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眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

空の話

2025-04-25 | 
  
    「空の話」

    空の話をしよう  
    とても綺麗で
    こわれやすくて

    空の話をしよう
    なくした記憶の  
    いちばんすみっこにある
    小さなお話

    君が街を歩いているから
    僕は嬉しくて
    何かに感謝する

    君がいてくれて
    嬉しい だから
    空の話をしよう
    小さなお話

    永遠があるなら
    君といっしょに
    いたかった

    少年は路上に落ちてる
    石を眺めて
    同じと思った

    君が
    しあわせになれるなら
    僕は僕の石を 
    君にあげる

    君がしあわせになれるなら
    僕は僕の意思を
    君にあげる


    そうして
    そして
    あの空の話をしよう

    夢見たものは
    うそか本当かわからないけど
    あの気持ちは
    たしかに 残った

    君がそばに
    いてくれるといいな

    空の話をしよう
    小さなお話





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物語

2025-04-13 | 
さよならの向こう側に向ける風景を考えていた
 郷愁が絶望的な美しさで深夜を徘徊し
  青い街灯の下で
   予感を予測し
    ただ静かにたたずむのだ
     あの公園の池の水面に写る
      ピエロの仮装を拭い切れず
       ただ廃墟の空間に於いて
        微弱な呼吸音に耳をそばだてる
         脆弱で儚い夢
          あの永遠への考察によって
           平均的な音階が浮かび上がり
            やがて異端の旋律は不可逆的に消え去るのだ
             さよならの向こう側
              僕らは哀しく微笑み
               ただ涙を零すのだ
                ごらん
                 誰かが泣いている
                  急速に下降し続ける小さな瓦礫の様に
                   落ちてゆく
                    堕ちてゆく
                     
                    重力の仕業だね

                   君は呟き夜空の天体を観測す
                  微量な希望的観測は
                 しょせん希望的観測でしかないのだ
                君は其の事を十分認知していたのに
               まるで何かの童話の様に
              幸せすぎる幻視の世界を僕に語ったのだ
             安易な日常に騙されない様に
            気をつけるんだね
           そんな類の言葉を舌先で転がし
          世界を分解し再構築しようとした
         何かが変革する様に

       だけどね

      其れはやはり唯の廃墟なのさ

     皮肉に微笑み
    静かな夜にだけこっそり窓から忍び込む
   街から全ての灯りが消え去る時
  君は僕を廃墟の世界に連れ出し遊んだ
 
 静電気の仕業だね

事もなげに云って
 君は遥かな理想郷を赤い林檎に例えた
  ゆっくりと変化してゆく林檎を眺め
   移ろう時間の流れの余った部分にだけ意味を与えた
    
    きっと来るよ

     何がさ?

      美しいパレードだよ

       本当に?

        もちろんさ。その為に僕はこの廃墟の住人になったんだ


         美しいパレードだよ


          もう一度云って君ははっか煙草に灯を点ける

           でもパレードはついにやって来なかった
            君が予測していたように
             最初から
              君は分かっていたのだ
               美しいパレードや美味しいお菓子の匂いや
                そういう甘ったるい郷愁が存在しない事を
                 最初から
                  君は分かっていたのだ

                  やがて記憶された時間が化石になる頃
                 僕はパンとワインのボトルを抱えて
                ゆっくり立ち上がった
               君は愉快そうに目を細め
              煙草を咥えながらこう云った

             忘れ物はないかい?

