眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

約束

2011-09-29 | 
琥珀色の断裂
 磨耗される仮設した虚飾の中
  記憶が滑らかに滑り去り
   白い鳩のオルゴールが鳴り始めた
    電波が電線を流れる
      
     誰にも云えなかった言葉
      高架橋の下
       数分後意識が薄れた
        街の人込みの中で
         路地に迷い込み
          街灯の青の世界に於いて煙草に灯をつけた
           ようやく吟味された暮らしの内に
            様々な仮想空間が陳列され
             言葉がその意味を見失い始めたのは
              全体何世紀前の出来事だったのであろうか?

       聴いているよ
      君の歌声も切なさも
     優しい輪舞
    影を辿った時間
   おいで
  この建物の界隈で時間が錯綜するのなら
 来世でも君をきっと捜し続けるのだろうか
きっと瑣末な日常に網羅された暮らしの
 いくぶん機嫌の良い天気の昼に
  君のたなびく影を追う
   永遠に聞かれる事のなかった言葉
    電線越しに伝達されるパルス
     ノイズの多い状況下に
      電話交換手が働く手を休めない
       
       ひどく混線している

        君の意識はアルカリ性かい?
         理科室の一角で
          ビーカーで珈琲を入れながら
           君がクスクスと笑った
            寒い日だったから
             ストーブの温もりがやけに親密な世界
              昼下がりの郷愁
               砂糖もミルクも好きじゃなかった
                示し合わせたように
                 両切りのピースを吸った
                  わずかな陽光が降り注ぐ

                おいで
                 此処に現に存在す

                誰にも云えなかった言葉

               耳元でささやく記憶の階層

                

                約束をしようね














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カレーライス

2011-09-18 | 
カレーライスという物は
 何度作っても適度な量が解らない
  独りなのに鍋いっぱい作ってしまう
   他に食べてくれる人も居ないので
    三日続けて食べて
     もうカレーなんか作るか、と不機嫌になる

      スパゲティーも似た感じがある
       空腹で倒れそうな時にビール片手に作ると
        茹で加減が曖昧だし
         カレーのように大量のディチェコの麺を茹でてしまうのだ
          大量のスパゲティーは味ポンで味付けして
           そのまま僕の食道を通り抜け
            胃袋に貯蓄される
             満腹中枢が破壊され
              もう、スパゲティーなんか作るか、と不機嫌になるのだ

              僕等が根城にしていたバーは
               かなり怪しいバーだったので
                飛込みで来る一見さんのカップルなど
                 店のドアを開いてたむろする僕等を見て
                  そのままドアを閉めて出て行ってしまう
                   僕等は皆汚しい長髪で
                    酒を飲みながら楽器を持って遊んでいた
                   やがて朝方になると
                  柔らかなソファーや冷たい床下で寝た
                 急に一人が起き出して
                寒い、と呟き店の外へ出て
               在るだけの雑誌や新聞や角材をかき集め
              店の横の電柱で火をつけて暖炉の代わりにする
             僕は警察が来ないか辺りを監視しながら
            ピースの両切りに灯をつけるのだ

           バーのマスターは一風変わった人物で
          胡散臭い夢物語を熱く語る人だったが
         この店で一番人気のカレーライスはやたらと美味かった
        仲間の一人が店のドアを蹴飛ばすなり

       マスター、カレー!

     と悪びれもせず注文する

    うちはカレー屋じゃないぞ
   とぶつぶつ云いながらマスターはまんざらでもなさそうだ

  ある深夜
 僕はバーの扉を開くなり

マスター、酒。

 と呟いた

  お、なんかかっこいいね。まるで此処がバーに見えるよ。

   意味不明な言葉を残し
    彼はジャックダニエルをロックで出した
     缶詰めのオイルサーディンとオリーブを出して
      おごりだ、どうせ何も食ってないんだろう?
       と笑いながらグラスを拭いていた

        あんたさ、食べないと。

         マスターは煙草を咥えながら僕を諭す

          酒と煙草で十分。カレーはマスターが味見してよ。

           そういう僕にマスターは不思議そうな表情をした

            この店のカレーなんて食べたこと無いよ。

              僕は驚いて彼に尋ねた

             味を見ないの?

            カレーは不思議と何を混ぜても大抵美味いんだ、
           不味いカレーが出来る可能性はゼロに近いのさ。
          そう云ってギターを引っ張り出し
         エリック・クラプトンを引き始めた
        僕は黙ってジャックを舐めていた

       そうして僕はカレーを作るとき味見をしたことが無い
      マスターの言葉を忠実に守っているのだ
     そうして独りで作りすぎたカレーを食べながら
    たまにあの店のことを想いだすのだ

   作りすぎたカレーの味と共に






                        
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糸電話

2011-09-07 | 
寒い夜だった
 おどけて見せた酔いの代償に
  やはりいつもの哀しみが境界線側に浸透した
   ペットボトルの水を口に含み
    路上に吐き捨てた
     悪寒が走る
      もう僕には止められない速度で
       感情は緑の草原を駆け抜けたのだ
        まるで
         あの日吹き抜けた風の様に
          
         あんたどうして震えてるのさ?
          少年が不思議な生命体に話しかけるように
           怪訝な表情で尋ねてきた
            寒いんだ。
           寒い?
          真夏だぜ、俺なんか汗でシャツがべっとりしているのに。
         真夏?
        そうだよ。暑い真夏の夜さ。
       震える僕のそばにしゃがみこみ
      少年はもう一度尋ねた
     ねえ、本当に寒いのかい?

    ネエ、ホントウに寒イノカイ?

   大丈夫。こうして少し休めば感情の波が収まるはずだ。
  僕は目を閉じた
 世界が回っていた
憂鬱な日常と奇妙な夢がかき混ぜられた
 まるで飲めもしないカフェオレの様に
  大丈夫
   僕は僕自身に言い聞かせる
    ここが現実だ
     食べ飲み排泄するリアルな現象世界だ
      だがしかし
       あの風の音色がする
        ビー球の青
         あの懐かしい哀しいくらいに透き通った青の青さ
          
         消え去る事のない記憶
        化石になった事象たち
       愚か者だと馬鹿にされた夜
      旅に出た友人は今頃どうしているだろう?
     パトカーのサイレンが聴こえた
    「24のカプリース」くらい超絶的な面持ちで哀憐が鳴り響いた
    風吹く草原
   緑色の世界
  草原の草むらで口笛を吹く記憶
 想い出してしまったのだ
君のことを

 青
  海鳴りがした
   ジョナサン・リヴィングストンになれなかった僕らは
    羽が折れ地面に叩きつけられた
     夢は夢のままでホルマリン漬けにされ
      やがて夜になった
       砂浜で星を眺めた
        永遠が続くはずだった

         ブザーが鳴った

    「本日の上映は終了です。」

   プラネタリウム
  水族館
 人気の途絶えた解体寸前の古びた映画館
お客様のおかけになった電話番号は現在使用されておりません・・・。

  つー ツー つー ・・・

   
  精神的な脆弱さを嫌う人達
   
   罪人が罪人に石を投げつける
   
   エンクロージャーのように囲い込まれた子羊の群れ

    君はこの世界の果てで一体どうしているのだろう?
  
     僕といったら苦しすぎて

      哀しみにも追いつけない

      君の長い髪の記憶の残像
      
      糸電話だったらよかったのに

      耳に当ててくすくす笑いあった

      

      とっくに糸は切れていたのにね



       記憶の残渣












      

  

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