眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

ばらっど

2024-04-25 | 
ジャック・ダニエルの蓋を開けた
 たまにはゆっくりと飲もうよ
  僕は使い慣れたタンブラーグラスに独白する
   光景は薄汚れた存在を霞める
    残り物のキャンドルライト
     灯が暗闇に揺れ
      アンモナイトの呼吸のリズムで煙草を吸った
   
       3日飲まなかったアルコールは意識を弛緩させ
         軽く酩酊した態で戯言を云う
         グラスは冷静であたまが良いので
          僕の言葉に振り返らない
           唯 時間が移ろうだけ
            湿度の高いこの島で
             扇風機が優しく微笑む

             古いテレヴィジョンで昔の唄が流れた
            作り物だけれど決して安易ではない唄たち
           はじめて「ばらっど」なんて作った僕は
          気恥ずかしさの影に
         変わらぬ世界の在り様を模索した
        もう誰の唄も批判せぬよう誓った
       それが何がしかの魂を有する故に
      誰かを記憶した所作を侮蔑する真似だけはするまいと
     自己弁護だろうか?
    そんな気になったりもする
   忘れてしまったけれど
  君を想い創った旋律は決して嘘ではなかったんだよ
 だから
誰かが誰かのことを想い創った「ばらっど」を嘲笑することは出来ないのさ
 
 例えばさ
  あの君に於いて大切だった宝物を
   彼等は笑った
    必死で暮らす君の日常を白夜が皮肉に嘲笑する
     君は違うんだ、と唄い続けるだろう
      ラジオから流れた君の心は
       今夜も垂れ流された情報として錯綜するだろう
        一片の跡形も残さず
         君の心は酔いどれの嘔吐と成り果てる
          
         クラスの隅っこで歌った唄は
        時代錯誤だと相手にもされない
       それでも僕らは歌い続けるべきだった

      勝つ必要もない
     けれど
    負ける必要もない

           
                 3時間かけてボトルの半分を飲み干した


           心を込めて演奏すれば
          きっと想いは伝わる
         心を込めて言葉にすれば
        きっと優しさに触れる

       ばらっどの呼吸

      深夜三時に送ろう

     歌い続けていて

    語り続けていてね

   僕は笑わないから

  キットダヨ









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天体観測

2024-04-11 | 
消えない世界を想い
 緩衝地帯に打電する信号の様に
  それは赤でも無く黒でも無かった
   深夜零時に降る雨は
    優しく魂を包み込む
     綺麗なワインの赤を零し
      カーペットに赤い溜りが出来るのを
       ただ黙って眺めているのだ
        繊細さを気取った悪癖に於いて   
         消えない世界の
          消えないパレード
           野良猫達が空き地に集い
            すっとんきょうな声で歌った

            パレードはあの空の向こう
             そこでまた始まる
              さあパレードだまた始まる
               始まりはいつも夜の向こう
                いつもの広場

                広い公園の
               水の無い噴水
              赤い林檎を齧る
             薄っすらとした霧の夜
            断罪する君の赤い舌
           黒いこうもり傘が
          強い風であっけなく壊れた
         信号は届かなかったのだろうか?
        丸い眼鏡を外し
       ぼやけた空間を見渡した
      綺麗な嘘
     曖昧な現実
    不本意な果実
   熟れた真夏の午後
  憧れた静かな微笑
 僕の知らないお話
ただ安らかに

 土曜日の夕方は幸せだった
  ランドセルを処分し
   誰かの影が伸びるある種の時間
    それを想った
     其れを想った
      絵画の風景に依存し
       現実をあざ笑った午後
        現実らしい実態を伴った事象に
         やはり叩きのめされるのだ
          いつだって
           パレードを待ちわびた
            
           展望台から眺める天体に
            少しだけ慰められた想い出
             もう忘れてしまいそうな神話の儀式
              ね
               もう少しだけ飲もう
                ソーダー水にウイスキーを垂らして舐めた
                 歌われた事の無い歌を歌おう
                  望む
                   空から堕ちた具象の様に
                    仮装した羅列が落ち続ける事を

                    「ヨコハマの波止場から
                      船にのって
                       異人さんに連れられて
                        いっちゃった」




                    ちりん


                   風鈴の音がした


                  まるで何かを想い出したかの様に


                ちりん




              いつかの天体観測




           









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2024-04-08 | 
壊れやすい水
 古井戸は永遠に蓋をかぶせられた
  水があるところには神が宿るという
   飲み水になり
    洗濯に使われ
     そうして畑に命を宿す