            僕はパンとワインと煙草を確認してうなずいた

           これを君にあげるよ

          そう云って青い文字盤の懐中時計を僕に手渡した
         いいかい
        僕がこの世界から消えるんじゃない
       君がこの世界を忘れてゆくんだ
      ゆっくりとね
     ゆっくりと

    僕は部屋の扉を閉め
   うっすらと白く見える外の風景を眺めた

  届かない郷愁

 廃墟の想い出

連鎖する世界

 美しいパレードはやって来なかった

  美しい世界はやって来なかった

   何も変化しなかったのだ

    林檎は林檎のままでスーパーの棚に陳列され

     それは決して白い余白を与えなかった

      僕は

       いつかあの懐中時計を眺めた

        何度見ても時計の針は動かなかった

         午前零時を指したまま

          動かなかった




         絶望的な郷愁を持って






















  
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ソファー

2025-04-09 | 
部室はふたつに分かれていた。
広い部屋にはピアノがあったので、ジャズ畑の先輩達の隠れ家。
僕らは狭い部屋に、ドラムセットとアンプの山に囲まれて好き勝手やっていた。
講義をさぼって、広い部屋に上がる。
その頃、僕はどうしようもないほど目的意識を見失っていた。
教室や講義のなかには僕の居場所なんて無かった。
それで部室と学食と喫茶店をさまよい歩いていた。
  
  まるで幽霊みたいだった。
   行き場所を捜し歩く。

広い部屋にはソファーがあるのだ。
僕は二日酔いの頭を抱え込んでそこでつかの間の安眠をむさぼろうと企んでいた。
 しかし、その野望はいつだってあえなく断念させられた。

  先約がいるのだ。

その先輩はどんな時間帯であっても、必ず唯一部室にある一客のソファーで惰眠をむさぼっていた。僕は、またやられた、と思いながら機材入れの棚にまるでドラえもんのように潜り込んで毛布を頭からかぶる。ソファーに眠る彼をうらやましく眺めながら扉を閉めた。

  おやすみなさい。

夜、ジャズバーで演奏して学費の足しにしている彼は半分プロみたいなもんだった。もちろんどこにだって、この種の「半プロ」という人達はあぶれていたのだが、そのテクニックと膨大な知識は大学に入りたての小僧には憧れるに余りあるものがあった。それで僕は何度かこの先輩と交信しようとこころみた。

  「  サン、どんなミュージシャンが好きなんですか?」
  彼は眠そうにまぶたをこすりながら、
   グラント・グリーン
  と、呟いてめんどくさそうに煙草に灯を灯けた。
   そうですか・・・
  話が続かない。
ピアノ屋の彼が口にした名前だったので、僕は「グラント・グリーン」なる人物はてっきりジャズピアニストだとばかり思い込んでいた。ギタリストだったなんて知ったのはずうっ~と後になってからだ。

  スプリングの飛び出た緑色のソファーがとても柔らかそうだったのを
      憶えている。

彼が通うジャズバーは洒落ていた。演奏をききに店を訪れた僕に先輩はめずらしく一杯おごってくれた。バーボン片手に譜面をテーブルに散らかしながら煙草を吹かした。僕も煙草に灯をつける。
無口だ。本当に無口だ。

  お前さ、あの人知ってるか?
   突然、彼が話しかけてきた。
    カウンターでマスターと話してるひとだよ。
    
    知りません。
   ・・・っていうドラマ知ってるか?
    見たこと無いですね

    そのドラマの音楽作ってるひと、あのひと。
そう云ってまた黙り込んだ。
他のメンバーはこのドラマの人が急遽、次のステージで二、三曲ピアノを弾くことになったのでなんだか少し慌ただしかった。

   よくみとけよ。
 先輩が呟いた。
ステージでは、「こまったな・・・、ジャズ演った事無いんですが」と前置きして演奏が始まった。
演奏のあいだ、先輩は食い入るようにステージを見続けていた。

   凄いな~、カッコいいな。
  演奏が終わると、先輩は独り言を云った。

残りの時間は彼がピアノを弾かなくてはならない。楽しみにしてますよ、と声をかけると、

   馬鹿云え。あんな演奏のあとに何やればいいんだよ。

  と、言い残してピアノに向かった。

次の日、やっぱり彼はあのソファーで眠っていた。
卒業して彼の行方は分らない。
一回、会社勤めをして、後輩と結婚したそうだ。
それから、会社を辞めた。
ピアノが弾きたかったんだって。
そんなウワサが風に舞った。
   
  それにしても。
   あの緑色のソファーはもちろん粗大ゴミになったのかな?

