眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

余白

2023-03-28 | 
僕らが孤独を知るのは
 いつだって其れが立ち去った後だ
  静けさの空間に
   哀しみの成分を垂らして
    生成された余白を思い煩う
     混沌とした空虚感に包まれ
      やがて遠い夢を見るのだろう
       お休み罪深き者よ
        今夜も見捨ててしまった

         沈黙は完璧なエセンスだね
          君はシガレットを咥え
           銀のライターでそっと灯を点ける
            描写されたアジテートを不遜だと皮肉に笑う
             やがて時が流れ
              僕らは街での暮らしを忘れるのだ
               ベットも無い部屋で
                一枚の毛布に包まり音楽を聴き続けた深夜
                 もう忘れてしまった夜の記憶の余韻
                  空白の安寧で
                   いつしか眠ってしまったのだろう
                    ウイスキーの残ったグラスが
                     完全な静けさで画板に埋没し背景となった夜
                      清潔な空気が
                       ひんやりとして心地よかった
                        青い月明かりの下
                         誰それが夢を見た
                          愚かさの範疇で具現されるラジオ放送で
                           僕らは遅れて孤独を知るのだ
     
                           永遠
                        
                          君は笑った
                         とても哀しそうに
                        カルヴァナルは訪れない
                       雑踏の頭痛の為
                      アスピリンを酒で飲み干した
                     君の余白は?
                    そう呟いたが誰も答えなかった
                   摩耗された記憶
                  君の旅路には永遠に追いつけない
                 卑怯だよ
                そんな風に僕を忘れるのは
               歪な夜景を徘徊した
              困惑した世界の面持ちで
             口にした赤い毒林檎は
            とてもとても甘かった

           永遠

          熟れた果実の狂乱した甘味
         堕落した暮らしの中
        夢を見ていたのだ
       僕らは飛べない飛行船に安住を模索した
      其れが哀しいくらい滑稽だったとしても
     踊り続けなければならなかったのだ
    其れが暮らしだった

  狂想曲を奏で
 ステップを踏み続けた
青い月明かりのした
 君の影には永遠に辿り着けない
  余白の刻印は
   嘲笑された戯画
    僕らの暮らしは記憶の街角に於いて
     珈琲を飲みただ煙草を吹かした
      
      永遠

       君は笑うのだろうか

        あの日と同じように

         声を出さずに泣くのだろうか

          沈黙は完璧なエセンスだよ

           僕らの嗚咽は

            音の無い部屋に似て

             静けさの烙印を押された

              咀嚼できない孤独

               永遠


               空白の打電



               熟れた果実の狂乱した甘味



                

























コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

猫の宙空

2023-03-10 | 
哀しみの曖昧さが世界の境界線を指し示す頃
 僕は縁側で煙草を咥えてワインをマグカップで飲んだ
  静かな世界ではのんびりと小鳥が囀る
   身体と精神をアルコールで弛緩させ
    酔いの怠惰な惰眠を貪った
     過剰な情報も辛らつな皮肉も其処では無縁だった
      僕はのんびりあくびをした

       あんたさ、
        どうしてお酒を飲むのにおいらに声をかけないんだい?

         黒猫が不満そうに僕を叩き起こした
        
         いや、だって朝の8時だろ?
          君を起こすのを悪いと想ったんだよ。

           あんたはこんな素敵な天気の日に
            おいらを無視して自分だけワインを舐めていたんだね?

             黒猫の怒りは最高潮に達していた

              ごめん。
               だからさ、これをあげるよ。

               僕は黒猫にとっておきの葉巻を手渡した
                猫は其れを受け取りひとしきり香りを確かめて
                 手慣れた手つきで吸い口をカットした
                  それからライターで火を点け
                   美味そうに煙を嗜んだ

                   キューバ産のパルタガスだね。いい葉巻だ。

                   そう云って黒猫は濃ゆい紫色の煙を深々と吐き出した
                    煙が早朝の庭にもくもくと立ち込めた
                     ワイングラスに赤を注いで
                      彼は一息で飲み干した

                      ねえハルシオン。

                      僕は黒猫に尋ねた

                     朝の8時から縁側でワインを飲んで葉巻を燻らせるのって反社会的な行動なのかな?

                    ハルシオンはくだらなさそうに僕を一瞥して2杯目のグラスを空けた

                   紳士の嗜みだよ。それに
                  それに世界の最果てでは今は深夜だよ。
                 何の問題もない。
                反社会的な動議が喫煙と飲酒だとしたら
               おいらは喜んで反体制の乾杯を挙げるね。

              僕等は朝8時にワインで乾杯をした
             すっかり機嫌が良くなった黒猫に僕はほっと胸を撫で下ろした

            弾かないのかい?

           なにを?

          楽器さ。

         ハルシオンはギターを指さした
        僕は黒いケースから古ぼけたギターを引っ張り出し調弦した
       それからフェルディナンド・ソルの月光を弾いた

      ハルシオンはつまらなさそうにワインを空けて鼻を鳴らした

     あんたの曲を弾きなよ。
    誰彼の曲なんて聴き飽きた。
   それにそんな曲誰だって弾けるさ。
  あんたにしか弾けないあんた自身の曲がお酒のつまみにはちょうどいいよ。

 僕は咥えた煙草を灰皿でもみ消して適当なコード進行に旋律を乗せた
それから途方に暮れてワインを飲んだ

 どうしたのさ?

  丁寧に葉巻の灰を落としながらハルシオンが呟いた

   自分の曲が出来ないんだ。
    長いこと曲を創っていなかったからね。

     ふ~ん。
      調弦はどうなっているの?

       ハルシオンが尋ねた

        EADGBE
         レギュラーチューニングだよ。

          DADGADに変えてごらん。

           僕はハルシオンの云われるがままに調弦した
            音を出すと不思議な広がりのある和音がした

             カポタストを2フレットにしてごらん。

              ハルシオンはそう云ってワインを飲んだ
               カポタストを嵌めると不思議な音が流れた

                それで弾いてごらん。

                 僕はゆっくり確かめながら音を紡いだ
                  いつもの運指なのに意図しない旋律が浮かび上がった
                   僕はゆっくりギターを弾いた

                   あんたは変則調弦は嫌いだったのかい?

                    別段そういうこともないんだけれどね。

                    ギターで遊びながら僕はそう答えた

                     皆ね、調弦が唯一つのものだとおもいこんでいるのさ。
                      調弦を変えることで現れる世界もあるんだけどね。
                       あんたの演奏、いいよ。
                        アルコールのつまみにしては上出来だ。

                        僕とハルシオンはギターを弾きワインを飲んで煙草を吹かした

                        世界がいつまでもこんな幸せであればいいのに。

                         黒猫は酔いのまどろみに宙空を見つめた 
                          僕には彼が何を想っているのか皆目見当がつかなかった
                           だから想いを込めて楽器を弾いた


                            世界がこんな幸せであればいいのに。

        
                            宙空を眺める黒猫の呟きが木霊する


                           祈りを込めて


                          僕等は今日を生きている



                         生きている


























コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする