眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

フォルテ

2013-03-30 | 
壊れた音がした

 壊れそうだよ

  ちがうよ、

   壊れていたのさ。

    黒猫のハルシオンが冷徹に呟いた

     華奢なグラスが割れる音

      ガラス細工の様な嘘

       皮肉で冷淡な真実

        冷笑され打電される神話

         壊れていたのさ

          とっくにね。

           胸がどきどきして

            怖いくらいに心拍数が上昇する

             どくん

              どくん


              赤いラグリマ


             真相はフォルテで泣き出しそうな君の表情


               連続した道化師の綱渡りの様に













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ウイスキーバーの夜

2013-03-22 | 
お酒がなくなるまで付き合って。
 彼女はそう云い
  帰り支度をしかけた僕を引き止めた
   とくにやるべき事も無かったので 
    僕は椅子に座りなおし煙草に灯を点けた
  
     小さなバーは薄暗くて
      何故かバッハの無伴奏チェロ曲が流れていた
       マスターはカウンターの裏で
        氷を器用にアイスピックで丸く削っていた
         丸くなった氷はまるで地球の様に見えた
          店内には僕と女性とマスターの他に誰もいなかった
           当たり前の話だ
            平日の深夜3時だ
             大抵の人々は柔らかなベットで
              優しい夢を見ている時間帯だ

              女性はカウンターにひじをつけ
               頭を抱え込みながらバーボンを飲み続けている
                完全に酔っ払っている
                 そして絡むような目つきで僕を見つめ
                  あんたはどうして飲まないのよ?
                   と怒り出した

                   僕はため息を吐いて
                  マスターにウイスキーを注文した
                 
                 お酒がなくなるまでって云ってたけどさ、
                君のグラスにはお酒はもう無いよ。

               女性は皮肉に微笑みながらウイスキーを注文する

              話が違うんじゃないかい?

             違ってなんかいないわよ
            この店のお酒が全部なくなるまで飲むんだから。
           あなたも気合入れて飲みなさい。

          そう云ってバーボンを一息で喉の奥に放り込んだ
         僕は内ポケットから一本の葉巻を取り出し
        カッターで吸い口を作ってからライターで灯を点け
       濃厚な煙を舌先で転がした

      なんでそんな昔の煙草がすきなの?

     珍しそうに葉巻を眺め女性はひとくち頂戴、と
    僕の口元から葉巻を奪い去った
   それから煙をひとくち吸い込みすぐにげほげほと咳き込んだ

  うう~、苦い。

 彼女はウイスキーでうがいをし
  葉巻を僕に返した
   初対面の女性は僕が店に入る前からカウンターに陣取り
    酔いが回ってくると面倒くさそうに一方的に話しかけてきた
     退屈だった僕は適当に彼女の言葉に合槌していた
      彼女はまるで彼女自身に言い聞かせる様に話をし続けた
       そして退屈そうに話をした

       帰らなくちゃいけないの

        彼女は何度もそう口にした

         何処に?生まれた土地にですか?

         馬鹿ね。あたしがそんな面倒なとこに帰りたいわけないじゃない。

         それじゃあ何処に帰るんです?

        彼女は皮肉に微笑んで事もなげに云った

       月よ。

      月?

     そう。月の裏側には街があるの。
    あたしはそこで生まれたの。
   月の街は北海道の地下街に似ているの。
  あなた北海道って行ったことある?

 僕は首を振った

じゃあ、月には?

 僕は途方に暮れてウイスキーを飲んだ

  そう。行ったことが無いのね。とても残念だわ。

   それから僕らは彼女の故郷である月について話を続けた

    しばらくすると店の音楽が消えていた
     そしてマスターが閉店のお時間です、と丁寧に告げた

      店の外に僕と千鳥足の彼女が追い出された

       一人で大丈夫ですか?

        一応声をかけてみると彼女は
         大丈夫、心配かけるわね。

        と云って通りすがりのタクシーを拾った

         あたしは月に帰るわ。


         あなたは何処に帰るの?



         僕は頭を振ってタクシーを見送った




        あなたは何処に帰るの?



       何度も声が木霊した



      てくてくと歩く道の途中で

















  
  

   
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2013-03-20 | 
地上に落ちた具象
 青い月明かりの頃合を見計らい
  魂の色について我々は考察し続けた深夜2時
   とっくに電車は止まってしまった
    交通機関の麻痺した界隈で 
     ワインを舐めながら繰り返し
      問いかけ答えあるいは困惑した

      現象は指先から放たれるギターの音色で
       僕らは静かな世界を満喫し
        静けさが壊れてしまわない様
         そっと言葉を交わした

         機械仕掛けの時計は深夜を指したが
          僕らの郷愁は
           遥か前世から未来へと続く一筋の光だった
            冷たい水の中から光を望む

             きらきら

              きらきら

               光の音階が無数の世界を照らした
                君の言葉は嬉しかったし
                 青い月夜の晩餐に
                  思い思いの楽器を手にして
                   僕らは郷愁の歌を歌った

                    もう戻れないあの日の午前2時

                    廃墟と化した遊園地に忍び込み
                   ベンチに腰掛けて煙草を吸った
                  紙袋のワインを飲みながら
                 僕は古い友人を待っていた
                月の青で世界が静寂に染まった

               呼んだかい、おいらのこと?

              黒猫が面倒くさそうにあくびをした

            ねえ、ハルシオン。
           どうして世界はこんなにも静かなんだい?

          黒猫のハルシオンが退屈そうに髭を舐めた

         世界からなくなったのさ。
        皮肉やら悪意やら暴力や嘲笑がね。

       それは正しいことなのかい?

      僕ははっか煙草に灯をつけて尋ねた

     おいらには分からないね。
    全体何が正しさなんか皆目見当がつかないよね。
   それに
  それにおいらは皮肉やら悪意やらのエセンスが全く嫌いな訳じゃないからね。

 猫はそう云って僕のシガーケースから煙草を勝手に抜き出し
美味そうに一服した

 正しい街なんて無いのさ。
  正しさは間違いと表裏一体なんだ。
   だから正しさと間違えのバランスに気付く必要があるんだ。

    正しさは時として人を追い詰めるよ。
     なぜならそれが正しいことだからだよ。
      正しさに反論の余地なんてないんだからね。

      僕は何時だって途方に暮れている


        地上に落ちた具象
     青い月明かりの頃合を見計らい
    魂の色について我々は考察し続けた深夜2時



      でも僕は静かな夜が大好きだった



       魂の色を考察する


        地上の光


 
       ハルシオンが皮肉な瞳で僕を眺めている


        深夜の考察
















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明日

2013-03-03 | 




     失う日が来ることを知っている


      きっと



      明日の無い今日


      今日の記憶の無い明日














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