     懺悔した我々の密やかなる夢 
      君が残し
       僕が受け継いだ意思の下
        誰にも聴こえない歌を歌った今日と昨日と明日
         古臭いギターケースから楽器を出して
          哀しいけれど少し歌った
           ラムネの甘ったるい記憶
            風鈴がちりんと鳴った

            赤い花
         
           君はあの時代そう呼ばれ
          ふてくされた表情ではっか煙草を咥え
         つまらなさそうにギターを弾いた
        僕はグラスのウイスキーを舐めながら
       こんな時間が永遠に続くといいと想った
      このままが
     このままが
    真夏の昼下がり
   風鈴の歌

  ねえ
 僕らは十年後にどうしているだろうね?

ぼんやりと酔いのまわった頭で僕は彼女に尋ねてみた
  
 赤い花は珍しく優しい声で答えた
 
  あたしは赤い花のままだわ。

   いつまでもね。

    僕は?

     あなたはたぶん名前を忘れるわ。

      そしてあたしの顔も髪型も影の形も忘れるの。

       どうして?
        君のこと忘れるはずが無いよ。
         それに僕は君のそばにずっといるんだよ。

         赤い花は可哀想に僕を見つめた

          あたしはこの場所に残るわ。
           あなたは此処から旅立っていくの。

            僕だって何処にも行きはしない。
             この場所に残るよ。

             決まりなの。
              あなたの十年後はこの場所ではないのよ。

               風鈴が哀しくささやいた

                ちりん

               哀しい時には歌って。

              それで哀しみを分かち合えるわ。

             僕は残ったウイスキーを飲み続けた

            永遠はいつまでたっても訪れなかった

           時代が変わり世界が通りすぎ僕は縁側でビールを飲んでいる

          スピーカーから戸川純の歌が流れた
   
         「蘇洲夜曲」

         泣きたくなる青い空の下

        赤い花が綺麗に咲いた













 
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空の話

2024-08-05 | 
  
    「空の話」

    空の話をしよう  
    とても綺麗で
    こわれやすくて

    空の話をしよう
    なくした記憶の  
    いちばんすみっこにある
    小さなお話

    君が街を歩いているから
    僕は嬉しくて
    何かに感謝する

    君がいてくれて
    嬉しい だから
    空の話をしよう
    小さなお話

    永遠があるなら
    君といっしょに
    いたかった

    少年は路上に落ちてる
    石を眺めて
    同じと思った

    君が
    しあわせになれるなら
    僕は僕の石を 
    君にあげる

    君がしあわせになれるなら
    僕は僕の意思を
    君にあげる


    そうして
    そして
    あの空の話をしよう

    夢見たものは
    うそか本当かわからないけど
    あの気持ちは
    たしかに 残った

    君がそばに
    いてくれるといいな

    空の話をしよう
    小さなお話





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青い魚

2024-08-02 | 
表層から剥離される皮膚の残骸は
 優しい記憶
  穏やかなる忘却の果て
   世界が沈む頃
    林檎を齧る

    月が赤い
   レンズ越しに眺める視界の領域は
  あたかも仕事帰りに開けた
 缶ビールの宵の口
程ほどにアルコールが回り始め
 煙草に火を点け
  かかる筈も無い電話を吟味する
   時間は呆れるほどあるが
    人生は意外と足早さ
     キャンバスに青を塗りたくり
      友人はビールをよこせと騒ぎ立てる
       呆れた奴だ
        冷蔵庫を開いて缶ビールを放り投げる
       題名は?
      サカナだ。
     サカナ?
    そう。魚。

   表皮が一枚剥がれ落ちた
  
  気ずけば暗闇が街を覆う
 もう帰れない
こんな処にきたのはやはり間違えだったのさ
 フクロウが珍しく目を大きく開けて
  僕らの過ちを指摘する

   魚を探しているんです?
    サカナ?
     そう。魚 青い色をした奴。
      どうして魚を探すんだい?
       フクロウが尋ねる
        
       友達なんだ。大切な。

      石畳の広場にたたずんでいた

     街灯の青いランプの灯りで
    レンガの壁に
   魚の影が泳ぐ
  青色だ

   僕は叫ぶ
    どうして?僕を忘れたの?
     魚の幻影は悠然と泳ぎ
      空気を尻尾で打ちつけた
       ぱしゃり

      僕は青の魚の影を追いかけ
     路に迷う
    まるで子供のように

   どうして?僕を忘れたの?
  友達だった
 大切な

  酔いが醒めた
   
    僕は

   
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