   しかたない。
   もともと粗大ゴミ置き場から拾ってきたモンだったしね。




  
 
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緑の庭園

2025-04-06 | 
緑の庭園
 宙空に漂う密やかな場所
  僕等が暮らした有象無象の夢の在りか
   凝固した記憶の楽園
    世界の在り様が時間を超越した
    
     古びた茶色に変色したポスター
      もう
       決して訪れない音楽会の案内文には
        君が不遜な態度でアジテーㇳした論文が掲載されていた筈だ
         珈琲の黒の中
          夢見ている
           夢見ている

           フェアリーテイル
            緑の刻印
             少女のお茶会に呼ばれ
              僕はオレンジ色の着色された明かりの下
               煙草を咥えてギターを弾いた

                チムチムチェリー
                 ロンドンデリー
                  哀しみの礼拝堂

                   誰かが
                    壊れかけたピアノを弾く
                     グリーンスリーブスが流れ
                      僕等はくすくす微笑んで紅茶を嗜む
                  
                      あの頃の僕たちは
                       ただ楽しくて
                        終わりが来るなんて
                         誰も想わない

                         緑の庭園
                          緑の楽園
                     
                           大好きな人に
                            あの花を贈れたら
                             失った記憶も
                              安寧の寝床に辿り着けるのだろうか
  
                              眠れない夜が
                               幾つも通り過ぎる
                                消えない傷跡
                                 笑わない傷口

                                 不遜な態度で
                                  侮蔑した存在に
                                   何時しかかような価値が付与されうる
                                    だがしかし
                                     ねえ
                                      僕はまだ楽器を抱えているよ
                                       可笑しいね
                                        まだ詩を歌っているんだよ

                                         眠れない夜
                                          眠れない夜

                                          くすくす

                                         くすくす

                                        記憶の君が微笑む
                                       あの理科の準備室で
                                      煙草に灯を付け
                                     存在の在りかを模索し
                                    丹念に黒板に落書きした

                                   緑の庭園
                                  其の地図を描こうと
                                 仲間達は航海に出た
                                辿り着けぬ果てに
                               彼等彼女等は大人になり
                              僕だけが
                             記憶の最果ての国を目指したのだ

                            庭園には緑の薔薇が咲いている
                           庭園の中央には
                          温室の蝶園があって
                         不思議な蝶達が舞っているのだ

                        ウバでいいの?
  
                       少女が紅茶の葉を吟味している

                   僕はクッキーを齧り頷いた
                     少女がカップとポットを暖める
                    そうして僕等のお茶会が始まった

                   我々は静かにお茶を飲んだ

                  あなたには帰る場所はないの?

                 突然少女が呟いた
                僕は途方に暮れて煙草に灯を点けた

               考えた事ともなかったよ

              ねえ
             あなたは何処に行きたいの?

            最果ての国

           最果ての国?

          少女が不思議そうに聴き返す

         そう
        いつか
       此の現世の肉体がきれいさっぱり消えてしまえば
      きっと辿り着けると想うんだ

     其処で誰かが待っているの?

    どうだろう?
   もう記憶が曖昧で
  大切な友人の面影も想い出せないんだけれどね

でもあなたは行くのね
 最果ての国に

僕は黙り込んで少しだけ頷いた
   少女は優しい瞳で僕を見つめた

    あなたはどうして眠れない夜に詩を描くの?

     誰かに

      誰かに伝えたいんだ

       君の事を忘れない

        決して忘れない

         風鈴の音が聴こえる

          幻聴だろうか

           風の通り道

             緑の記憶

              緑の庭園


               君を

                大好きだよ


                 大好きだよ

                 
                  深夜3時に呟いた

                   少しく

                                    
                      
                 ねえ




                      愛しているよ






























































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17歳

2025-04-04 | 
やがて風に舞うだろう
 桜が満開した石畳の坂道で
  花びらに邪魔されながら写真を撮った
   マリア像は不思議な微笑を湛え 
    思春期の僕らはただ夢を追いかけた
     17歳の春
      戻れない過去
       今でも呼吸する記憶たち

        長い石畳の坂道に慣れるには
         余りにも脆弱な精神だったはずだ
          僕らは寮の屋根に上って
           煙草を吹かし
            永遠に喋り続けた
             まるで熱病のように
   
             砕け散る破片
            それを記憶と名付けるのなら 
           指向性のハンドルマイクの如く
          注意して録音に望まなければならない
         かつて少年と呼ばれた
        君の饒舌なアナウンス
       昼休みにマイク・オールドフィールドを流した君は
      赤い舌を出した
     消えないで
    どうかお願いだ

   画面がちらつく視野
  薄れ行く記憶
 魚たちの世界
井戸の中の化石

 封印された刻印
  散髪屋で同じ髪型にされた
   春が来る
    同じように17歳の時間が
     国会で民主的に可決された
      「異議なし」
        深夜ラジオを毎晩聴いた
         電気信号が遊覧される
          気紛れな君の所作
           造作も無い事
            僕は空き部屋で
             ただひたすらに油絵を描いた
              どうして17歳だったのだろう?

               僕らは音楽だけを信じた

              ジャニス・ジョプリン
             シド・バレット
            キング・クリムゾン
           レッド・ツェッペリン

          そうして
         あなたの名前
        ジョン・レノン
       僕らは世界を手中に収めた
      「グレープフルーツ」と「スイミー」を読んだ
      君はだらしなく制服をはおり
     僕はヒトラーの「我が闘争」を暇つぶしにした
    ルドルフ・シュタイナーに傾倒した10代は
   入学と同時に保護者との対面を余儀なくされる
  
  どうして
 17歳だったのだろう?
 永遠を信じた

やがて

 やがて桜の花びらが舞うだろう

  祝福された

   懺悔のように

    木魂する

     一片の詩

      「呼吸しなさい」

       僕らは

        17歳だった




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四月の夢

2025-03-28 | 
雑多な出来事は
 いつの間にか
  優しく降り注ぐ霧雨の様に
   薄いヴェールを世界に音も無く覆いかぶせる

   悪夢を見た子供たちの
    ちょっぴり興奮気味の心拍数

    最新鋭の飛行機が落ちそうなので
     やっぱり熱気球にすべきだったなんて
      可笑しいね
       変わりに飛ぶ夢を見た

    夢のなかで夢をみている

   誰にも見えない
  場所を探して
 三日月の夜は
遠く 遠く
 酔いがまわる
  
  「もしかしたら」
  は
 在りもしない夢の末路
暮らしぶりはいつだって
 予感をはらませる
  
        しらふの時に云ってよね

       僕には

      しらふの時に行ってよね

     と聞こえたんだ

    四月
   入学式の頃
  馴れない街で
 初めて食べた弁当と
満開の桜を憶えている

  綺麗だ

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赤い花

2025-03-28 | 
凝縮させた記憶の場所に
 赤い花が咲いた
  如雨露で水をかけ
   しばらくぼんやりと煙草をふかした
    庭園は世界の果て
     懺悔した我々の密やかなる夢 
      君が残し
       僕が受け継いだ意思の下
        誰にも聴こえない歌を歌った今日と昨日と明日
         古臭いギターケースから楽器を出して
          哀しいけれど少し歌った
           ラムネの甘ったるい記憶
            風鈴がちりんと鳴った

            赤い花
         
           君はあの時代そう呼ばれ
          ふてくされた表情ではっか煙草を咥え
         つまらなさそうにギターを弾いた
        僕はグラスのウイスキーを舐めながら
       こんな時間が永遠に続くといいと想った
      このままが
     このままが
    真夏の昼下がり
   風鈴の歌

  ねえ
 僕らは十年後にどうしているだろうね?

