眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

螺旋階段

2007-11-08 | 
           スコッチの瓶に
          腕時計を巻きつける
           そうして
          時間が止まる

         街のはずれの
        古い修道院がみえる
       小高い廃墟の屋根に座り込み
      ウイスキーを喉の奥に放り込んだ

     港から小さな灯りがともり
    船が帰る時刻
   僕はそんな小さな灯りにじっと見入った

    夢見た世界は
     まるで透明な嘘
      自堕落な僕を包み込む
       妖しい一枚の毛布のぬくもり

       外は寒すぎるね
      さび付き今にも壊れてしまいそうな
       螺旋階段にしゃがみこむ

       街灯の明かりが石畳の坂を照らし
      僕には誇れるものが何ひとつなかった

       螺旋階段
      登るには寒すぎる
     だからといって
    行場所すら見当たらない
   星を眺めるのが唯一の仕事

  まるで大昔の羊飼いのようだ
 懐かしい孤独に
そっと耳を傾ける
  
 僕は何を失ったのだろう?
  僕は何を失うのだろう?
   さび付いた階段が撤去される前までに
    答えの切れ端を手にしなければ

     螺旋階段
    登りつけたら
   さび付いた扉も開くのだろうか?
  
    ウイスキーをごくりと飲み干す
   世界にひとつでも夢があるならば
  僕は生きていける
 僕は生きてゆける

     
          しらんぷりした二匹の猫が
           酔っ払った僕を尻目に
            夜のお散歩

            
           螺旋階段にしゃがみこむ僕の
          僕の上に
         月明かりが存在を
        照らし出す

       
      もう
       螺旋階段が何処にあったのか

        とうの昔に忘れてしまった

        忘れてしまったんだ


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感謝と懺悔

2007-11-07 | 
ようやくおどけてみせた姿は
 馬鹿馬鹿しかったらしい
  駱駝がのん気にあくびする

  アンモナイトと亀は
   未来と過去を予見するだなんて噂話
    真剣に信じた僕が
     子供じみてたんだよね
    成立する為の条件
   「すべてのものは
     誤りうるものであるし
      誤るものである」

   その前提に立つならば
    僕は
   ありがとう と
  ごめんなさい を
 簡単に云えなくなっていたんだね
  綺麗な言葉だ
   ありがとう と
    ごめんなさい

   嗚呼 
  一日が終わる頃合
 僕は缶ビールを飲んで
娑婆にありがとうと呟き
 極楽においてごめんなさいと涙する

           世界は様々な問題を抱え
           一切れのパンすら無い子供達の映像を
           青いブラウン管のテレビのニュースで記憶し
           缶ビールの酔いのしじまに
           涙がでた
           僕の馬鹿さ加減にたいして
           僕は馬鹿だ
           ごめんなさい

喧騒と日々の暮らしに追われた
疲れきって眠りの落ちる瞬間
眼の端に写った仏壇に
脳みそで合図する
ありがとう

   生を意識し 死を洞察す

    何万回繰り返しただろう

     出した回答は  

     ありがとう と
     ごめんなさい

    たまに口にすると
   すごく素敵だ

  なんて綺麗なんだろう


  たまに涙し嗚咽を吐く

    

    感謝と懺悔







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夜に

2007-11-04 | 音楽
終わらない電話に
皆 飽き飽きしているよ 
早く切りたがっている
電話をかけるには 少しばかり遅すぎる
寂しい夜

いつかの夜には 屋根に上って 煙草を吹かし
高い遠くのどこかを夢見ていた
現実では
古い映画のワンシーンの様に
雨が止まない
白黒映画の雨の風景のリフレイン
無声映画だから 音も無い
一人、二人、ぽつりといる暗がりで
振り向くと
映写機の眩しいレンズに吸い込まれる

あるいは遠い国の人が描いた
展覧会の絵のよう
まるで夢の世界にいるようで その日もずっと雨でした

   本当の孤独を知らなかったんだね

残るものは想い出だけ、なんて訳知り顔で云った人もいたけれど
大切な想いも
両手から こぼれる砂の様に流れ落ち
やがて消えて無くなりました
残るのは
やるせなさと激しい孤独

  「優しさと哀しみは同じ成分なんだね」
    と 大好きなギタリストが歌っていた
  寂しさは静かな安らぎだ と云う人もおりました

僕は今まで あえて 僕ら という言葉を使っていましたが
僕らなんてイナイコトが
この頃 うすうすと感じられるのです
僕らは 何処かでつながっていたいという
気持ちの悪あがきで 子供っぽい悪知恵

