眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

約束

2013-07-30 | 
長い月夜だと誰もが云った
 僕はこんな夜が永遠に続くことを願った
  愚かさの範疇で
   擬似的な偽善を施しても
    遠く届かない地平はやがて
     記憶の何処かに散布され美化される
      記憶の魔力
       いつまでも夢を見ている僕を
        野良猫が一瞥して屋根の上に上ってゆく
         猫は尻尾など振らないのだ

         パレードだよ
          君がそっと囁く
           濡れた吐息が耳朶を撫でる
            僕は街の中央線に視線を向ける
             やがて訪れる
              柔らかな優しさと哀しみに
         パレードだよ
           君の声は永遠に続く筈だったのに

           はぐれちゃいけなかったのに

           現実の界隈は魚の匂いがする
            生臭い息が生の根源を消費させる
             磨耗したはずのフィルム
              擦り切れたレコード盤
               懐中時計が午前零時を指したまま動けない
          
          アセロラの実にはビタミンがたくさんはいっているの

         少女は籠に赤い実を摘んで
        木陰でレモネードを舐めた
       まるで虚脱した世界を嘗め回すように
      アセロラの実を口にして
     種を吐き出しながら口ずさむ歌
    終わらない世界は
   虚飾された虚偽の新聞記事の様に
  この球体に降り注ぐ

 ね
  今夜は月夜だわ
   
   どうして分かるのさ?

    野良猫が告げたのよ
     今夜は青い月夜だってね

      それなら
       ワインとグラスの準備をしなくちゃ

       僕と少女はワインの瓶と煙草を持って
        夜の草原の中に逃避した
         青い月明かりが
          全ての世界を悲しみと親密な青に変えた
           
           いったとうりでしょう?
  
           少女は得意げだ
 
         野良猫の情報はいつだって正確なの
        フクロウの天気予報よりずっとマシよ

       そして僕らは青の世界を探索した

      パレードが来るよ

     耳元で君の声が聴こえたような気がした

    どうしたの?
   後ろばかり眺めて?

  戸惑う僕に少女が告げた
 もう戻れないのよ
どんなに寂しくて懐かしくて苦しくても
 あの世界は別の領域なの
  あなたはそれを望んだのよ

   風が吹き抜ける
    熱っぽい身体にとても心地よかった
     僕らは草原のいちばん大きな樹の下で
      ワインを飲んだ
       はっか煙草に火を点けて
        少女は歌をうたっている
         昔の歌だ
          僕はギターケースから楽器を取り出し
           酔っ払いながら彼女の歌にあわせて音楽を紡いだ

           清潔な青い光の下

         僕は戻らない者を想った

        パレードはいつまでも訪れなかった

       長い月夜だと誰もが云った

      少女がギターでサグレラスのノスタルジアを弾いた

     永遠に終わらない夢

    現実の界隈から抜け出した

   午前零時

  君の声が懐かしいね

 憶えておくよ

いつまでも



約束だからね








コメント (2)
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