ぼんやりと酔いのまわった頭で僕は彼女に尋ねてみた
  
 赤い花は珍しく優しい声で答えた
 
  あたしは赤い花のままだわ。

   いつまでもね。

    僕は?

     あなたはたぶん名前を忘れるわ。

      そしてあたしの顔も髪型も影の形も忘れるの。

       どうして?
        君のこと忘れるはずが無いよ。
         それに僕は君のそばにずっといるんだよ。

         赤い花は可哀想に僕を見つめた

          あたしはこの場所に残るわ。
           あなたは此処から旅立っていくの。

            僕だって何処にも行きはしない。
             この場所に残るよ。

             決まりなの。
              あなたの十年後はこの場所ではないのよ。

               風鈴が哀しくささやいた

                ちりん

               哀しい時には歌って。

              それで哀しみを分かち合えるわ。

             僕は残ったウイスキーを飲み続けた

            永遠はいつまでたっても訪れなかった

           時代が変わり世界が通りすぎ僕は縁側でビールを飲んでいる

          スピーカーから戸川純の歌が流れた
   
         「蘇洲夜曲」

         泣きたくなる青い空の下

        赤い花が綺麗に咲いた













 
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春のバスタブ

2025-03-26 | 
虚飾された世界で
 粉飾された電波を打電する
  不可思議な世界で
   ただ眠りたいと想う朝の10時頃
     バスタブに湯を張って
      何も考えずにビールを飲んだ
       生暖かい風が
        何だか春らしい
         小鳥のさえずり
          庭に咲く花びらの加減
           光が差す日曜日
            安息の日を望み沐浴した

            神様と試行錯誤した深夜
             sionの「12号室」を聴いた
              病室の静けさと清潔なシーツ
               無音の錯誤
                誰かがピアノを弾いている
      
                 届かぬ想いは辟易とした記憶の有象無象
                  歌うたいの少女が
                   ギターを抱え
                    水の無い噴水で歌をささやく
                     誰のためでもない世界  
                      君は笑うのだろうか?
                       あの頃と同じように   
                        皮肉な陽光の加減で

                        小さな鍋で水を沸騰させ
                         卵を三つ入れた
                          ラジオから流れてくる音楽を聴いていて
                           忘れかけた頃
                            卵をそっと救い上げる
                             割れたゆで卵に塩を塗し
                              ワインで流し込んだ
                               そっと優しい酩酊が訪れる
                                縁側で煙草にそっと灯を点け
                                 庭の木々を眺めた
                                  

                                  あなたがここにいてほしい


                                  春だ
                                 日差しの優しさにまどろみ
                                ワインのボトルを空けながら
                               なんだか少しほっとした
                              酔いつぶれて眠っても
                             誰も意義を唱えなかった
                            あの頃を想い出し
                           苦笑しながら独りで酒を飲んだ


                          あの頃の僕等は
                         ただ楽しくて
                        終わりが来るなんて誰も気付かない

                       お風呂から上がると 
                      縁側でビールの空き缶を作る事に余念がない12時
                     ギターを取り出して歌った
                    陽気なふりをしてジャンゴ・ラインハルトを弾き
                   ブルースを手癖でひとつふたつ
                  いつの間にか僕は此処に居る
                 煙草を吸った1時頃
                フランスパンをちぎってワインで租借し嚥下した

               人が何と忠告しようと
              僕の成分はお酒と煙草で出来ているらしい
             気だるい朝
            眠れない夜
           きっと月夜の晩に
          テインカーベルが囁きにくる
         パレードはあの街の向こうよ

        窓から逃避した夜空は静かで
       永遠は
      摩耗された記憶の層に鎮魂された鳥の化石
     深い井戸の底に眠るかつての友人達
    あの洋館で繰り広げられた終末さえも
   やはり訪れなかった

 永遠を探しているの?
緑の草原で少女が尋ねる
 僕は珈琲を飲みながら苦笑する

  永遠なんて無かったよ
   皆、消えてしまった
    すべからく僕らがそうであるように

     あなたは歌を忘れたの?

      そうじゃないさ、
       毎日が忙しすぎるんだ。
        或いは
         毎日が退屈すぎるのさ

         少女は黙ってギターを弾いた
          酔いどれの僕は
           少女の伴奏にでたらめな旋律を付け加えた
            時が優しくほほをなぜる
             居なくなった誰かが僕に合図を送る

             思念は表層の自堕落
              ゆっくりとさ、
               お湯に浸かるといいよ

                午前のお風呂は優しい

                 鳥の声が聴こえる

                  静けさの中

                   ほろ酔いで花びらを眺める
   
                    静かだ

                     そんな春の訪れ

                      眠りには

                       魂を再生させるちからがある

                        柔らかな眠りを

                         そっと君に贈る

                          君を愛している

                           たとえ冗談にしか聴こえなくても

                            永遠に君を愛しているんだよ

                             君はきっと笑うだろうね

                              いつもの皮肉な微笑みで

                               くすくす

                                くすくす















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哀しい青の空の下

2025-03-21 | 
哀しいくらい青い空の下
 僕は清潔な空気に触れながら青い林檎を齧った
  此処が現実なのか遠い国の出来事なのか
   今日も分からずにただワインを舐めている
    お腹が空けばフランスパンを齧って
     安い酒で胃袋を満たした
      知らない国の知らない鳥の鳴き声が聴こえた

      飽きもせず空を眺める僕に
       君は微笑み声をかけた

        あんたの世界はまるで夢だね

         夢?

         そう。

          あんたの構成物質でこの世界は構成されているんだ。

           君はそう云って齧りかけの僕の林檎を奪い取った
            それからシガレットケースから葉巻を2本取り出し
             1本に灯をつけ
              僕に手渡した
               キューバ産のパルタガスを燻らせ
                ただ静かに水面の表層を撫でた
                 哀しいくらい青い空の下で

                 あんたはこの空虚な世界を愛しているのかい?

                誰も彼もが立ち去った今生に

               いつまでもしがみ続けるのかい?
              まるで
             荒唐無稽な物語を創り出す
            チャールズ・ラトゥジ・ドジソンや
           サン・テグジュヴェリの様に
          いつまでも此処にいるつもりなのかい?

         僕は分からない、

        と呟いて白く灰になった葉巻の先端を
       丁寧に白い灰皿に落とした
      まるで忘却された記憶の欠けらの様に

     あんたが望むなら
    おいらはあんたのその悪夢から逃れさせてあげるよ
   そうしてまた新しい世界を覗かせてあげるよ

  黒猫のハルシオンがジャック・ダニエルを舐めながらそう云った

 悪夢?

そう。

 あんたが探しあぐねた路地裏の界隈を抜け
  あんたが永遠に探し続ける誰かの影に
   追い着けれる様に時間と空間を超越させてあげれるのさ

    猫は美味そうに葉巻を燻らせ
     紫色の煙を舌先だ転がした

      上等の葉巻だね。

       猫は独り言を呟き僕の深層心理を模索し始めた

        全てはね、夢なのさ。

         この世界は青い月明かりの下の世界
          誰かを待ち続ける街角の街灯なのさ
           あんたは一歩も動けずただ立ち尽くしているんだ
            悪夢だよ
             決して目覚めること無い世界の緩衝
              もう魂は血流が無くなって
               感覚すら探し出せないんだ

               僕は
              ピアノに向かって歩き出し
             鍵盤の正しい音を探して歌を紡ぐ
            静かな界隈
           雑踏とした意識の向こう側

          不意にフィルムの中に
         あの影を見つけた
        もう永遠に会うことが叶わない意識伝達
       君は何処の物語の世界に紛れ込んでしまったのか
      お酒を浴びるほど飲んだ時だけ
     磨耗された記憶の絞りかすが存在を訴える
    
    ねえ
   何処にいるの?