    野菜の状態を吟味するお婆さん
     これはまだ食べごろじゃない
      そういって草花に丁寧に水をかける朝のお仕事
       戦前のこの島の写真を眺めた
        まだ若い端正な顔立ちをした少女が
         水瓶を運んでいる
          美しい写真だった

      ロバート・キャパが
       ベトナムでシャッターを押した
        米兵がトラックの上から
         ベトナム人の男に煙草を薦めている
          笑顔を浮かべている
           あの悲惨な情景で
            その写真の穏やかさに少し安心するんだ

         ある人のコンサートに行った
        数年ぶりの活動再開だ
       彼女は優しく激しく歌った
      魂 と想った

    在る時期
 僕はこの人の唄が聴けなかった
それは余りにも痛くってこころがどうにかしてしまいそうだった 

   彼女の歌を聴いて
    自然と涙が溢れた
     誰かの唄で泣いたことなんてそれまで無かった
      きずくと 涙と汗で僕は滅茶苦茶だった

       久しぶりに泣いた
    
        随分と我慢していたんだな
         泣いてすっきりとした

       問題は山済みだね
      流した壊れやすい水には
     神が宿っていたのだろうか?

    僕は彼女のいる世界に
   同じ場所で同じ空気を吸っていることに感謝する
    
    それは必然でたぶん奇跡だ




      
 
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雨の日

2024-04-02 | 
君の昔を知らない
 薄明の朝缶ビールを片手に庭の草木に水をまいた
  水をまき終えるとワインの瓶を引っ張り出してきて
   縁側でお日様の陽光を浴びながら飲酒した
    朝ご飯に何が適当なのか今日一日をどう過ごそうか
     答えがなかなか見つからないのでワインで酩酊した朝の時刻
      僕はそっと煙草に火を点けた
       白い煙が消えゆく記憶の様に空に消失してゆく
        たまらなく時間だけが残された

        少女は煙草をくわえてバーボンを舐めている
         煙草を吸いながらウイスキーを飲むと精神が解放されるの
          彼女はそう独り言の様に呟いた
           ポンチョに落ちた白い灰をぱたぱたと叩いて落とし
            グラスに残ったウイスキーを一息で飲み干した
             それから立ち上がってギターケースの中から楽器を取り出した
              緑色のソファーに座り丁寧に調弦にいそしんだ
               僕はワインの残りを舐めながら
                調弦する少女と楽器のペグをぼんやり眺めていた
                 飽きもせず眺めていた              

                  調弦が安定すると少女は僕を見つめ不思議そうに尋ねた

                   どうしてあなたは楽器を出さないの?

                    あまり楽器を弾く気になれないんだ。なんだかね。

                     ね、あなた音楽好き?

                      もちろん。

                       それじゃあ今日は私が弾いてあげる。
    
                        そう云って少女は「シンプリシタス」を弾いた
                         僕は黙って彼女の演奏に耳を傾けていた
                          ワインの酔いと少女のギターで少しだけ気持ちよくなれた

                           街は高い城壁で囲まれ
                            街の外の世界と遮断され一体何年の月日が流れただろう
                             僕らは朝起きると珈琲を沸かし
                              お気に入りのレコードを古臭いプレーヤーで一日中流した
                               昔気質のレコードショップの様に古臭い音楽が飽和した
        
                               ジョンダウランド、バッハ、ショパン、アランホールズワース&ソフトマシーン、ジャコパストリアス
                                ジョーパス。ジャンゴラインハルト。そんな感じだ

                                 そらから僕等は珈琲を沸かし酔い覚ましに飲んだ

                                  クッキーを齧りながら少女は語り始めた

                                   魂はいまだ旅の途中なの

                                    その中には嬉しいこと悲しいこと

                                     望むこと望まざることがあるのよ

                                     私たちは生まれる前からこの旅を続けているの

                                    だから心配しないで

                                    過去も未来もすべてがこの瞬間に起因しているの

                                  だから

                                 心配しないで

                                ご飯をしっかり食べてぐっすり寝て朝きちんと起きるのよ

                               自分が大切にしている者にもう一度向き合うの

                              毎日を丁寧に生きるの

                             それが暮らしよ。

                            僕等はカーボーイジャンキーズのアルバムを流した

                           窓の外では雨が降り出した

                          しとしと

                         しとしと

                        誰かの涙の様に
















 

  
       
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