僕は 一人称で言葉をつずってゆかなくてはならないようです
どうやら

寂しいですね
無声映画と真夜中の電話は とてもよく似ています
絶対に音を出さない
完全な孤独


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砂時計

2007-11-03 | 
時計の周辺が騒々しいのは
 目覚まし時計だろうか?
  僕はどちらかと言えば
   古風な砂時計を愛す

  砂が流れる
   その様を眺めながら
    スコッチを舐める
     そうして
      砂時計をひっくり返して
       時間の流れを逆流するのだ

       今まで出会った人々
      今でもそばに居てくれる友人
     或る時間を共有し去っていった人
    優しい出会い
   身も凍る残酷な一言
  それでも
 過去をたどる旅は
流れ落ちた砂のように
 切なくて大切なレ・ゾンデートル
  やはり無くては無かったもの
   時間が記憶を
    酒のつまみにしてくれる
     
            砂時計をひっくり返す

    静かなときの流れは
   あのとき君が歌ってくれた言葉
  調子はずれな僕のコーラス
 へんてこりんな詩と曲を見て
君は真剣に歌ってくれたんだ

             砂時計をひっくり返す


   傷ついては喜んでいた

   おどけていたね

   僕も君も

   僕はスコッチを煽る

   選別的ではない

   夢の名残は
     ノスタルジックな世界の流転

   象徴的な砂時計の目論見




  
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ストリート

2007-11-02 | 
妥当な線で折り合いをつける
 黒板に白墨で白線を流す
  境界線はどこだろう?
   有刺鉄線のこちら側か
    花壇にじょうろで水をまくあちら側か

     戦闘機の爆音がカーステレオの
      ハードロックよりも威圧的すぎる
       所詮
        音楽は無抵抗だったのだろうか
         深夜の公園でそうっとギターを爪弾く
          マリーンの若者達が
           小競り合いをするゲートの前
            僕らは店でハンバーガーを買い込み
             知らんふりでコーラを飲んだ

             MPが銃を持っている
              パトカーが紅い非常灯を照らす
               ハードレイン
                やがて雨が堕ちて来た

          僕らの世界はテレビの画面の青の中
         
         埋められたんだ この界隈も
        誰かがつぶやく
       やがてここにも滑走路ができる

      子猫が残り物のタコライスを味見する
     Yナンバーの車がやって来て
    10分ほどでメインストリートの方へ消えた
   街灯の下
  僕は煙草をくわえながら
 でたらめな唄を歌う
この無駄な時間に
 60億人ぶんの夢と挫折が交錯する
  誰もが正論を吐き
   誰かが泣いている
    誰かが飽食にうんざりし
     誰かが3日振りにパンの切れ端を口にする

      僕は
       やがて埋め立てられる浜辺で
        デタラメな唄を歌う

        君に会いたい

         ただそれだけ

          他のことは知らない

           ただ

           爆音の下

         君のささやくファルセットヴォイスの
          優しい歌に耳をそばだてるんだ
           野良猫の様に
            ぴんと耳を立てて


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脱出

2007-11-02 | 
抜け出した風景は
 隔離されていた世界とは
  想像以上に違っていて
   僕は
  数分 あっけにとられた

  中庭はベンチがあって
   そこで
    少年が
     ギターを抱え込みながら
      紙煙草と珈琲を
      面白く無さそうに
     交互に呑んでいた

   こんにちは
  
  そう云うと少年は
 神経質そうに前髪をかきあげて
僕の頭からつま先までを一瞬で観察した

  見ない顔だね
 ここでは

少年は煙草を僕にすすめた

 ここでは
見ない顔だね

 僕が居た所はなんだか息苦しくってね

 そういうと

 どこでもおなじだよ
 
   呟いて彼はギターを弾いた

    「グリーン・スリーブス」

    逃げ出した地平は
   だがしかし 
  やはり閉塞されているのだろうか?
 どこだっておんなじなのだろうか?
僕には分からない
 10年前も分からなかった
  いまだってもちろん分からない

   「ここ」の住人たちも
     やはり
      抜け出そうとしている
       抜け出そうとしている

   いちばんの望みは?

 少年は僕の顔を見て笑った

 公園の芝生でさ

  昼寝したいんだ

   なにも考えずにね

    なにも考えず


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