  僕の問いには答えず
 君の影がしらんぷりして歩き出す
僕は12の扉を一つずつ開け
 その全てに困惑する
  どの世界が現実なのか
   失われた世界をさまよっている
    哀しいくらい青い空の下

     もっと飲みなよ

      誰かがそう云ったけれども
       それが誰なのかすら分からない
        オイルサーディンの缶詰めを空けて
         僕らはいつまでも飲み続けた
          誰も騙そうとはせず
           誰も騙されなかった
            注ぐ酒が切れるまで
             僕らは優しい夢をみた

             僕らは僕らの世界の存続の為に
              この世界からの脱出を試みた
               偽造パスポートの不備で
                僕だけがこの日常に取り残されたのだ
                 青い空の下
                  悲しみだけが伝染した

                  ねえハルシオン。
                 僕の額にはしるしがつけられているのかい?

                猫は哀しそうに答えた

               残念だけれど
              あんたは預言者ノアの箱舟には乗り込めない
             あんたの額のしるしは原罪なんだ
            それを誰かが贖罪する日は永遠に来ないんだ
           だからあんたは水の底の世界の静けさに
          魂を拘束されているんだ
         そうしてそれを本当に望んだのは
        あんた自身なのさ

       深夜に豆のスープを飲んだ
      胡椒が利きすぎている
     昼食を終えると
    僕は図書室でヘルマン・ヘッセの「蝶」を眺めた

   君が微笑んだ
  長い前髪が風に揺れた
 今夜も眠れそうも無い
深酒を繰り返し
 僕は途方に暮れる
  旅立つ箱舟を見送りながら
   いつまでも夢の中でまどろんでいる
    いつか世界の終わる頃
     ぼくは水の中から青い空を見上げ
      忘却された記憶の箱を抱いている

       大好きだよ

        君の事

         もしもね

          世界が終わっても

           君だけを探しているんだ

            可笑しな話だけれども

             探しているんだ

              青い空の下


               哀しみの染みが

                どんなに洗濯を繰り返しても

                 消えないんだね

                  額のしるしは




                  哀しいくらい青い空の下で














   
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プレゼント

2025-03-18 | 
あの日あの時間違えた別れ道で
 僕はいつだって憂い
  煙草を吹かせて哀し気に微笑んだ
   何時かの微笑
    困惑した世界の中心点で黒猫があくびする
 
     ねえハルシオン
      どうして僕は現世にいるのだろう?
       もう誰も居なくなってしまった世界で
        どうして僕は楽器を弾いているんだろう?

        黒猫は何も答えずに優美に紙煙草を嗜んだ
         それから一枚のタロットをめくった
          「道化」
           くすくす微笑んで
            黒猫は楽しそうにワインをグラスに注いだ
             僕は途方に暮れて空を見上げた
              あの日に少しだけ似た
               重く垂れ込めた灰色の世界
                地団太の孤独
                 少年時代から出遅れた足音
                  オルゴールが鳴り始め
                   世界が終焉を迎える頃
                    あの日あの時の一瞬
      
                    僕はギターを弾いていた
                     カルリの練習曲を弾き
                      回らない指でジュリアーニの楽譜をさらっていた
                       中庭の卓球台で試合を楽しんでいた男性が
                        お調子者らしく
                         エリック・クラプトンは弾かないのかい?
                          と口笛を吹いた
                           「ティアーズ・イン・ヘブン」
                            その頃
                             みんなこの曲に浮かれていた
                              僕は黙って
                               ランディーローズの「Dee」を弾いた
                                退屈そうにみんな中庭を去った
                                 僕は黙々と楽器を弾いていた
                                  とてもとても寒い冬の日だった

                                  寒くないの?
                                 声に驚いて顔を上げると
                                先生が優しそうに珈琲カップを僕に手渡した
                               口にした珈琲がとても暖かかった
                              寒くないの?
                             彼女はもう一度確かめるように尋ねた
        
                            寒いですよ、もちろん。

                           手袋をすればいいのに。

                          手袋をしたらギターが弾けないんです。
                         僕の答えに彼女は
                        それもそうね。
                       と呟いて巻いていた緑色のマフラーを取って
                      僕の首に巻いてくれた

                     暖かいよ、それ。

                    でも先生が寒いでしょう?

                   大丈夫。医局は暖房が暑いくらいなの。
                  それに素敵な音楽で気持ちが暖かくなったから大丈夫。
                 あとね、
                煙草は控えめにね。

               そう云って彼女は建物の中に姿を消した
              残された緑色のマフラーはいい匂いがした

             先生は忙しそうにカルテを抱えて歩き回っていたけれど
            僕がギターを弾き始めると何処からか現れて
           曲が終わるまで興味深そうに聴いていた
          それから
         また聴かせてね、と云ってすぐに何処かに消えた
        不思議な先生だった
       でも僕はその先生となんとなく気が合った

      こんにちは。

    そう云って先生が中庭のベンチの僕の隣に座った

   今日は忙しくないんですか?

  私、今日お休みなの。

 休日出勤ですか?

そんなところ。
 ね、良かったら何か聴かせて。

  僕は魔女の宅急便の「海の見える街」を弾いた
   曲が終わると先生は満足そうに微笑んだ
    それからキャンデーを僕にくれた
     煙草のかわり。
      そう云って自分の口にもキャンデーを放り込んだ

       不思議よね。
        どうしてそんなに指が動くのかしら?
         私の指も練習したらそんなに動くのかな?

          出来ると想いますよ。

           彼女は笑って無理よと呟いた。

           私、不器用なの。手術もそんなに上手じゃないし。
            
           僕はなんて云ったらいいのか分からず黙り込んだ

          先生は悪戯っぽく、嘘よと微笑んだ。
         僕等は二人でくすくす笑った

        先生は他の先生たちと飲みに行ったりしないんですか?

       どうして?

      いつも此処にいるから。

     そうね。人が多い処が苦手なの。それに。
    それに他の先生たちとは大学が違うから

   そういうの関係あるんですか?

  それはやっぱり人間関係だから。

 なんだかままならないですね。

そうね。ままならないわ。
 そこにいつも貴方のギターが流れてくるのよ。
  花を見つけた蜜蜂みたく吸い寄せられるの。
   お陰で仕事が溜まって休日出勤なの。

    ごめんなさい。
     僕が謝ると、
      嘘よ。信じないで。
       と可笑しそうにくすくす微笑んだ

        此処を出たら大学に戻るの?

         キャンデーを舐めながら先生が尋ねた
          僕は途方に暮れて空を眺めた
           
           あなたはたぶんもう大丈夫。
            何処に行ってもね。

             僕は先生にマフラーを返そうとした

              いいの。あげる。

               いいんですか?

                うん。
                 あなた今日何の日か知ってる?

                  知りません。此処にいると時間や日にちが曖昧になって。

                   クリスマスよ。
        
                    プレゼント。それ。
                     いつもギターを聴かせてくれたお礼に。
                      

                      ね、いつか私にも教えてくれる?


                       何をです?

 
                       ギター。


                      教えてね。


                     そう云って先生は建物の中に入っていった

      
                    三日後


                   僕は其処を去った


                  先生に挨拶をする事は叶わなかった


                 ねえハルシオン。


                先生ギター弾いているかな?


               懐かしそうな目で黒猫は空を眺めた


              冬の日


             掠れかけた記憶の残像


            クリスマスプレゼントの想い出
























         
                        
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